松村北斗×上白石萌音『夜明けのすべて』が“今スクリーンで見届けるべき作品”な理由

映画『夜明けのすべて』場面写真 (C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会

『そして、バトンは渡された』で2019年本屋大賞を受賞した小説家・瀬尾まいこの原作小説を、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱が映画化した、松村北斗上白石萌音がW主演を務める映画『夜明けのすべて』が現在公開中だ。公開初週の3連休で、動員13万人・興行収入1億8620万円を突破した大ヒット中の本作は、PMS(月経前症候群)に悩む藤沢さん(上白石萌音)とパニック障害を抱える山添くん(松村北斗)による、お互いを救い合う特別な関係性を描いた物語。「今年もしくは生涯ベスト級」「今を生きる多くの人の胸に響く作品だと思う」などSNSで高い評価を受けている上、第74回ベルリン国際映画祭【フォーラム部門】正式招待作品とされ、さらに台湾・韓国・香港での上映も決定し、世界中から注目を集めている。今回はそんな『夜明けのすべて』を“今スクリーンで見届けるべき理由”を紹介する。

■原作の空気感がそのままスクリーンに

原作から新たに加えられた設定やストーリーがあるものの、「原作の重要なテーマやメッセージは映画でも寸分の狂いなく同じ。原作が最も大切にしている部分を映像として表現して伝えるために改変した感じ」「映像も音楽も優しさがあった。原作読んだ時の世界観もあったし違う設定になっているところも説得力があった」など、映画化にあたっての脚色を絶賛する声が原作ファンを中心に集まっている本作。

三宅監督は小説の映画化にあたり、本作を「PMSやパニック障害を描けばよしという話ではなく、自分ではコントロールのできない理不尽な原因によって思うように働けなくなってしまったことこそが苦しい、そういう人たちの物語」と捉えており、物語の根幹には「医学的にも解決が困難なレベルの不条理に直面しながらも、人が共に過ごすときの歓びや愉しみを表現すること」があるとコメントしている。

監督が小説の根底にあるテーマを丹念に咀嚼し、掬い上げ、文学を映像化する過程で、山添くんや藤沢さん、そして私たちが生きるこの社会そのものに向き合い丁寧に描いたことで、原作ファンのみならず、多くの人の心を掴んでいるのだろう。

実際に、鑑賞後の熱気冷めやらぬまま「この物語にさらに深く触れよう」と原作小説を手に取る観客も続出し、原作小説の売り上げも一気に伸びたという。原作を読んでいても読んでいなくても堪能できる、本作の優しく喜びに満ち溢れた世界観を、是非スクリーンで見届けてほしい。

■恋人でもない“特別な関係性”に称賛の声

本作を特徴づけるのは、山添くんと藤沢さんが築いていく友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような“特別な関係性”。そんなふたりの姿を、「友人でも恋人でもない2人の絶妙な距離感が好き」「恋人ではなく、人の苦しみや辛さを理解しお互いを支え合う関係がとても良かった」と絶賛する声も多く見受けられる。

最初は互いを“苦手な存在”として認識していたが、それぞれが抱える“生きづらさ”を知り、「相手を助けられる場面があるのではないか」と徐々に手を差し伸べ合う山添くんと藤沢さんの心の機微が繊細に描かれる本作。少しずつ前向きに変化する彼らの日々を目の当たりにしたことで、「『誰かを手助けする』という行動が、実は気が付かないうちに自分を救う一歩にもなっている」と気づきを得る観客も。

三宅監督は作品全体のテーマとして、「生きづらさを感じている人たちが、自分一人ではどうにもならなくても、誰かと共に過ごすことによって自分の人生を生きることができる、その可能性を捉えたい」とコメント。“多様性”が声高に謳われる現代社会だが、個人が抱える“生きづらさ”はそう簡単には消えてくれない。そんな現代において本作は、誰にも理解されない“各々の生きづらさ”を抱える私たちに寄り添い、それでも人と人は救い合えるという、この社会への希望を込めたメッセージを発している。

「この映画に出会えてよかった」「お守りみたいに大事にしたい作品」など現代人の心にぴったりとマッチする本作に救われる人が続出しているようだ。

私たちが生きる現実と地続きで描かれ、まるで実在するかのような山添くんと藤沢さんの優しくかけがえのない日常に触れ、我々が生きるこの世界を愛おしく感じる瞬間を一人でも多くの人に味わっていただきたい。

映画『夜明けのすべて』は現在公開中。

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