【西武】育成2年目モンテルがA班抜擢!開幕一軍へ“万波中正に似ている”新打撃フォームで「振って振って振りまくる!」

松井稼頭央監督2年目のシーズンを迎える埼玉西武ライオンズ。6日から始まった宮崎・南郷町でのA班春季キャンプも折り返しに差し掛かり、開幕一軍の切符をかけた本格的なサバイバルがスタートする。

第3クール初日を迎えた16日、その争いに加わるべく高知で行われていたB班キャンプから合流したのが、育成2年目の外野手・モンテル(23)だ。
秋季キャンプで直接指導をしてきた平石洋介ヘッドコーチによると「秋も頑張って、いい姿を見せてくれていましたし、(実戦で)見たい」というのが、今回のA班抜擢の理由だ。

「やっと来たか、ようやく来たかって」

まずは、支配下登録を勝ち取るためのスタートラインに立った。気持ちが昂るのも無理はない。合流初日、今キャンプで初めて行われたゲームノックでその思いを存分に解放した。実戦を想定したベースランニングでは颯爽とダイヤモンドを駆け抜け、自慢の俊足を一軍首脳陣の目にしっかり焼き付けた。

「1番アピールしたいところは足。今日のゲームノックでも、ホームまで生還できた走塁もあったので、しっかりアピールできたなって思います」

その俊足と身体能力の高さが評価され、2022年の育成ドラフト2位で入団。しかし、ドラフト指名を受けたその年の夏までは投手だったこともあり、課題となるのはやはりバッティングだ。この日、打撃指導にあたった高山久一軍打撃コーチは現時点でのモンテルをこう分析する。

「試合になったらしぶとくて、打ったりするので、そういうところは評価している。(育成なので)しっかり打って、結果を残して行かないといけないのですが、肩は強いし、足は速い、そしてパンチ力もある。あとはバッティングの確実性なので、そこを上げてあげたいですね」

バッティングの確実性――。二軍と三軍を行き来していた昨シーズンから、モンテル自身が常々口にしてきたことだった。

この日の打撃練習では、そんなモンテルの打撃フォームが、昨年と大きく変わっていることに気がづいた。バットを寝かせて肩に担ぐような位置で構え、そこから鋭くスイングをかけていく。以前と比べて、とてもシンプルにバットが出ているようにも感じられた。

「一番は脱力を意識しています。バットを肩に担ぐ形は、(日本ハムの)万波中正に似ているんですけど、その打ち方だと脱力できて、バットを2度引きして、タイミングが遅れるという自分の悪い癖がなくなるのがわかったんです。動きの癖を直すために(この打ち方を)始めました」
一緒に自主トレを行っていた渡部健人(25)や同郷のブランドン(25)からの指摘を受け、このオフから今の打撃フォームに挑戦。その結果、悪癖もなくなり、ボールへのコンタクトもしやすくなったという。
「しっかりボールのラインに合わせれば、強い打球が行くようになりました。力を入れたら柵越えもするようにもなりましたが、今は(ボールに)ラインを合わせて、インパクトの瞬間だけ力を入れるようにして、それまではできるだけ力を抜くようにしています。上背があるので(当たれば)打球は飛んでいきますし、しっかりコンパクトに当てることを意識してやっています」

コーチが引き上げたあとの室内練習場。マシンを相手に、最後のひとりになるまで一心不乱にバットを振り続けるモンテルの姿があった。疲労からボールを捉え損ねることもあったが、それでも鋭い打球がライナーでネットを揺らすシーンは多い。首脳陣へのアピールではなく、疲れた体に鞭を打ってでも、「今のバッティングを自分のものにしたい、チャンスをつかみたい」という強い意志がその背中からは感じた。

「ただ支配下になるのではなく、やはりレギュラーをとって、もっと上の舞台に立ちたい。独立リーグを経験して、NPBを諦めていく選手をいっぱい見てきましたが、その分も僕はこの世界でもっと上の舞台に行って『ここまでできるぞ』っていうところを見せたい。そのためには、やはり打たないとレギュラーは取れないと思うので、振って振って振りまくって、やっていこうと思っています」

独立リーグ・徳島でチームメートだったドラフト同期の茶野篤政(オリックス育成4位)は去年、春季キャンプからのアピールで、支配下登録だけでなく、一気に開幕スタメンまで勝ち取った。

かつてのチームメートのように、ようやく巡ってきたこのチャンスを掴むことができるのか。まずは19日の紅白戦、モンテルの躍動する姿に期待したい。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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