ともに「挫折」味わい競技転向 自転車競技の太田海也と長迫吉拓 岡山の2人がめざす「パリ五輪」

シリーズでお伝えします「パリで輝け!」です。今回は、自転車のトラック競技でパリ五輪出場を目指す、岡山県出身の太田海也選手と長迫吉拓選手です。

現在2人は、日本代表として国際大会で快進撃を続けていて、五輪でも故郷の岡山にメダルを届けたいと意気込みます。

静岡県の伊豆半島。富士山を望む場所でパリ五輪を目指す、岡山県出身の2人のアスリートがいます。そのうちの一人が、岡山市出身・自転車競技日本代表の太田海也選手(【画像①】)です。

太田選手はナショナルチームが拠点を置く、静岡県伊豆市で練習に取り組んでいます。練習会場は東京五輪で使われたトラックです(【画像②③】)。

(太田海也選手)
「練習では、五輪がここで行われた部分を参考にしている部分もあるので、パリは絶対に自分が出場するという気持ちは強くなります」

傾斜のあるトラックで最短距離となる幅わずか20センチ程の「ラインの間」(【画像④】)を意識し、競技では最大時速80キロで駆け抜けます。

(太田海也選手)
「あの隙間を走ることがすごく重要になってきて、黒色のラインの上を走るのがすごく難しいんですけど、それを常に意識して練習しているので、めちゃくちゃタイムも変わります」

そこを走るには、それだけ自転車をコントロールしないといけないというテクニックもあるので、全てを考えてもそこを走ることが重要になってくる」

本格的な競技歴は僅か2年ほど なぜ飛躍?監督「それはシンプルだ」

世界を相手に戦う太田選手。驚くことに本格的な自転車競技歴はわずか2年ほど。

にもかかわらず、国際大会で快進撃を続けています。去年9月、杭州アジア大会で、太田選手は自転車競技のスプリントと・チームスプリントの2種目で金メダルに輝きました。

さらに、去年12月東京で行われた、競輪の「ヤンググランプリ」では太田選手が最終周で後続を振り切り優勝、国内の若手選手ナンバーワンにも輝きました。

太田選手の強さについて、ナショナルチームの監督は。

(ナショナルチーム ブノワ・ベトゥ監督)
「とってもシンプルだ。太田選手は間違いなく一番才能がある。疑いの余地はない。彼は世界のトップと戦う準備はもう出来ているから期待している」

飛躍の陰に会った挫折

太田選手は幼少期から「レスリング」や「サッカー」など、様々なスポーツに取り組んできました。

進学した岡山県立備前緑陽高校では、ボート部に所属。全国高校総体で優勝するなど選手として将来が期待されていました。そして、五輪を目指すため大学ボートの強豪日本大学に進学します。

しかし、壁にぶつかり、僅か7か月で大学を中退します。

(太田海也選手)
「日本のレベルと自分自身のレベルを比べたときに、日本代表に入れるか入れないかみたいなところにいる自分がいた」

「『五輪を目指すところに行けないんだ』という挫折みたいなもので、完全燃焼して、ボートへの熱が冷めてきて、中退するかたちになりました」

「偶然」自転車競技と出会った「ボートの経験が生きている」

岡山に戻った太田選手はサイクルショップに就職します。そこで、自転車の魅力に引き込まれ、2021年に競輪選手の養成所に入所。翌年にはプロの選手としてデビューします。

そして、高い能力が認められ、ナショナルチーム入りも果たします。活躍の原点には岡山での経験がありました。

(太田海也選手)
「岡山で生まれ育っているので、ボートも岡山でやっていたので。ボート競技をしていたことが今の自分の強味の全てなのかな」

「練習に対しての気持ちだったり、どういうふうに生活したら強くなれるかということそういうことが、自転車に全て生きているのかな」

そしてもう1人「別競技での挫折」からパリ五輪目指す選手がいた

ナショナルチームで太田選手と同様、異色の経歴を持つ郷土出身のアスリートがいます。岡山県笠岡市出身の長迫吉拓選手(【画像⑤】)です。

(長迫吉拓選手)
「パリ五輪は、3大会目となりますが、やっとメダルを狙える位置に来たのかな」

長迫選手は、自転車のBMXでリオ五輪・東京五輪の2大会に出場しましたが、目標とするメダルの獲得は叶いませんでした。東京五輪の後には現役引退も考えたと言います。

しかし、「五輪でメダルを獲得する」夢の実現のために決断をします。

(長迫吉拓選手)
「チームスプリントとして、パリ五輪を目指したいなと思っています」

BMXで培われた武器 転向僅か2年で日本代表入り!

種目を「BMX」から「トラック競技」に転向した長迫選手。転向してわずか2年ほどにも関わらず、BMXで培われた「スタートダッシュ」を武器に、日本代表入りを果たしたのです。

(長迫吉拓選手)
「競輪選手にはない『ダッシュ力』が僕にはあって。スタートダッシュでもパワーではなくて、体の使い方、テクニックがかなり、重要になってくるんですけど」

「細かい動きがBMXで磨かれたところが、生きているのかな」

(ナショナルチーム ブノワ・ベトゥ監督)
「長迫選手は、BMXからトラック競技に転向するという厳しい選択をした。その精神力が彼の強さです」

国際大会で2人はワンツーフィニッシュ!そして2人はパリ五輪を目指す

今月、オーストラリアで行われた国際大会で、太田選手は男子スプリントで優勝、長迫選手は太田選手とともにチームスプリントで2位に輝きました。

(長迫吉拓選手)
「五輪の選考中で、五輪出場に向かっている最中なんですけど、これで五輪にかなり近づいたと思いますし、はずみになったと思います」

日本がパリ出場権を獲得できるかが決まるのは4月で、2人は国際大会でのポイント積み上げを狙います。

(長迫吉拓選手)
「ちゃんと自分を信じて、頑張っていれば、自分の思ったところにはかなり近づけると思うので、そういったところを見てほしい。笠岡市にメダルを持って帰りたいと思います」

(太田海也選手)
「地元の応援というのはより身近に感じますし、届きやすいと思っていて、とても力に変わります。『岡山旋風』にしっかり乗って、五輪でメダルを取れることを、目標にしっかり頑張って行きますので、応援よろしくお願いします」

異色の経歴でパリ五輪出場を目指す長迫選手と太田選手。夢の実現に向けて2人はさらにギアを上げます。

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