【「劇場版 マーダー★ミステリー」SPインタビュー】特殊な撮影の裏で北原里英が感じた“劇団ひとりのアドリブ力”、その魅力を語る

全国で公開中の映画「劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目端男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血」。参加者が推理小説の登場人物となり、話し合いながら事件の解決を目指す次世代の体験型ゲームともいわれている「マーダーミステリー」のゲームシステムをベースに、ABCテレビにて2021年3月、ストーリーテラーに劇団ひとりさんを迎え「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」としてドラマ化。その後、同年12月には舞台化、22年3月には第2弾ドラマが放送され、最新作は劇場版としてスクリーンに登場している。

シリーズの主人公である斑目瑞男を演じる劇団ひとりさんをはじめ、斑目の助手・村城和兎役として剛力彩芽さんが出演。さらに、劇場版には木村了さん、犬飼貴丈さん、文音さん、北原里英さん、松村沙友理さん、八嶋智人さん、高橋克典さんなど実力派俳優が顔をそろえる。

撮影の際に与えられるのは、キャラクター設定と行動指示のみ。各シーンのセリフはほぼ即興劇=アドリブで行われ、演技者としての実力が試される本作だが、出演する北原里英さんに話を聞いてみると、「脱出ゲームをやっているようなドキドキがありました」と語る。今回、撮影を振り返ってもらいながら、“マーダーミステリー”という特殊なジャンルの魅力に迫った。

――まず、作品の話が来た時の率直な心境を振り返っていただけますか?

「プライベートではマーダーミステリーをやったことがなかったのですが、仕事では意外とやったことがあって。『-アドリブ推理ドラマ- ミステリープレイヤーズ』(日本テレビ系)をはじめ、コロナ禍にはオンライン演劇でやったり、舞台でやったこともあったので、実は結構縁を感じていたんです。オンライン、舞台、テレビときて、今回映画まできたので、このままだと私は“マーダーミステリー女優”になるんじゃないかと思いましたね(笑)。仕事でマーダーミステリーをやると、要領をつかむためのテストプレーの時間が絶対にあるのですが、それも含めたら相当な回数をやっているなと。今回、他のキャストさんはマーダーミステリー自体初めての方が多かったのですが、私は他のキャストさんよりも経験値が少しあったので、余裕もありつつ演じることができましたね。ただ、そうそうたる役者さんたちと一緒だったので『大丈夫かな…』という心配はもちろんありました」

――映画の撮影はいかがでしたか?

「本当に何も知らされないまま進んでいくのですが、それこそ途中で現場が変わるんです。『移動します!』と突然言われてから『あ、こんな時間に移動するんだ!』みたいな(笑)。自分たちも本当に脱出ゲームをやっているようなドキドキがありました」

――ある意味、ドッキリのような感じで進んでいくんですね。マーダーミステリー作品を重ねてきたことで、楽しむ気持ちなどもあったのでしょうか?

「もともと劇団ひとりさんのアドリブが大好きで、『ゴットタン キス我慢選手権 THE MOVIE』も映画館に見に行って、DVDも全部持っているくらい大ファンだったので、ひとりさんのアドリブは楽しみでした。実際楽しかったのですが、それ以上に『こんなに先が分からないものなのか!』という気持ちもありましたね」

――実際にひとりさんと共演してみて、どんなことを感じられましたか?

「もうアドリブのプロだなと思いました! ひとりさんだけでなく全員に思っていたのですが、私以外の皆さんにはセリフがあるんじゃないかと思うくらい、自分のことを語る時の冗舌さがすごくて。八嶋さんのように急に仕掛けて展開を作ってくる人もいれば、自分のことを話す時にはしっかりと話をされていて『え、これアドリブ?』と思わせる人もいたり、そういう意味ではみんなのことを疑ってしまいました(笑)」

――撮影の中で印象に残っている出来事を教えてください。

「一番面白かったのは、やっぱり映画の冒頭でひとりさんが食べ終わったバナナの皮で、八嶋さんが転ぶところですね。あのシーン、アドリブなんです。急にひとりさんがバナナを食べ始めたと思ったら、八嶋さんが一人語りをして仕掛けている時に、ひとりさんが八嶋さんの動線に(バナナの皮を)投げて。そしたら八嶋さんもそれをチラッと確認して、自分から歩いている時にしっかりと転んだんです。盛大にやっているのを見て『本当にこの人たちはすごい!』と思いましたし、プロ中のプロだと思いました。でも、私が見た印象なのですが、本編は少しコメディーのノリが抑えられてしっかりとしたミステリー映画にもなっていたので、そこの重厚感はあると思います。現場では面白い瞬間もたくさんあったので『こういうテイストなんだ』と感じていたのですが、本編を見た時にはいい意味での裏切りもありましたし、ミステリー好きの方にもちゃんと満足していただける内容になったと思っています。だから、逆にコメディーなシーンを多めに集めたディレクターズカット版みたいなものがあったら見てみたいです」

――ご自身の設定は事前にどのくらいまでご存知だったんですか?

