「恐竜以上に重要な発見ですよ」ー。日本最古のウミガメは従来より1000万年さかのぼる1億年前の地層で発見。見つけた場所にちなんだ名前は「サツマムカシウミガメ」

クリーニング途中のサツマムカシウミガメの甲羅の化石=2023年9月、長島町役場

■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 鹿児島県長島町獅子島の約1億年前の白亜紀層で2020年11月に発見した「謎の化石」。骨の形状から「ウミガメだ」と直感的にひらめきました。手に取った中島保寿・東京都市大学准教授は「恐竜以上に重要な発見ですよ」と顔色を変えました。それまでの日本最古のウミガメ化石は約9千万年前。約1千万年もさかのぼるからです。

 解析を続けたところ、日本最古と判明。首の骨と甲羅の一部を確認しました。甲羅の長さは約70センチとみています。「サツマムカシウミガメ」と名付け、今年1月末の日本古生物学会で発表しました。

 長年の友人である海洋堂の造形師・古田悟郎さんに、復元フィギュアを造ってもらいました。絶滅した同時代のカメの化石を参考に、現代より脚が長くなっています。

 元々、ウミガメの仲間(ウミガメ上科)は、中生代白亜紀後期の海洋で大繁栄しました。世界最古の化石は南米コロンビアの白亜紀前期(約1億3500万年前)の海底に堆積した海成層から発見された「デスマトケリス」です。

 ウミガメは白亜紀後期に多様化し、南米から世界中に生息域を広げました。進化の究極例が、かつて北アメリカ大陸にあった内海にすんでいた巨大な「アーケロン」です。全長4メートル、体重2トンに達する怪物でした。

 クビナガリュウやモササウルスなど多くの海生爬虫類が白亜紀末に絶滅した中、ウミガメの仲間は生き延びました。サメと同じように発生段階からあまり形状を変えず、最初から「完成形」だったのが、理由ではないかと考えています。今も生き続けているからこそ、絶滅を免れた進化の謎の解明につながる発見なのです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

サツマムカシウミガメのフィギュアを製作した海洋堂造形師の古田悟郎さん(右)と。絶滅した同時代のカメを参考に推定復元した

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