自分を良く見せようと見栄を張るのはいいけれど、見栄を通り越してただのホラ話になっている人もたまにいますよね。今回は見栄っ張りの姑のホラ話に巻き込まれた私の知人、Tさんに聞いたお話です。
見栄っ張りの姑
Tさんは当時、憧れていたマイホームを購入したばかり。
結構な額のローンを組んだため、夫婦2人で働き、力を合わせて返済をしていました。
ただ、Tさんにはひとつだけ後悔をしていることがありました。
それはマイホームを旦那さんの実家の近くに建ててしまったことです。
数日前、Tさんは近所に住む年配の女性にこう言われたのでした。
「ねえアナタ、〇〇さんち(旦那さんの実家)のお嫁さんでしょ? いいお家建てて貰ったわねえ」
「え?」
家を建てるにあたり、旦那さんの両親からは一銭も受け取っていないため、Tさんは戸惑いました。
「義母がそう言ってるんですか?」
「そうよぉ~、ほんといいお姑さんよね! 結構高くついたけど、孫のために頑張ったって言ってたわよ」
女性はどうやら近所に住む姑と仲が良いようでした。
「ねえあなた、この家お義母さんが建てたことになってるみたいなんだけど」
その夜、Tさんは旦那さんに、ご近所さんの話をしました。
「母さん昔から見栄っ張りなんだよな…… 何が孫のために頑張った、だよ。息子が家のローンで苦しんでるってのに」
「いえのろーんってなに?」
5歳の娘が、聞きなれない言葉に首を傾げました。
「パパは貧乏だってことだよ、えーん」
旦那さんはそう言って娘に泣きまねをして見せました。
ご近所さんとのお茶会
「Tさん、今日はご近所さんを招いてお茶会するから手伝いに来てちょうだい!」
ある日、Tさんはそう言われて義実家に呼び出されました。
「こんにちはー」
「Tさん遅かったじゃない、早くお茶の用意して」
Tさんが義実家に着いた頃には、先日Tさんに話しかけてきた年配の女性を含めた数人の女性が応接間に座っていました。
「すみません、娘を迎えに行ってたので」
ちょうど幼稚園から帰ったばかりの娘は、姑に呼ばれて姑の隣りにちょこんと腰をおろしました。
「素敵なお家に住ませてもらってるんだから、お茶くらい淹れてくれないとねえ」
お茶の用意をしているTさんにご近所さんがそう言う声が聞こえましたが、Tさんは姑の顔を立てるためにぐっと我慢しました。
「そりゃそうよ、私があの家を現金一括で買ってあげたんだからね!」
姑の高笑いが響きわたりました。
「おばあちゃん、おかねもちなの?」
ふいに娘の声がしました。
「そうよ、おばあちゃんはお金持ち!」
確か義両親は年金暮らしで、そんなに貯金もないはず。Tさんは苦笑いしながらお茶を応接間に運ぼうとしました。
すると娘が突然、大きな声をあげたのです。
娘の無邪気な一言
「おばあちゃん、そんなにおかねもちならパパにおかねあげて! いえのろーんでパパびんぼうだってないてたよ!!」
娘は姑の服の裾をひっぱり、いえのろーんと連発します。
「い、家のローン……」
ついさっき姑が現金一括と言ったばかりだったので、ご近所さんは全員気まずそうな表情。
「お茶が入りましたよー」
空気を変えようとお茶を持って行ったTさんでしたが、姑の顔をちらっと見ると、恥ずかしさのあまり真っ赤になっていたそうです。
その後、お姑さんは二度と家を買ってやったという話をすることはなくなったとのこと。
せめて現金一括と言わなければ、まだそこまで恥をかくことはなかったはずなのに。見栄を張りすぎたためにかえって大恥をかくこともあるんですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子