「世界トップレベル」平野早矢香が”黄金世代3人”の連勝に感嘆する一方で、パリ切符獲得の楽勝ムードに警報「世界卓球の怖さを改めて知る試合」

楽勝ムードを引き締める警報を鳴らした。

現地2月16日からパリ五輪の団体戦出場切符が懸かる卓球の世界選手権団体戦が韓国・釜山で開幕した。パリ切符を狙う世界ランク2位の日本女子は初戦で同19位のルクセンブルクと戦い、3-0のストレートで撃破。続く第2戦はイラン(同35位)と激突し、伊藤美誠、平野美宇、早田ひなの「黄金世代」を揃えたオーダーを組み、2日連続のストレート勝ち。日本は暫定首位で好スタートを切った。

今大会は男女各40チームが参加。8つのグループに分かれたリーグ戦のあと、各グループの上位3チームによる決勝トーナメントが行なわれ、ベスト8に進出すればパリ五輪の団体出場権が獲得でき、シングルスの男女各2枠も確定する。

2戦連続のストレート勝利を収め、好発進した女子の日本代表だが、ここまでの戦いぶりは決して圧倒的とは言い難い。初戦のルクセンブルク戦では15歳の張本美和が東京大会を含め、五輪5大会に出場する世界的レジェンドのニー・シャー リエンに苦戦。還暦を向けた中国出身の大ベテランの変則的な打球に張本は手こずるも、第1ゲームをデュースの末に奪取。その後はサーブで主導権を握り、なんとか「45歳差」の対決をストレートで制した。
続くイラン戦では、2番手で登場した世界ランク18位の平野美宇が同709位のアシュタリに大苦戦。相手の精度の高いブロックやプッシュに翻弄され、いきなり6-11、9-11と平野は連取され、早くもストレート負けの崖っぷちに追い込まれる。第3ゲームは11-6で奪い取ったものの、第4ゲームはデュースに持ち込まれ、なおも先にマッチポイントを握られて絶体絶命のピンチに陥った。

だが、熾烈な争いだった国内のパリ五輪シングルス代表権を掴み取った23歳は、ここから底力を発揮。13-11で逆転し、このゲームをモノにすると、最終ゲームも再びマッチポイントになる接戦を13-11で勝ち切り、ゲームカウント0-2から土壇場で逆転勝利。流れをイランに渡さず、3人目の早田にバトンを渡した。全日本女王は盟友の熱戦に応えるかのように、貫録のストレート勝ち。チーム一丸で勝利を手にした。 激闘のイラン戦を終えた翌日、今大会のテレビ中継の解説を務める2012年ロンドン五輪団体銀メダリストの平野早矢香氏は自身のX(旧ツイッター)を更新。黄金世代トリオが世界の舞台で活躍する姿に感嘆すると同時に、あらためて世界大会を勝ち抜く難しさを次のように痛感している。

「女子は黄金世代3人が並んだ昨日の一戦、小さい頃から注目されてきた3人が1人も脱落せずここまで強くなり世界トップレベルまで成長する。なかなかできることではないと思います」

「しかし昨日の美宇ちゃんはよく粘ったわー(汗の絵文字)世界卓球の怖さを改めて知る試合でした」
平野氏が指摘するように、今大会は日本戦以外にも衝撃的な大波乱が起きている。

団体の世界ランク1位の中国が格下の同17位インドを相手に3-2と薄氷を踏む勝利を挙げた。しかも、個人の世界ランク1位の絶対女王・孫穎莎が同155位のアシカ・ムカルジーに1-3で屈し、同2位の王芸迪も同49位のスリージャ・アクラにストレート負けするなど、大苦戦を強いられた。

なんとか白星発進となった中国だが、予想外の試合展開に母国メディアは唖然。「完全崩壊まで、あと一歩の状態に追い込まれた」と驚きを隠せない波乱のスタートとなった。

女子の日本代表は18日の午後8時から南アフリカと第3戦に臨み、19日のグループ最終戦はブラジルと対峙する。難敵が揃うグループを勝ち抜き、決勝トーナメント1回戦を突破できれば、日本はパリ五輪切符を獲得する。

構成●THE DIGEST編集部

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