被災後初の化粧、表情明るく 元ジバンシィ専属中野さん施す 輪島・町野町佐野の女性6人に

住民に化粧を施す中野さん(左)=輪島市町野町佐野

 能登半島地震で被災した女性におしゃれを楽しみ、前向きな気持ちになってもらおうと、フランスの有名ブランドの元専属メークアップアーティストが17日、輪島市町野町佐野を訪れ、地元の女性6人に化粧を施した。地震発生後、初めて化粧した女性たちは「きれいにしてもらって元気が出た」「本当にテンションが上がる」と充実した表情を見せた。

 訪れたのは横浜市の中野剛章(よしあき)さん(55)。フランスの有名ブランド「ジバンシィ」の専属アーティストとして21年間、数多くの有名女優やモデルのメークを手掛けてきた。現在は独立して美容品の販売会社「N2―luana」(横浜市)を経営し、3年目となる。

  ●佐野寺に支援申し出

 地震が発生し「被災者につらいことを少しの間だけでも忘れて明るい気持ちになってほしい」と中野さんが共通の知人を介して、町野町佐野の真言宗佐野寺の谷隆秀住職(54)に支援を申し出て、化粧が落とせるよう断水が解消された寺を利用することになった。

 寺の一室に大量のメーク道具が持ち込まれ、16~72歳の女性から「女優さんみたいに目をぱっちりさせてください」「かわいくしてください」とさまざまな注文を受けた。メークが終わって鏡を見た女性は「うわっ」と声を上げた。

  ●「ずっと楽しみに」

 宮下勝子さん(56)は普段は眼鏡を掛けているが、この日は特別にコンタクトレンズを着用。「ずっと楽しみにしていた。旦那に化粧姿を見せるのが楽しみ」と笑顔を見せた。

 通信制高校アットマーク国際高2年の谷侑香里(ゆかり)さん(16)は「別人みたい。もう化粧を落としたくない」と目を細めた。前名和美さん(53)は鏡に見入り「久しぶりに女性に戻った気分」と話した。

 住民らによると、地震後、断水が続いているため化粧落としができず、化粧をしない女性が多いという。中野さんが被災地でボランティア活動をするのは初めてで、「すごく喜んでくれた。本当に来て良かった」と話した。

  ●山あいに浄水装置

 輪島市町野町佐野で17日、アクアデザインシステム(高知県)、メリハリ(福岡県)のスタッフがボランティアで山あいの空き地に浄水装置を設けた。沢の水がろ過され、住民が生活用水を受け取れるようになった。

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