飲食店と「子連れ」の関係、継続的に利用するかどうかが決まる!?

【外食業界のリアル・6】 外食業界は、ライフスタイルの多様化に応じて変化を続けている。コロナ禍で一気に普及したテイクアウトやデリバリー、ケータリング、ECなどは、今もなお利用が拡大している。アルコールを伴わない食事をメインとした業態も増える一方、ファミレスや回転寿司と同様に居酒屋でも子連れを意識した店舗が目立つことが多い。今回は、飲食店と「子連れ」について語りたいと思う。

「子連れ」利用に対する飲食店側の対応

郊外の交通量が多い幹線道路沿いに立地する駐車場付きの飲食店は「ロードサイド」と呼ばれ、車での利用が想定されることもあって昔からファミリー利用が根強い。回転寿司や焼肉、ファミレス、ファーストフードなどといった業態が多く、子どもにも人気だ。

店内は広くテーブルもゆったりとしており、ベビーチェアや子ども用の食器、お絵描きなどの道具もそろっている。中には子どもが遊べる専用スペースがあり、ガチャガチャなどのアイテムも用意されていて、「あそこなら子どもを連れて行っても大丈夫」と思ってもらえるような店づくりを意識し、それらを積極的に訴求している店舗もある。

一方、繁華街や駅チカ、路面店では子連れに対して配慮されていないケースが多い。接待や会食、仲間内の飲み会など、大人のみで利用されることが前提となっている。食べ物や飲み物も大人が利用することを意識したラインアップ・価格帯・サービス内容になっている。

だがここ数年、この境目は曖昧になってきている。子ども用のいすや食器をきちんと用意している居酒屋も増え、靴を脱いで足を伸ばせるマットレス席を用意したり、離乳食を注文できたりと子連れ利用に喜ばれるサービスを充実させて差別化を図る店舗もある。

また、子育て世帯はネット上で「子連れ利用」を条件で店を探すことも多く、安心して利用できる店舗であれば、多少単価が高くても選ぶこともある。が、程よくおいしくて安くて子連れで利用できるところを探すと必然的にファミレスや回転寿司、焼肉屋にたどり着くことが多いのも事実だ。

「子連れ」利用に対するユーザーの反応

メディアやSNSでは、飲食店での子連れ利用に関する議論が交わされることがしばしばある。子どもが走り回ったり、触ってはいけない料理に手を触れてしまったり、中には泣き声がうるさいといった形でクレームにつながったりということもある。

両者の言い分はそれぞれ一理あり、一概にどちらがいけないのかとはいいにくい。「食事をゆっくりと楽しみたい」「自分の時間を静かに過ごしたい」という主張も分かるし、子どもが泣いてしまっただけで怒られてしまうなど、子育て家庭の大変さや肩身の狭さも分かるる。そもそも騒がしいのは、子どもに限らず大人や高齢者も同様であったりする。

個人的には、店がどこまでルールを定めるのかというところが重要であると思う。高単価のレストランでは小学生以下をNGにするなどの具体的なルールを提示していることもあるが、そのルールに対して反対なのであれば利用しなければよく、反対もまた然りだ。

LTVを考えてどうするべきか

筆者も、小さい娘を連れて某居酒屋チェーン店に入ろうとしたら断られたことがある。そんなルールはどこにも書かれてはいない。途方に暮れて商店街を歩いていたら、某焼肉チェーンが店前で「どうぞ」と声をかけてきたので、うれしくなって入った。そのチェーン店に対しては今でも良い印象を持っていて、その後も定期的に利用している。

最近は、飲食店でもLTV(顧客生涯価値)の考え方を導入することが増えてきている。新規の顧客だけを回して店を運営していくのは、非常にコストがかかる。一度、店に来てくれた人をどのようにリピートさせるのか、あわよくば今後も継続的に利用してもらえるようにしていくことが問われていく。

店舗の商圏には子連れというライフステージが少なからず存在しており、どのように対応していくのかによって今後の客層は変わってくるはずだ。どうするかは、あくまで店舗の判断にはなる。店舗での体験というのは当事者である顧客が必ず覚えており、今後もそのお店を継続的に利用するかどうかもそこで決まる。そして、その声はSNSや口コミですぐに拡散される時代であることを忘れてはならない。(イデア・レコード・左川裕規)

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