今までの知識つめこみ型の学力は二の次に。子どもたちに必要な力『あ・か・さ・た・な』とは?先の読めない時代に大事にしたい、これからの子育て

引用元:Milatas/gettyimages

「たまひよ」アプリユーザーに「子育てで大切にしていること」についてアンケート調査をしました。これからの子どもたちに必要な力について、『女性の品格』などの著書が多数ある、昭和女子大学総長 坂東眞理子さんに聞きました。

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我が家の子育て論

まずは、ユーザーの声をお届けします。

■否定せずに個性を尊重
「その子の個性を尊重すること、否定をしないこと。ワガママにするのではなく親に甘えられるようにすること。そして挨拶はちゃんとできることです」(ともちん)

■自然体験を大事に
「あちこち出かけたり、自然体験をしたり、いろいろなことを経験させたいです。食育にも興味があるので、家庭菜園をしたり、できるだけ自炊したりしていろいろなものを食べさせています。あとはマナーも覚えて欲しいです」(ねずみ)

■ふれあい
「ありのままの自分でいいと思えること。自然にふれあい、たくさんの人にふれあい、いろいろなことを感じてもらえるように育てたい」(りん)

■コミュニケーション力
「小さいうちからいろんな人に会わせたり、いろんな所へ連れて行ったりして、人見知りをなくそうとしています」(ブロッコリー)

■家庭環境を大切に
「生後2ヶ月の子がいます。1番大切にしていることは家庭環境です。夫婦仲が良かったら子どもへよい影響があったり、言葉の発達にもいいと思うので、意識して育児しています」(まさね)

■やりたいことは叶えてあげたい
「子どものやりたいことはなるべく多く叶えて、たくさん経験を積んでほしい。まだ5ヶ月なので何をやりたいなどは、自分からは出てこないのですが、将来、やりたいと言ったことはやらせてあげたいと思っています」(たぬたぬ)

■視野を広げたい
「子育てはこれから経験ですが、大事にしたいのは、本人のやりたいことを叶えてあげたいことと、視野を広げてあげたいと思っています」(ネロ)

今から育てていきたいのは、将来の力に役立つ、学力よりも「人間力」を優先

昭和女子大学総長として長く教育現場に携わっている坂東眞理子さんに、これからの子どもたちに必要な力についてお話を聞きました。

「乳幼児期のママ・パパと子どもたちは、幸せなハネムーン時期ですね。どのエピソードも我が子への愛情を感じます。また、子どもたちに豊かな経験をさせたいという親の思いが伝わってきました。

とはいえ、子どもたちが大きくなって活躍する社会は、親世代が経験した社会とはどんどん変わってきます。皆さんもすでにご存知かと思いますが、子どもたちが職業に就く頃には、今ある職業の約2/3が存在しないと予想され、親世代も経験したことのない仕事に就く可能性があると言われています。今はないような職業に就くために、どのような学びが必要になるのか、不安に思われる人もいるのではないでしょうか。

これからの子どもたちに必要なものは、どんな社会になっても通用する力です。その力とは、『人間力』です。今までの知識つめこみ型の学力は二の次です。もちろん、学力が必要ないという意味ではなく、『人間力+学力(スキル・知識を活用する力)』といったイメージです。

私が考えた『人間力』を『あ・か・さ・た・な』であらわすと、
あ…あたたかい(人柄)、明るく前向きな姿勢
か…かわいげがある(愛嬌があり、親しみやすい)
さ…さわやか
た…頼りになる(人から頼りにされる)
な…なんとかなるという前向きで、楽観的な思考

これは私なりに教育現場で感じた、ポジティブな『人間力』です。言われたことしかできないのではなく、明るく前向きに、そしてカッコよくものごとにチャレンジしていって欲しいという願いも込めています。
『人間力』を育むために今から大切にしていただきたいことは、子どもたちの好奇心や前向きな思考を伸ばすことです。これは、知らないことにぶつかったとしても『何だろう』『知りたいな』という好奇心、そして『やれるようになりたい』『やってみたら、楽しくなりそう』と思えるような前向きな思考・姿勢のことです。

好奇心や前向きな思考を伸ばすには、子どもが得意なことや、やってみたいことを見つけられるようによく観察し、タイミングよく『面白そうね』『やってみたら?』などと、親はそっと後押しすることです。親の意向でさせたいことをやらせるのではなく、あくまでも子どもが興味を持ったことというのがポイントです。
とはいえ小さい子どもの興味のあることは、ほとんど勉強に関係ない遊びばかりなので、英語やひらがななどを覚えたほうがいいのではと、思う気持ちもわかります。勉強は入学してからでも十分間に合いますから、心配はいりません。

そして、子どもの得意なことや、できたことに目を向けましょう。成長するにつれて子どもの得意・不得意が見えてくると、親は不得意なことを克服することに目を向けがちです。けれど、できたことをほめて得意を伸ばしたほうが自信を持てるようになり、自ずとほかも伸びていきますし、子どもの自己肯定感を高めることができます。できないことのダメ出しばかりでは、子どもは萎縮して自己肯定感が低くなってしまいます。

我が校の大学生を見ても、人間力や自己肯定感が高い人は、自分が何に向いているか、自分が何をしたいかがわかっていますから、社会でも活躍する傾向にあります。
子どもの好奇心や前向きな思考、得意を伸ばすことは、やがて自分のやりたいことを見つけることにつながり、前向きにチャレンジする人間力の礎になるのではないかと思います」(坂東眞理子さん)

坂東眞理子さん

プロフィール)
昭和女子大学総長。東京大学卒業後、総理府(内閣府)に入省。埼玉県副知事、在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事などを歴任。内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年に昭和女子大学教授、同大学長を経て、現職。ベストセラー『女性の品格』(PHP研究所)のほか、『やわらかい知性』(河出新書)、『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)など女性の生き方のヒントとなる著書多数。

※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※記事の内容は2023年12月の情報で、現在と異なる場合があります。

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