社説:京都府予算案 現場との連携さらに深めて

 新型コロナウイルス対策の費用がなくなり、「平時」の予算に戻すという。それでも予算は膨らむ。改めて中長期を見据え、人口減社会の課題に向き合わねばならない。

 京都府の2024年度一般会計予算案は9950億円で、4年ぶりに1兆円を下回った。新型コロナ関連の費用を除いた前年度当初比で1.2%増という。

 医療や福祉など社会保障費の伸びが要因で、少子高齢化を背景にこの傾向は続く。税収の大幅増は見込めず、政策の優先順位を明確にした財政運営が欠かせない。

 子育て支援は、昨年全面改定した戦略の重点プロジェクトに基づき拡充した。私立高の授業料支援では、中間所得層への補助額を引き上げるとしている。

 新たに、市町村が子育てを重視して策定するまちづくり計画を府が認定する制度も設ける。拠点整備や交流活動など費用面も支援するというが、既存事業のすげ替えに終わらぬよう、実効性が問われる。

 能登半島地震で課題が浮き彫りとなった木造住宅の耐震強化に向け、新年度から2年間限定で府の補助額を倍増する。国や市町村分と合わせて最大125万円が受けられるとしている。

 府は25年の住宅耐震化率を95%とする目標だが、市町村別の数値は30~90%台で開きがある。古い住宅が多い過疎地を中心に、支援が行き届く工夫が必要だろう。

 24年夏には、府庁舎内で整備中の危機管理センターが本格稼働する。コロナ対策では市町村や医療機関などとの連携で多くの課題に直面した。多角的に検証し、自然災害や新たな感染症の拡大に備えるべきだ。

 府立大(京都市左京区)と京都向日町競輪場(向日市)が候補地のアリーナ構想は、検討中として具体的な事業費を計上していない。府立大のある北山エリア整備計画は、芸術拠点への建て替えが遅れている旧総合資料館跡地を含め、全体の方向性が見えにくくなっている。改めて府民への丁寧な説明を求めたい。

 歳入は、昨年から寄付金獲得に本格参入したふるさと納税による増収を見込むが、不足分を借金である「行政改革推進債」で穴埋めする。返済に国の支援はなく、苦しい財政運営に変わりはない。近くまとめる新たな行財政改革計画で、持続可能性を高める練り直しが不可欠だ。

 府は文化庁の京都移転をきっかけとした文化政策の充実、大学が集積する京都の魅力向上、「川」を生かした府内の周遊観光なども進めるとしている。

 こうした分野でこそ、京都市との「府市協調」へ、さらに踏み込むべきではないか。西脇隆俊知事と松井孝治新市長には、全国のモデルとなるような大胆な政策を京都から打ち出してほしい。

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