【10年ひと昔の新車】11代目にフルモデルチェンジしたカローラは原点に立ち返って開発された

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、カローラフィールダーだ。

カローラフィールダー(2012年:フルモデルチェンジ)

フロントグリルをV字型にすることで精悍さを演出。1.8S エアロツアラーにはフォグランプが標準装備される。

11代目にフルモデルチェンジされたカローラの開発コンセプトは「大人4人が安心、安全、快適に長距離を移動できるミニマムサイズのクルマ」だ。カローラの原点に立ち返って開発を進められた。今回は、ワゴンのフィールダーに試乗してみた。

今(編集部註:2012年)では少数となったコンパクトワゴン市場で、1台だけ気を吐いているのがカローラフィールダーだ。最新モデルも、ひと目でフィールダーとわかる躍動感あふれるデザインで登場した。セダンのアクシオより若々しいルックスだ。

主役の座に据えたのは、粋なエアロパーツをまとったエアロツアラーだ。専用のLED式リアコンビランプを採用し、最上級の1.8Sエアロツアラーは、ヘッドランプもスモーク仕様となっている。最大のニュースは、時代を読んでダウンサイジングを断行したことだ。先代より全長は60mm短くなり、全高も15mm低くなった。また、車重は60kg以上軽くしている。

エンジンは大幅に改良を施した1.5Lの1NZ-FE型という直4 DOHCと、連続可変バルブタイミング&リフト機構のバルブマチックを組み込んだ1.8Lの2ZR-FAE型という直4 DOHCを設定。両エンジンとも無段変速機のCVTを組み合わせ燃費を向上させている。1.8Lモデルは7速スポーツシーケンシャルシフトマチックで、スポーツモードも装備した。1.5Lを積むFF車のCVT仕様にはアイドリングストップをオプション設定している。

1.8Lエンジンにはポンピングロスやフリクションを低減させ、燃費や出力を向上させる改良が施された。

違和感はすぐに消えてクルマが身体に馴染む

カローラフィールダーの大きな特徴がバックドアのパネルを樹脂製にした点。鋼板製よりも2.5kgの軽量化を実現した。

今回の試乗車は、1.8Lのトップグレード、1.8S エアロツアラー。走り出して最初に感じたのは。一般的な日常のドライブシーンで真価を発揮する絶妙な味付けだったことだ。乗って数分の間は違和感というか、不満を感じるところもあるが、すぐに身体と感覚が馴染み、手足のように自在に操れてしまう。

1.8Lの2ZR-FAE型エンジンはレギュラーガソリン仕様だ。最高出力は140ps。最大トルクは17.5kgmと数値的には平凡なスペックだが、スタートした瞬間から軽やかな走りを披露した。取材時は3名乗車で荷物も満載していたが、余裕がある。ノーマルモードでも低回転域から厚みのあるトルクを発生し、力強い加速を見せつけた。

無段変速機のCVTは制御が緻密だ。応答レスポンスは鋭いし、実用域のトルクも厚みを感じさせる。速い流れをリードするのはたやすいし、加速も冴えていた。スポーツモードを選べばクロスレシオのATのようにメリハリの利いた走りを楽しめる。その気になれば6000rpmオーバーまで使い切ることができ、ステップ感のある切れのいい加速を存分に楽しめた。これでステアリングにパドルシフトが装備されれば、言うことなしだ。

さすがに急激な加速を試みるとエンジン音は高まるが、クルージング時は静かだった。ちなみに100km/h巡航は2000rpmを下回っている。ドアミラーの付け根部分やリアコンビランプには小さなフィンを付け、空力性能をアップしているが、これは風切り音の低減にも貢献しているようだ。

ボディとサスペンションはしっかりしている。剛性感は文句なしで、安心してスポーティな走りを楽しめた。軽い操舵フィールだが、思いのほかクイックで、軽やかに曲がってくれる。セダンのアクシオと比べると味付けはスポーティだ。ちょっと引き締まった乗り味だが、クルマの挙動は素直だった。先代よりコントロール性は高く、街中での取り回し性も向上している。

タイヤはコンフォート系のものを履いているが、スタビリティ能力は高く、コーナリング姿勢も安定していた。欲を言えば、もう1サイズ大径のタイヤが欲しい。ちなみに燃費は1.3Lモデルと大差ないものだった。

インパネの左右両端をそれぞれ30mm広げることで、視覚的に窮屈感を感じさせないように設計されている。

●全長×全幅×全高:4360×1695×1465mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1160kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1797cc
●最高出力:103kW(140ps)/6200rpm
●最大トルク:172Nm(17.5㎏m)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・42L
●JC08モード燃費:16.6km/L
●タイヤサイズ:185/60R15
●当時の車両価格(税込):212万円

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