「日韓2強時代」終焉?サッカーアジアカップで中東勢躍進の理由、日本はW杯へ危機感

Ⓒゲッティイメージズ

「金の卵」発掘の国家プロジェクトで育成

8万人を超える熱狂的な観客と中東勢同士が対決した決勝。2月10日までカタールで行われたサッカーのアジアカップは開催国カタールが伏兵ヨルダンを3―1で下し、2大会連続2度目の優勝を果たして幕を閉じた。

優勝候補の筆頭と期待された日本はベスト8、韓国はベスト4止まりで、カタールは韓国、イラン、サウジアラビア、日本に続く史上5カ国目の連覇を達成。フィジカルの高さやスピード、技術レベルの向上を含めて中東勢の躍進を印象付けた大会でもあった。

約280万人と人口が少ないカタールは「金の卵」を発掘しようと、国家プロジェクトとして2004年に設立されたアスリート育成拠点「アスパイア・アカデミー」で英才教育を受けてきた選手たちがチームの骨格を成す。

決勝で史上初のハットトリックを達成したエースFWアクラム・アフィフ(アルサド)もその一人で、今大会8ゴールで得点王に輝き、大会最優秀選手に選ばれた。スペイン・リーグでプレーしてきた経験もある。

現地で決勝を生観戦した元日本代表MF本田圭佑は自身のSNSで「思ってた以上に中東が強くなってる。フィジカルレベルに関しては驚くほどに」とコメントした。

準決勝でヨルダンに0―2で完敗した韓国は、元ドイツ代表FWで母国の代表を指揮した実績もあるユルゲン・クリンスマン監督の解任を発表。準々決勝でイランに1-2で敗れ、3大会ぶり5度目の優勝に届かなかった日本は、3月に迫るワールドカップ(W杯)北中米大会アジア2次予選に向け、ロングボールとパワープレーで弱点を突かれるともろさを露呈しただけに、危機感を募らせる課題を突き付けられた形だ。

W杯出場枠8・5に増加も安穏とはできない状況

2026年W杯北中米大会は出場チーム数が32から48に拡大されることに伴い、アジア枠は4・5から8・5に増加。予選突破のハードルは比較的下がるものの、最終予選が終わる2025年6月まで長く厳しい戦いが待ち受けている。

アジアカップは4強入りした4か国のうち、韓国以外はカタール、ヨルダン、イランの中東勢。韓国メディアでは中東勢の勢いが増し「1980年代以降、2強の構図を形成してきた日韓時代の終焉?」などとも報じられた。

今大会を見ると、日本を破ったイランやイラクのほか、ベスト8入りした中央アジアのウズベキスタンやタジキスタンも奮闘。優勝経験のあるサウジアラビアはベスト16、オーストラリアも8強止まりと各国の層は厚くなっている。

フランス人のフィリップ・トルシエ監督が率いるベトナムは日本から2点を奪うなど東南アジアもレベルが着実に底上げされており、アジアを勝ち抜くのもそう簡単でなくなっているのは間違いない。

増える欧州出身の指導者、日本はアジア最上位も警戒必要

カタールは2022年W杯開催国として1次リーグ敗退に終わった失望から雪辱を期してはい上がってきた。

W杯決勝も行われたルサイル・スタジアムには8万6492人の大観衆が来場し、1試合の来場者数で大会史上最多を記録。国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長は公式サイトで「この試合と素晴らしいファンのおかげで、W杯の信じられないような思い出がよみがえった。カタールのすべての人々とこの大成功を収めた大会の開催に携わったすべての人に感謝する」とコメントした。

2月15日付の最新世界ランキングでアジアカップベスト8の日本は一つ下がって18位となったが、アジア最上位は変わらなかった。アジア杯で2連覇を達成したカタールが58位から37位に浮上。イランは20位でアジア2位、韓国は22位で、ともに一つずつ順位を上げた。

しかしランキングなど無関係で、アジアカップは各国のレベルアップでチーム間の「格差」が大幅に縮まってきている現状も浮き彫りにした。

欧州出身の指導者や欧州育ちの選手が増え、世界の潮流であるインテンシティー(強度)が高く、攻守の切り替えが早いサッカーを展開するチームが急速に増えている。日本はアジアカップの教訓を生かし、W杯予選で足をすくわれない戦いをする必要が出てくるだろう。



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