「舞台となった鬼灯村全体にまつわることや、村で行われる祭りの情報は知っていたのですが、私が演じた七尾優子は鬼灯村の人間ではなかったので、自分のキャラクターの設定と事件が起こる日の動きまでしか分かりませんでした。当日までにそれを覚えて、撮影が始まったらアドリブパートが始まるという感じで。まず話し合いのシーンを撮ったのですが、その後、一度車に戻ったんです。その車も、他のキャストさんと完全に話せないように一人一台用意されていて、担当スタッフさんも1人に対して1人ついてくださっていたんです。待機している間にまた追加で(アドリブの)指示の紙をもらって、『今は屋敷に(事件の)証拠を見つけに行っている時間だから、そこであなたが見つけたのはこれです』とアイテムを渡されて、そこから密談タイムに入る感じだったので、車から現場に戻った時にまたいろいろなことが起きていたんです。でも、メークルームで他のキャストさんと会って少しでも話をしていたら、スタッフさんが飛んできて『話さないでください!』とストップが入るくらい、現場は徹底していました(笑)」

――キャスト同士で雑談などをするのは…。

「撮影がすべて終わった後じゃないとダメでした。撮影自体も1、2日くらいだったのですが、1日目はアドリブパートだったので何も知らない状態で。その1日でいろいろなことを全員が経験していたので、2日目にはすごく変な絆が生まれていて(笑)、和気あいあいとした空気で、2日目とは思えない距離の縮め方でしたね。ひとりさんだけ事務所の先輩で番組でもご一緒したことがあったのですが、他の方は初共演だったんです。一応、撮影の前にテストプレーもあって、そこでも距離は縮まっていたのですが、大変な1日を過ごしたことで、2日目はひとりさんをはじめみんなが文化祭の後のような空気になっていて、すごく楽しかったです」

――2日目の撮影が終わった後にようやく話せるようになった時には、どんなことをお話されたのでしょう?

「そこでは1日目の撮影の答え合わせのような感じで『いや、あの時怪しいと思ったんだよね!』『僕はあの時までこう思っていて』と話すことがたくさんありました。撮影スケジュールもタイトで、2日目に芝居パートを各所で撮っていたので、全員で話すことはなかなかなかったのですが、メークルームに戻ってきて会うたびに話していたので、より距離は縮まっていたと思います」

――ちなみに、撮影が終わってからお話してみて、イメージが変わった人はいらっしゃいましたか?

「犬飼くんは変わって、独特な雰囲気があるなと思いました。他の方は割とイメージしていた通りの方ばかりだったのですが、犬飼くんは少し変わっていましたね(笑)。話し合いのシーンでは犬飼くんの隣だったのですが、あのシーンは本当に大変で! 先ほどお話したバナナのところも含めて完成した作品を見てみたら、自分が一番笑いを我慢できていなくて反省しました…。やっぱり、ひとりさんのファンだからこそ、アドリブなど何をしてもツボにハマってしまって苦しかったですね。途中からは犬飼くんも他の皆さんも笑いが我慢できていない瞬間もあったのですが、その瞬間も抑えたバージョンもちょっと見てみたいですね」

――マーダーミステリー作品を重ねてきたというお話もありましたが、初めて挑戦された時はどんな感覚でしたか?

「初めてのマーダーミステリーは、コロナ禍でやったオンライン演劇が初めてだったと思います。でも、その時は犯人役だったんですよ。すごくドキドキしていて緊張感もすごかったのですが、その回は私、逃げ切れたんです。私がうまくて逃げ切れたのではなく、協力者の方がすごくうまくて逃げ切れましたね」

――その時の協力者の方の「ここがすごかった!」というプレーなどはあったのでしょうか?

