大沢たかおの主演ドラマ『沈黙の艦隊』が配信開始! 「海江田とは友達になれないですよ。無口だし…」

Amazon Original ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』の主演・大沢たかおさんにインタビュー。この作品に懸ける思い、俳優という仕事についてお話を聞きました。サムネイル画像撮影/高橋明宏(※高ははしごだか)

2023年秋に公開されて大ヒットした映画『沈黙の艦隊』に未公開シーンを加え、その後、東京湾で勃発するクライマックスまでを一気に描いた全8話の完全版『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』。 本作の主演・大沢たかおさんに撮影の裏側、海江田という役、俳優業について、熱く語っていただきました!

大沢たかおさんにインタビュー

――『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』では主演、且つプロデューサーとしてクレジットされていますが、プロデューサーも務めようと思ったきっかけはあるのでしょうか? 大沢たかおさん(以下、大沢):プロデューサーという肩書きはありますが、自分としては、出演する作品にできる限り協力するというスタンスです。 それは本作に限らず、どんな作品でも自分が関わる以上はできる限りのことをするという気持ちを常に持っています。主演も助演も関係なく、責任を持ってやるという気持ちで臨みました。 ――海江田四郎という役について、どう解釈して演じましたか? 大沢:原作漫画を読んだとき、海江田の顔が実にりりしく、いかにも正義感あふれる人物だと思いました。悪者に見えない、世界を救う立派な人。その方が映画やドラマにするときは分かりやすいとは思うのですが、今は昭和じゃない。 令和の時代にそういう正義の味方のような主人公が受け入れられるだろうかと考えました。そこがこの原作を映画化する上で、一番難しいポイントでした。 ここ数年、新型コロナウイルスの流行や戦争など、想像の斜め上を行くことが世界で次々に起こって、ヒヤヒヤすることの連続じゃないですか。 普通に豊かな生活を送ることさえ難しい時代になりましたよね。そんな時代に映像化する『沈黙の艦隊』とは……と、ずっと考えていたんです。

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

――実写化の話があったときから、作品の時代性、海江田のキャラクターについて深く考えていたんですね。 大沢:この作品を見るお客さんに、全8話をドキドキ、ワクワクしながら見てもらうためにはどうしたらいいのかと。海江田を正義感あふれる人物ではなく、正統派とは真逆のキャラクターにしたら、面白いものになるのではないかと思ったんです。 だから、僕は海江田のキャラクターを、お客さんに心理をつかませない、何を考えているのか分からないような謎めいた人物にすることを意識しました。

現状に満足してないから挑戦する

撮影/高橋明宏

――そんな海江田を演じて、彼の生き方から感じたことはありますか? 大沢:海江田はとても頭がいい人だと思います。潜水艦のデータはもちろん、海底の地形もすべて頭に入っているし、先々のことまで想定し、完璧にシミュレーションしている。 加えて交渉術にも長けているし、読心術もできる。何もかもお見通しで非の打ち所がない男なんです。 僕は本能の赴くままに生きているので、海江田のようにはなれない。でも、もし彼と同じような頭脳があったら、彼のような行動をする可能性はなくはないと思いました。 ――作品の中で、海江田は常人では思いもつかない挑戦をし続けています。大沢さんも作品ごとにチャレンジしている印象があり、そこは海江田と通じるものがあると思いました。 大沢:僕の場合はスリルが好きなんです。でも海江田は常に問題意識を持って挑戦をしている。そこが違いですね。おそらく現状に満足していないんでしょう。 満足していないからこそ、殻を破るような挑戦をしようとしてしまう……。でも、そういう点では僕も海江田のような一面があるかもしれません。 現状に満足していたら、僕は役者の仕事をやっていないかも。肉体的にも精神的にも負担は大きい、とても大変な仕事ですから。 でも何か問題を感じていて、その問題を突破できると思えたら、今回のような大胆な企画に飛び込むこともあります。

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

――問題を突破するために挑戦をするのですね。 大沢:海江田がやろうとしていることとは次元が違いますけどね。彼もさまざまな問題を抱えていて、問題解決の最終手段が潜水艦を奪うことだった。政府も動きますし、部下も道連れにするほどのある種の犯罪、テロ行為です。 でも、そこまでしなくてはいけないほど、彼の中では深刻な問題があった……。やはり人は何かに突き動かされると思いもよらない挑戦をしようとするのかもしれません。 ――海江田役がハマっていましたが、彼とは友達になれそうですか? 大沢:なれないですよ(笑)。あの人、無口だし、連絡くれなさそうじゃないですか? 僕はとてもフレンドリーなナイスガイなので、海江田とは真逆ですね(笑)。

アメリカとの攻防で見せるリアルな交渉術

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

――潜水艦のシーン、バトルシーンなど、これまでの日本映画やドラマにないようなスケールで驚きました。 大沢:僕は、映画やドラマの制作はあらゆる可能性と方法があっていいと思っています。今回はエンターテインメント作品らしい直球勝負のスケール感でいきましたが、小さな世界観でもできるし、ドキュメンタリー的な手法でも描けるわけです。 可能性は無限大。ただ、躊躇(ちゅうちょ)したり、安全策を取って置きに行ったりしては絶対にダメだと思っています。 だから本作は地上波では難しいであろうセリフもありますし、日米間の問題、比較など、突っ込んだ内容になっています。

