日本の公的年金制度。細かな決まりごとが多く、知っていると知らないでは、大きな差となることも珍しくはありません。今回は「年金支給」について、知っておいたほうがいい注意事項をみていきます。
65歳になりました。年金はいつからもらえますか?
日本の高齢者の生活を支える公的年金。自営業者や学生、主婦(夫)などが対象となる国民年金(老齢基礎年金)と、会社員や公務員が対象となる厚生年金(老齢厚生年金)がありますが、どちらも原則65歳から受け取ることができます。
そこでよくある、こんな質問。
――65歳になったけど、いつから年金はもらえますか?
意外と多い年金に関する勘違いとして、65歳になったら自動的に年金がもらえる、というものがあります。よく考えれば分かりますが、何もしなければ、待てど暮らせど年金はもらえません。
65歳に老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給権が発生する人には、65歳になる3ヵ月前に日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」が送られてきます。年金請求書に必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、添付書類とともに提出。そこから1~2ヵ月後に「年金証書・年金決定通知書」が届き、さらに1~2カ月後に年金のお支払いのご案内が届き、そこで初めて年金の受け取りが始まります。年金は原則、偶数月の15日に前月と前々月の2ヵ月分が振り込まれます。
ちなみに海外に住んでいる場合は、「年金請求書」は送られてきません。日本年金機構のウェブサイトからダウンロードのうえ、対応する必要があります。
結局、年金はいくらもらえるのですか?
年金受給の最大の関心は「いくら年金がもらえるか」でしょうか。
年金の見込額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で知ることができます。60歳未満であれば、現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定した際の65歳から受け取れる年金見込額が記されています。60歳~65歳未満では、「ねんきん定期便」の作成時点の年金加入実績に応じて、65歳から受け取れる年金見込額が表示されます。
厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給者の平均月額は14万4,982円。65歳以上に限ると、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円です。
年金額は消費者物価指数などをもとに毎年見直され、令和6年度は老齢基礎年金が満額で6万8,000円、モデル夫婦(平均的な収入で40年間働いてきたサラリーマンと、40年間専業主婦の妻の夫婦)の年金額が23万0483円となっています。
年金支給日の浮かれ気分が吹っ飛ぶ「まさかの事態」
よくいる高齢夫婦であれば、年金受給額は月23万円。偶数月の15日、平均的なモデル夫婦であれば、一度に46万円ほどが振り込まれることになります。
偶数月の15日を待ち焦がれていた高齢者にとって、年金支給日は特別です。
――今日はちょっと外食でもしようか
そんな光景をあちらこちらで見かけることができます。一方、大騒ぎしている高齢者も。
――あなた、大変よ! 年金が振り込まれてないわ!(66歳女性)
振り込まれているはずの2ヵ月分の年金。しかしどんなに確認しても振り込まれた形跡すらありません。一方で、ほかの年金受給者は、待ちに待った年金を手にしてホクホク顔。
――私たちだけ……どうして?
振り込まれているはずの年金が振り込まれていない場合、考えられる理由としてよくあるのが「現況届を提出していないから」。自身の誕生日以降、それまで振り込まれていた年金が振り込まれなくなるのは、だいたいこの理由です。
「現況届」は、年金を引き続き受け取るための権利があるかどうかを確認するための届け出。毎年誕生月に日本年金機構から送られ、期限内に返送しないといけません。もし「現況届」の提出を怠ると年金は支払保留状態となり、提出が確認されるまで払われることはありません。
そんな致命的ミスを防ぎたいなら、年金機構にマイナンバーを登録するのがおすすめ。「現況届」の個人番号記入欄にマイナンバーを記し、マイナンバーカードや通知カードの番号記載面のコピー等を提出すればOK。マイナンバー登録後は「現況届」の提出は原則不要になります。
ミスが発覚して手続きをしても、すぐに振込みは行われず、2ヵ月後くらいの振込みになります。このタイムラグは、年金頼みの高齢者にとって死活問題。このようなミスが起きぬよう注意を払いましょう。
[参考資料]