収入の約半分が親からの援助、アルバイトは?
食品や光熱費の値上がりについて頻繁に話題に挙がる昨今ですが、大学の授業料などを値上げする大学も続々と増えています。
例えば、早稲田大学は学費を2024年度より改定する方針を示しています。
政治経済学部は約7万6000円、基幹理工学部については約14万円値上げすることが決まっています。
大学生やその保護者にとって学費負担が重荷であることは多々指摘されています。
保護者の勤務先や子どものアルバイト先の給与が上がらない場合、負担がますます重くなると見込まれます。
親御さんの中には「大学生は自由な時間が多いし、アルバイトをする時間が十分にとれるのではないか?」と思われている方や、「文系の大学生は時間に余裕がある。アルバイトばかりしている」といったイメージを抱かれる方も多くいます。
確かに、取得単位数や年間における講義の時間は昔とさほど変わりませんし、夏と春先には2カ月ほどの休暇があります。しかし、「講義がない」と「自由な時間」というのは別の話です。
そこで本記事では、令和の大学生の生活を見ていきましょう。
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【大学生のお財布事情】大学生の収入のうち約半分が親からの援助
大学生の中には成人式を終えた人も半分ほど含まれますが、それでも「学生」であるため「社会人」のような安定的な収入は基本的に得られません。
ここでは、独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査報告」から大学生の「収入及びその構成割合」をみていきましょう。
【図表1】によると、大学生の収入の割合において「家庭からの給付」がもっとも多くを占めています。
国立、公立、私立のいずれにおいても、収入の半分以上が親など身内からの援助となっています。
一方、大学生の収入のうち「アルバイト」が占めるのは2割前後。生活における重要な収入であるものの、収入のメインとはいえません。
この調査からは、多くの学生が親御さんから大学生活にかかる費用のうち半分程度を援助してもらい、不足分はアルバイトや奨学金などで調達していることがうかがえます。
また、家庭からの給付額は私立、国立、公立の順で高くなっており、私立については年間の給付額は120万円を超えています。国立、公立についても100万円近い金額となっています。
大学生はどれくらいアルバイトをしているのか?
以下、同調査における「アルバイト従事時期別学生数の割合」から大学生のアルバイト事情をみていきましょう。
【図表2】では、国立大学の学生は授業期間中について「週3日以上」働く学生よりも、「週1、2日」働く学生の方が多くなっています。とはいえ、長期期間中は半数以上が「週3日以上」働いています。
公立大学の学生については「週3日以上」働く学生が授業期間中、長期休暇中のいずれも多くなっています。学費が国立大学とほとんど変わらない公立大学ですが、アルバイトに力を入れる学生が多いようです。
また、私立大学の学生は「週3日以上」働く学生が授業期間中も長期休暇中も多いものの、授業期間中については半数未満となっています。
学費が高額なことで知られる私立大学ですが、授業期間中もがっつりアルバイトをしている学生はそう多くはありません。
大学生の多くがアルバイトをほどほどにしているという印象を【図表2】から受けますが、大学生のアルバイトの年間収入は平均30〜40万円程度です。
現代の大学生が忙しい理由とは?
大学生は時間にゆとりがあるというイメージが世間においてあります。特に、文系の学部に在籍する学生はこうしたイメージを抱かれる傾向にあるでしょう。
フリーダムなイメージが強い大学ですが、文系の学部も含めて自由度は年々下がり、負担は増大しています。現在は、単位を取得するにあたっての前提条件として、出席数を基本的にクリアしなければなりません。
もちろん、出欠確認も行われます。このため、講義をさぼって遊んだり、アルバイトをしたりしていれば留年の危機に陥ることもあるでしょう。
また、かつては教員の都合で休校になった講義は振替がないことも珍しくありませんでした。しかし、現在は講義回数の厳格化によって教員側の都合で休講になった講義は別の日に開講されます。
また、教員側も講義を最優先にしている傾向にあり、学会参加を理由に講義を休講にする教員(自身が発表する場合などを除く)はほとんどいません。
さらに、学生の社会性やコミュニケーション力の向上をねらい、グループワークを取り入れた講義が増えています。教員による一方通行型ではなく、学生が主体となるため、講義における積極的な参加が不可欠です。
近年では教員と学生との距離の近さをウリにしている大学も多く、大学でも手厚い教育を受けられる傾向にあります。その分、学生の自由度は下がり、勝手な行動が指導の対象となったり、レポートなどの課題が増えたりしています。
就職活動も大学生を忙しくしている要因です。現代において大学1年生から参加できる企業見学会や社員面談、インターンシップなどは多々あります。こうしたイベントに参加すれば、アルバイトに割ける時間が減ります。
まとめにかえて
大学での勉強や就職活動の負担が増していることからも、月に10万円以上のアルバイト収入を得たり、長期休暇はアルバイトばかりするといった生活は難しい傾向にあります。
筆者は都内の大学に10年ほど出入りしていますが、大きな変化を感じるのは学生のファッションなど外見に関する変化です。
筆者が大学生の頃は学生のファッションは華やかで、ハイブランドのバッグを持っている学生の姿も目立ちました。しかし、ここ10年以内の間に学生のファッションは急速にカジュアル化したと感じます。
かれらが堅実であることやファッション以外のことへ関心を寄せていることが外見からも伝わってきます。
こうした背景には、実家の経済事情の悪化、物価高、勉強や就職活動の負担の増大などもあると考えられます。
かつてのように、大学の講義よりもアルバイトを優先したり、勉強よりも遊びにウェイトを置いたりすることが難しくなってきています。
大学の学費を子どもに任せてみたものの、支払日までに貯められなかったとならないよう、よく考えておく必要があります。
参考資料
- 独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査報告」