『薬屋のひとりごと』と『プリキュア』の深い縁 猫猫は“優秀過ぎる”ヒロインに

壬氏と猫猫の関係性が深まり、恋愛面での見どころも増加しているTVアニメ『薬屋のひとりごと』。

当初は冴えない“薬オタク”として描かれていた猫猫は、妖艶な化粧の“美女”にも変化するときもあり、その色気に魅了された人も多いのではないだろうか。

本記事では、猫猫の美しさの所以をアニメの制作陣や物語の構造から推察。『薬屋のひとりごと』の詳細を改めて振り返り、猫猫の“ヒロインとしての強さ”を考えていく。

●『プリキュア』血筋の制作&キャスト陣

TVアニメ版『薬屋のひとりごと』には、少女たちが華麗に戦う人気作品『プリキュア』シリーズと通ずる人物が複数人関わっている。その一人が、キャラクターデザインを担当する中谷友紀子だ。

中谷は『Go!プリンセスプリキュア』『トロピカル~ジュ!プリキュア』のキャラクターデザインを手掛けており、かわいい女の子を描くことには相当の技量を備えている。

しかも『Go!プリンセスプリキュア』は2015年から、『トロピカル~ジュ!プリキュア』は2021年から各1年間放送された比較的新しい『プリキュア』作品。最近のアニメの傾向を取り入れたキャラデザによって生まれたと考えれば、猫猫がかわいいのも当然なわけである。

実際、アニメ第15話でキノコの使い道を考えて胸を躍らせ、そのままのテンションで壬氏に「おかえりなさいませ」と発した猫猫の顔は超絶キュート。長いまつ毛に光であふれんばかりの瞳、ピンク色のエフェクトと、本家プリキュアに負けないほどの美少女ぶりを発揮した。

そして、『薬屋のひとりごと』においてもう一人、『プリキュア』と縁が近いのは、猫猫の声優である悠木碧。悠木は、2020年シリーズの作品『ヒーリングっど♥プリキュア』で花寺のどか(キュアグレース)役を務めている。

その他にも『魔法少女まどか☆マギカ』鹿目まどかや『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』比企谷小町など、数多くの少女キャラを演じてきた悠木。筆者は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』で主人公の妹であり腹黒でかわいい小町にドキドキしていたわけだが、猫猫にもその腹黒や毒舌ぶりが引き継がれていることは明白だ。

かわいくて強い少女を描いた大人気作『プリキュア』に縁のある人物が関わっているからこそ、猫猫はこんなにも“芯の通った美少女”となっているのだろう。

●まるでおとぎ話のプリンセス? 身近にいる「王子さま」

制作陣とキャストから一転、物語の構造の観点から見ると猫猫はほぼプリンセスである。

アニメ2クール目にして壬氏が“ただの宦官でない”と明らかになりつつあることを踏まえると、猫猫もただの下女とはもはや言えない存在。壬氏の正体を考慮すれば、猫猫はおとぎ話の主役のような非常にレアな立場にいるのだ。

しかも面白いのは、猫猫がまだ壬氏の正体に気づいていない点。宦官だと思っているためか猫猫は壬氏に対して性的な面でも何かと不注意な言動が多く、それが壬氏の心を揺るがす要因となっているのは間違いないだろう。

なお、毒と薬が好きな一介の下女であった猫猫の身の上についても、徐々に新たな事実が露わにされていく。意外に箱入り娘……かもしれず、やがて猫猫と壬氏はお互いの関係についてさまざまな障壁を感じることになるだろう。

2人の生い立ちについてはまだ明らかにされていない部分が多いものの、猫猫がプリンセスに近い立場にあるために、本作の恋愛作品としての魅力が増しているのは明らかだ。マンガで本作を楽しんでいる筆者からすれば、壬氏の正体について猫猫が勘繰り始めるのが待ち遠しくてたまらない。

放送開始から3カ月以上が経ってもなお、視聴者の心をつかんで離さない『薬屋のひとりごと』。その人気の背景には、猫猫のヒロインとしての才覚と実力がたしかに隠されている。

(文=三山てらこ)

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