2023年1〜9月における住宅火災の数は8157件
東京消防庁が発表した2023年1〜9月における住宅火災の数は8157件と、前年に比べて219件の減少となっています。
しかし、マンションなどの共同住宅では2602件となっており、前年比は5件の増加となりました。
タワーマンションなどの共同住宅で火事になった場合、延焼や消火活動による水の被害など、隣の部屋への影響が大きくなります。
そこで今回この記事では、タワーマンションの上の階が火事になった場合の「消火活動による家財への賠償の有無」について解説します。
火災保険の種類も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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【結論】消火活動による家財への損害賠償は受けられない
火災保険においての家財保険とは、自然災害や水漏れ事故の際に「家財」が破損、汚損した場合に補償される保険です。
一般的に賃貸物件のケースで多い「上の階からの水漏れによる家財への補償」も対象になっています。
しかし、上の階が火事になった際の消火活動による家財への損害賠償請求は「失火責任法」により規定があるため、受けられません。
失火責任法とは
失火責任法とは、火事になっても軽度な不注意が原因の場合には損害賠償責任を負わないものです。
失火責任法の条文:民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
(民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。)
重大な過失とは、わずかな注意をすれば免れたのにもかかわらず、故意に近いような重大な注意力を欠くものとされています。
過去に「重大な過失」が認められた判例は、以下の通りです。
- 寝タバコの危険性を認識しながら、灰皿で火を消すなどの対策を講じないまま喫煙を続けて火事を起こしたケース
- 石油ストーブに給油する際に火を消さずに給油したため、ストーブに着火して火事が発生したケース
- 藁(ワラ)が散乱している倉庫内に、タバコの吸い殻を捨てて火事になったケース
つまり民法第709条の損害賠償責任は、軽度な不注意で起きた火事の場合には適用されず、上記の判例のような「重大な過失」があった場合のみ認められます。
火災(家財)保険に自ら加入するのがおすすめ
自身で火災保険(家財保険)に加入している場合、被害を受けた家財が保険の対象になる可能性が高くなります。
物件の管理会社によっては、家財保険への加入が入居条件になっているため、あらかじめ確認するのがおすすめです。
賃貸マンションの場合は「家財」への保険、分譲マンションの場合は「家財」と専有部分の「建物」に保険がかけられるため、一度保険会社や管理会社に確認してみましょう。
火災保険の種類と補償内容
ここでは、3種類の火災保険と補償内容を紹介します。
一般的に賃貸物件の火災保険では、ここで紹介する3種類がセットになっているため、それぞれ確認しておきましょう。
家財保険
冷蔵庫やテレビなど、家財道具一式に対する保険です。
火事だけでなく、水災や水漏れによる家財への損害の補償に対応しています。
他にも以下のような状況で利用可能です。
- 落雷による家電の故障
- 家具家電、現金の盗難による被害
- 子どもによるテレビなどの液晶画面の破損
上記のように、様々な状況で利用できるため万が一の時も安心です。
借家人賠償責任保険
大家さんに対する賠償責任を補償する保険です。
家財保険の特約としての加入ができますが、単体での加入はできません。
賃貸物件の部屋を修繕・修復するための費用の補償が主な内容です。
ただし、対象となる補償内容が自分自身の部屋のみになるため、他の部屋に対する被害はカバーできません。
個人賠償責任保険
普段の生活で他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりした場合の「損害賠償」に備えられる保険です。
例えば、自転車事故で人にケガをさせる事故があります。
過去の判例で高額な賠償判決が出た例があるように、被害状況次第では、車と同様の危険度があるでしょう。
この保険も、火災保険の特約で加入できます。
加入している火災保険に、個人賠償責任保険の特約があるか確認しておきましょう。
まとめにかえて
マンションでは、上の階の火事で自分の家財が被害を受けても「失火責任法」により賠償されません。
そのため、火災保険に加入しておくことで万が一のときでも安心です。
火事には十分に注意していても、他の部屋から被害がある恐れが十分に考えられます。
火事で後悔しないために、必ず火災保険には加入しておきましょう。
賃貸物件によっては、大家さんが入居者の火災保険料を負担しているケースがあります。
入居前に、契約内容を確認しておくのがおすすめです。
参考資料
- 東京消防庁「令和5年(1~9月)における火災の概要について」