「光る君へ」の紫式部、幼少から非常に優秀 ドラマやアニメの時代考証担う歴史学者が語る人物像

「越前と女性たち」と題し講演する本郷さん=2月14日、福井新聞社・風の森ホール

 福井新聞政経懇話会の第491回2月例会が2月14日、福井県の福井新聞社・風の森ホールであり、ドラマやアニメの時代考証に携わる本郷和人・東京大史料編纂所教授(日本中世史)が「越前と女性たち」と題して講演した。放映中のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公の紫式部や、お市の方ら福井ゆかりの歴史上の女性や、それにまつわる逸話を紹介。紫式部の人物像について「子どものころから優秀だった」と述べた。

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 講演要旨は次の通り。

 一、越前は京都に近く重視されていた。紫式部の父の藤原為時はいったん淡路(現在の兵庫県)の国司に任じられたが、越前に変更された。隣国の若狭に宋の商人がおり、交渉のために漢文の才がある為時が選ばれたという研究がある。

 一、中世では女性の実名は表に出てこない。紫式部も「式部」は父の官職名、「紫」は紫式部が記した源氏物語に登場する「紫の上」に由来しているとされる。平安時代の女性は漢字は使わず仮名を使っていたが、紫式部は子どものころから漢字をすいすいと読みこなしていた。非常に優秀だった。

 一、源氏物語は世界に冠たる、日本を代表する文学だ。しかし、平安時代の日本(の実情)が描かれているかというと、そうではないというのが感想。源氏物語には庶民が登場せず、貴族社会の中で完結しているからだ。貴族の中で読むのが常識となるのは室町時代で、評価にも変遷がある。

 一、お市の方については、豊臣秀吉がお市の方を慕っていたとか、お市の方が秀吉を嫌っていたという物語が作られることもあるが、これはフィクションで裏付ける史料はない。

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