「協力者の方は他の方をすごく“攻める”んですよ。誰が犯人か分かっているから、他に疑いが向くようにしてくれたので、私はそれに乗っかればよくて、その時はすごくありがたかったです。でも、今回の作品は劇場版ということもあって、設定のシナリオの複雑さは今までやった中でも一番だったように感じます」

――今回の撮影では何か事前に準備されたことはあったのでしょうか?

「その日、スケジュールがあった他の方とスタッフさんも含めて、みんなで一度テストプレーをしました。その日は『やったことがない』と言っていた高橋さんが引っかき回していたのでめちゃくちゃ面白かったのですが、そこでは真実までたどり着くことはなかったので、実は不安なまま撮影に入ったんです。冒頭で優子が周りの皆さんから疑われて詰められるシーンがあるのですが、それがめちゃくちゃつらくて! 正直、本当に怖かったです…」

――アドリブに対してのとっさの返しというのは、事前に頭の中で考えたりされていたのでしょうか?

「用意していてもいろいろな話題の中心に自分が上がってしまうとすごく焦ってしまうので、『私、絶対に下手だ!』と思いながらアドリブを返していました。でも、完成した映像を見てみたら、お芝居とアドリブの絶妙な間の演技をしていて、なんというか、新しい自分を見ることができた気がします」

――マーダーミステリーというジャンルの作品で役を演じる中で、普段とは違う意識をすることはありますか?

「素になりすぎないようにと意識していました。私、普段からリアクションが大きいこともあって、それが出ないようにしようと思っていたのですが、優子も元看護師ということでおしとやかな印象があったので、素が出すぎないようにしようと思いながら演じていました。でも、本当に芝居と素の状態のはざまだったので、本編を見ても、今までの映画やドラマではしてこなかった表情をしているなとすごく感じていて。いい意味で次の展開が分からない状態でのお芝居だから、よりリアルにお芝居ができている実感もあって勉強にもなりました。完成した映像を見て『これが本当のリアクションなんだな』と思いましたし、今後のお芝居にもちゃんと反映させていこうと思いましたね」

――今回共演したキャストの中で一番アドリブがすごかったと感じたのはどなたでしょう?

「『これ、本当に台本ないの!?』と一番びっくりしたのは、やっぱり五階堂猛さんの1人語り。高橋さんはしゃべるだけで雰囲気があるというのもありますけど、語っている時はすごく引き込まれるものがあって、『え、本当にアドリブ?』と混乱することもあるくらいすごかったです。あと、八嶋さんは『これ指示されるんじゃ…』と思うくらいすごくて。ひとりさんと八嶋さんは、2人の関係性を知らないこともあって、『プライベートでも親交あるのかな…これって2人だけで話し合ってないよね?』と思うくらい掛け合いがすごかったです。『これがプロか』と思っていました」

――北原さんは昨年小説家デビューもされましたが、マーダーミステリー作品の脚本を書いてみたいという気持ちなども芽生えたりされましたか?

「いや、やっぱりミステリーは書けないです! 『名探偵コナン』が好きなこともあって、ミステリー作品を読むのは好きなのですが、実際に自分が小説を書いてみたからこそ、ミステリー作品を書くのは難しいなと思いますね」

――ちなみに、マーダーミステリー作品で次にやってみたいポジションはありますか?

「また犯人役がやりたいですね。最初はうそをつくことに抵抗があったのですが、やっぱりマーダーミステリー作品を重ねてきたので、もう(作品の中で)うそをついてもいいんじゃないかと。抵抗もなくなってきたので、うそをつきながら誰かを攻めてみたいなという気持ちもちょっとありますね(笑)」

【プロフィール】

北原里英(きたはら りえ)
1991年6月24日生まれ。愛知県出身。2007年AKB48第2回研究生(5期生)オーディションに合格して、08年からAKBメンバーとして活躍。15年、NGT48に移籍し、キャプテンを務める。18年にNGT48を卒業後は、ドラマや映画に出演し活動中。女優のほか、23年には小説家としてデビューを果たす。近年の代表作として、映画「女子大小路の名探偵」(23年)、「神さま待って!お花が咲くから」(24年)など。

【作品情報】

「劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目端男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血」
全国公開中

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取材・文/平川秋胡 撮影/蓮尾美智子 スタイリスト/山田梨乃 ヘアメーク/熊谷美奈子
衣装/ブラウス スカート musubore、ブーツ AIC. 問い合わせ先:株式会社 アンティローザhttps://auntierosa.com

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