【知らなきゃ損】親の介護費で家計が火の車…申請すればお金が戻ってくる、積極的に利用したい「国の制度」

(※写真はイメージです/PIXTA)

前触れなく始まることも多い「親の介護」。いざ始まって痛感するのが、その費用の高さです。介護サービスは1~3割の自己負担で利用できることになっているものの、気づいたら「利用限度額」を超えていた、というケースも少なくありません。そこで、申請すれば費用負担を減らせる公的制度について詳しくみていきましょう。※本記事の情報は、抜粋元の書籍が刊行された2021年7月8日時点のものです。

介護費が高い!→実は「軽減制度」で取り戻せる?

限度額を超えた費用負担を軽減できる「高額介護サービス費」

介護サービスは、収入に応じて1〜3割の自己負担で利用できます。しかし、多くのサービスを受けて利用限度額を超えた分は全額自己負担となります。

この利用限度額を超えた費用負担を軽減できるのが「高額介護サービス費」。1カ月に支払った介護サービス費が利用限度額を超え、さらに高額介護サービス費の上限額も超えると、超過分が払い戻されます。一般的な年金受給夫婦の場合、上限額は月額4万4,400円です。

[図表1]の例では、夫婦で7万2,703円の介護サービス費を支払ったとしても、世帯収入による区分で上限額が4万4,400円なので、超過分の2万8,303円が払い戻されます。

[図表1]費用負担が高額になったら申請すると戻ってくるお金 ※夫婦2人の介護サービスを利用した例は編集部試算
出典:秋田県横手市HP 「介護保険サービス(令和3年8月改正)」

申請には、初回だけ手続きが必要です。まず、高額介護サービス費の上限額を超えた月があれば、特に申請をしなくとも、2~3カ月後に役所から『介護保険高額介護サービス費支給申請書』が送付されます。必要事項を記入・押印し、介護保険課に申請書を提出すると手続きが完了します。

一度申請すれば、以降は高額介護サービス費に該当する場合に、自動的に指定口座へと振り込まれます。

「原則自己負担」の居住費や食費も、経済的に支払いが困難なら軽減可能

施設費用でも、公的施設は負担軽減制度があります。「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」です。

本来、居住費や食費は介護保険の適用外で全額自己負担となりますが、所得や資産などが一定以下の人は、市区町村に申請をして、負担限度額認定を受けると負担限度額を超える費用が軽減されます。特養以外にも介護老人保健施設やショートステイ利用時などにも適用されます。

限度額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって[図表2]のように区分されています。住民税非課税の第1~第3段階(住民税非課税世帯)に該当する人が負担軽減の対象で、住民税が課税される世帯の第4段階(住民税課税世帯)の人は対象外となります。

[図表2]公的施設は食費と居住費が軽減される場合がある ※1:本人年金年収等合計額が80万円超120万円以下の人
※2:本人年金収入等合計額が120万円超の人
※3:宅別養護老人ホームに入所または短期入所生活介護を利用した場合の額
出典:島根県出雲市HP

「負担限度額認定証」の申請方法は?

特定入所者介護サービス費制度を利用するためには「負担限度額認定証」の交付が必要です。初めて介護保険施設に入居する、またはショートステイを利用するときに、役所の介護保険課で申請しましょう。

手続きには申請書の他に、預貯金などの残高がわかる通帳などのコピー、マイナンバー確認書類などが必要になります。

申し込み後、利用者負担段階の第1~第3段階に該当すれば1週間程度で認定証が交付されます。

「介護費軽減」と「医療費軽減」の併用も可能

高齢になると、持病の悪化や骨折などのケガにより、医療費がかさむこともあります。すでに家族が介護保険サービスを利用している場合は、介護費用に加え、医療費が重なり経済的に苦しくなることも少なくありません。

この場合、高額療養費制度と高額介護サービス費制度の併用が可能です。

高額療養費制度では、年齢や所得に応じて1カ月の自己負担限度額があります。自己負担した医療費は世帯全員で合算可能。ただし、70歳以上や後期高齢者医療制度に加入していて、所得水準が一定以下の場合、外来は個人単位、外来+入院は世帯単位での適用です。

たとえば、後期高齢者医療制度に加入していて、所得が一般的な水準の場合、外来なら個人で1万8,000円、入院した場合には世帯合算で5万7,600円が毎月の自己負担限度額となります。

なお、後期高齢者医療制度の加入者は、事前の申請は不要です。都道府県ごとに設置されている後期高齢者医療広域連合が医療費を計算し、支給対象となった場合には、診療月から3〜4カ月程度で『高額療養費支給申請書』が送付されます。

届いた申請書に記入して、役所の後期高齢者医療制度担当窓口に提出(郵送でも可)することで、払い戻しを受けられます。

一度申請すれば、次回からは高額療養費に該当する場合に自動的に指定口座に振り込まれます。

[図表3]介護時の医療費も高額になると一定額が戻ってくる ※多数回とは過去12カ月に、高額療養費の支給が3回あった場合の4回目以降から適用になる限度額。ただし、「外来(個人ごと)の限度額」による支給は、多数回該当の回数には含みません。現役並みの人は、個人の外来のみで「外来+入院(世帯ごと)」の限度額に該当した場合も多数回の回数に含みます
出典:東京都後期高齢者医療広域連合「東京いきいきネット」

医療費と介護費を“合算”して負担軽減が可能

「高額医療・高額介護合算療養費制度」について

医療費と介護費が高額になった場合、いずれも自己負担上限額が定められていますが、両者の支払いが重なれば、それぞれの上限額を支払うだけでも重い負担となることが考えられます。そんなときに知っておきたいのが「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。8月から起算した1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計が上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻されます。

[図表4]のように、世帯の所得ごとに自己負担限度額があり、70歳以上のみの世帯で一般的な所得水準であれば、自己負担限度額は56万円です。

[図表4]医療と介護の費用負担を合わせて軽減する制度とは? ※1:対象となるのは1年間(8月1日~翌年7月31日)に支払った自己負担額。
69歳以下と合算する場合は、1つの医療機関につき、1人で1カ月2万1000円以
上の自己負担額が対象。ただし、合算できるのは、公的医療保険からの高額療養
費の給付金や自治体からの助成等を控除した後の金額になります
※2:年収は目安の金額です
※3:介護サービス利用者が世帯内に複数人いる場合は31万円
出典:『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)より抜粋

たとえば、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担分が、夫は52万3,172円、妻は12万5,676円だった場合、合計で64万8,848円となります。そこから、自己負担限度額を差し引いた8万8,848円が払い戻されることになります。

ただし、この制度で世帯合算できるのは、同一の医療保険に加入している家族分のみとなります。夫が後期高齢者医療制度に加入していて、妻が国民健康保険に加入している場合などには合算できません。

制度の利用条件が細かいので、まずは役所の医療保険の窓口やケアマネに相談してみましょう。

[図表5]払い戻される金額の例 ※払い戻される例は編集部試算
出典:厚生労働省保険局「高額介護合算療養費制度の見直しについて

角川SSCムック

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