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

――確かにアメリカとの交渉など、そこまでやるのか?というスリルがありました。 大沢:原作は漫画なので、状況を細かく説明することも可能ですが、映像作品では長々と説明はできない。でもこの映画のスタッフも僕も、我々の国のあり方、対応の仕方など、劇中で起こっている問題を映像の中でちゃんと描きたいと思ったんです。 海江田が潜水艦をジャックして、政府をあざむいてまで起こしたことに対し、政府や官僚がどう腹をくくって対応するのかをエンターテインメントとして見せていくことが大事だと思いました。 政府や官僚が物分かりよく物事をバンバン解決していったら、それは嘘だろうと思いますし、本作では互いの顔色をうかがったり、アメリカに嫌われないようにしたり……。 海外の人が見たら「何をいつまでもモタモタやっているんだ?」と思うような描き方をしています。でもそうするのが日本人。そういう日本らしい切り口で描いているので、これが世界へ配信されたら、どんな風に受け取られるのかと興味はありますね。 ――世界中に配信されることに対して、期待と不安はどちらでしょうか? 大沢:こういうテーマの作品がどう見られていたかという前例を知らないので、未知数ですよね。ある意味、ジャッジされる立場にいるので、期待をしているけど、不安もかなりあります。 ――この作品はエンターテインメントだからこそできたこともありますよね。 大沢:確かにそうですね。『沈黙の艦隊』の内容は、ドキュメンタリーでは難しいと思うんです。エンターテインメントだから突っ込んで描けたし、フィクションだからこそ、海上自衛隊も協力してくれたのではないかと思います。

お客さんの心に届けるために演じている

撮影/高橋明宏

――先ほど、「現状に満足していたら役者の仕事はしていないかもしれない」とおっしゃっていましたが、一度お休みをされてから、復帰後は精力的にお仕事をされている。役者の仕事を続ける意味、醍醐味はどこにありますか? 大沢:この仕事はとても自由な仕事だと思います。お金を稼ぐため、モテるため、家族のため、別人になるため……。人によって、それぞれ役者になる理由が違いますしね。 単純に僕は、作品を通して、見てくださった方がワクワクしたり、感動したりしてくれることがうれしい。「〇〇という作品で勇気をもらいました」「毎週、続きが楽しみで仕方がありません」とか、そういう言葉がうれしくて仕方がないんです。 見てくださる方たちは直接の知り合いではないけれど、だからこそ、そういう方たちの心にも届けることができるというのが役者の仕事の素晴らしさだと思います。 ただ人気商売なので、いつまで続けていられるか分からないですよ。出演依頼がなくなったら終わりですから……。

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

――出演依頼がなくなるなんて、そんなことありえないですよ。 大沢:あと僕自身もこの仕事に求めるハードルが上がっているので。もともと挑戦することが好きなので、エッジの効いた仕事に惹かれる傾向があるんです。やはり仕事にスリルを求め始めると、どんどん刺激的な方に走っていってしまう。 ジェットコースターが好きな人は、どんどん過激なジェットコースターを求めるじゃないですか。そのうちスカイダイビングで空を飛んだり、もっと刺激を求めて、羽根をつけて空を飛ぼうとする人がいたり(笑)。 そこに整合性も合理性もなく、ただ刺激を求めていくという……。僕もその傾向があるので、エッジの効いた作品を求めて、そのうち羽根をつけて空を飛ぶレベルに行くかもしれません(笑)。

撮影/高橋明宏

――そういう意味では、『沈黙の艦隊』もかなり刺激的な作品だと思います。 大沢:そうですね。この作品のチームもチャレンジャーですよ。最初から画期的な企画でしたから。昨年、劇場公開できたときは「本当にやったんだ!」と挑戦を全うできた気持ちでうれしかったです。 ぜひドラマシリーズも全8話、楽しんでいただきたいです。

大沢たかお(おおさわ・たかお)さんのプロフィール

東京都出身。映画、ドラマなど多方面で活躍。2005年、映画『解夏』で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2007年『地下鉄(メトロ)に乗って』で第30回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。2009年、主演ドラマ『JIN-仁-』(TBS)が大ヒット。2010年に橋田賞を受賞。映画『キングダム』シリーズ(2019~2024)で人気キャラクターの王騎を熱演。最新作は『キングダム 大将軍の帰還』(2024年7月12日公開予定)。

Amazon Original ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』2024年2月9日から、Prime Videoで全世界配信開始

(C)2024 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. 原作/かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)

前半の1~4話で描かれるのは、劇場版のストーリーに未公開シーンを加えた“序章”。海江田四郎(大沢たかお)は日米が極秘開発していた原子力潜水艦シーバットの艦長。ある日、海江田は核ミサイルを搭載したまま、シーバットと共に行方をくらましてしまう。しかし、彼の目的は“平和”だった。 5~8話は、反乱を起こしたシーバットの海江田を阻止すべく日米の政府が動き出し、東京湾を舞台にした潜水艦アクションが繰り広げられる。 監督:吉野耕平(1話、2話、7話、8話)、中村哲平(3話、4話)、蔵方政俊(5話)、岸塚祐季(6話) 出演:大沢たかお、玉木宏、上戸彩、ユースケ・サンタマリア、中村倫也、中村蒼、松岡広大、前原滉、水川あさみ、笹野高史、夏川結衣、江口洋介 配信スケジュール: 2月9日(金)1~6話、16日(金)7~8話(全8話) 取材・文:斎藤香 撮影:高橋明宏(※高ははしごだか) スタイリスト:黒田領 ヘアメイク:松本あきお(beautiful ambition) 衣装クレジット:ニット/ルフォン(シアン PR)、その他スタイリスト私物 (文:斎藤 香(映画ガイド))

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