スペイン画家「能登を発信」 富来を拠点に創作に励む 地震を受け急きょ来訪

抽象画の制作に取り組むアバールさん=志賀町鹿頭

  ●「絵を通して復興の力に」

 能登半島地震の発生後、能登の豊かな自然と人情味あふれる風土を世界に発信しようと、志賀町富来地域を拠点にスペイン人画家が創作活動に励んでいる。国際的に活躍するタラク・アバールさん(47)で、ドイツで能登の惨状を知り、1月中旬に急きょ富来入りした。「世界の人に能登の暮らしに思いをはせてもらえるよう、大好きな富来の絵を描き、復興の力になりたい」とペンを走らせている。

 アバールさんは各国を行き来しながら抽象画をメインに制作し、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のポスターを共同制作するなど活躍している。10年かけて国内を旅したところ、能登の風土や住民の人柄に強く引かれ、2016年から富来地域に日本の拠点を置いている。

 1月1日は滞在先のドイツのアトリエでテレビを見ながらくつろいでいたところ、能登半島地震のニュースが映し出された。風光明(めい)媚(び)な能登の風景は変わり果てており、「富来の知人が心配で戻らない選択肢はなかった」と振り返る。

 富来に戻ると、家屋の倒壊や地面の隆起が目立ち、想像以上の被害の大きさにショックを受けた。鹿頭(ししず)の住まいも障子やふすまが破損する被害に見舞われた。

 鹿頭では現在も断水が続く。それでも近所の人たちが水や食料、灯油を分けてくれ、被災しても変わらない住民の優しさと日本海に沈む夕日の美しさなど富来の景観に着想を得ながら抽象画を描いている。

 アバールさんは4月から欧州を中心に世界各国で絵を展示する計画で、「絵を通じて多くの人に富来の素晴らしさを伝え、復興を後押ししたい」と話した。

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