「ボーナスの金額は転職時の会社選びに重要」9割超 人事担当者は「古すぎる」と警鐘

転職時に会社を選ぶ際、ボーナスの金額が重要な指標の一つとなるか――。この問いに「とてもそう思う」と答えた人は62.0%にのぼった。「少しそう思う」と答えた人は29.5%おり、合計すると9割を超えている。

これは労働組合の日本労働産業ユニオンが2024年2月12日に発表した調査結果。一方、ボーナスの金額は重要な指標と「あまり思わない」と答えた人は7.75%。「全く思わない」も0.75%いたという。

「もともとオマケ。安定的に支給されている方が不自然」

ボーナスは金銭的報酬のひとつであり、転職時に「重要な指標のひとつ」になるのは自然なことだ。しかし、都内のIT企業の人事部門に勤めるAさんは「ボーナスの金額にだけ気を取られていると危ういことになる」と警鐘を鳴らす。

「ボーナスなんて、業績によっていくらでも変動するじゃないですか。そんなあやういものをあてにするなんて、私はちょっと考えられないですね」

毎月の給与は「労働の対価」であり、簡単には下げられない。しかし賞与は「会社業績の分配」の色合いもあり、その年の業績や会社の都合で容易に変動する可能性がある。

「あるベンチャー企業では、入社前に『賞与の実績は年最低100万円』と説明していたのに、実際に入ったらその半分も支払われなかった、というケースがありました。大企業出身者が『ボーナスは出て当たり前』なんて考えていると痛い目に遭いますよ」

それでは大企業に入れば、ボーナスは信用できるのだろうか。Aさんは「それでもボーナスの金額だけに目を奪われてはいけないことに変わりはない」という。

「もともとオマケだったボーナスが安定的に支給されているとすれば、それは不自然なことだと怪しむべきでしょうね。なぜ業績に関係なく支給されているのか。それは単に、月の給与として支払われるべき原資をボーナスとして積み替えているだけなのです。当たり前のことですが、年間トータルで支給される金額を見る必要があるでしょう」

「ボーナスさえ出ればいい会社、はありえない」

年間トータルの支給金額を見るべき、という当たり前すぎることをAさんが強調するのは、「賞与の金額さえ大きければ基本給は低くても構わない」といったような本末転倒にも思える「ボーナス至上主義」的な考えを持つ人がいるからだ。

「何かまとまった金額が出る、というだけで会社に大切にされているかのように勘違いしてしまうんですかね。単に『ボーナスが何十万も出る』というだけで、安定したいい会社に入れている自己満足を刺激されているというか、念願がかなっている人もいるようなんですよね」

ちなみにAさんの会社では、半期に一度の評価によって、次の半期の報酬が決まる「半期年俸制」なので、定期賞与という形でボーナスは支給されないという。

「当社にはボーナスも退職金もありませんが、その代わり給与水準は高めです。給与として支払うべきお金を分割することで、見せ方を変えることに意味を感じないんですよね。もちろんボーナスを『重要な指標』にする人がいてもいいんですけど、『ボーナスさえ支給されればいい会社』という考え方は明らかに古すぎます」

© 株式会社ジェイ・キャスト