「藝大、藝大、東大」衝撃学歴のきょうだい、母親の懸命子育て…中高生時代は「全員好きなことに没頭」

1番上がTADAさん(@kiyoneko0214)。仲睦まじいきょうだいの写真です

「この写真エモい。上から藝大、藝大、東大」。東京藝術大学に通うTさんが、幼少期の家族写真をXに投稿し、貧しい中でもシングルマザーとして子育てをして大学に送り出してくれた母への感謝を綴って話題になりました。

兄たちの背中に乗ってこちらを見ている女の子がTさんです。長男が東京大学、次男が東京藝術大学出身。これ以外に1番年上の姉がおり、全員で4人きょうだいだそうです。

貧しい中でも好きなことをさせてくれた、とTさんは母親への感謝を口にします。「子どもの特性を見つけてそれを伸ばすことが自分の楽しみ」といつも言っていたそうで、きょうだいそれぞれが好きになった物事を深く掘り下げ、没頭できる環境を用意してくれたといいます。

Tさんの場合はそれが芸術でした。「母が好きなことをさせ続けてくれたから、自分で選択した道に責任と覚悟が持てたと思います。勉強も運動もあまり得意ではなく、描くことしか能がない私を美術コースのある高校へ進学させてくれたのも、美大受験を許してくれたのも、母の寛容さがあったからです」

厳しい家計の中、Tさんの母は懸命に子どもたちを育てました。家に車がなく移動手段が自転車のみだったため、10キロ離れた勤務先にも自転車で通っていたそうです。日用品が壊れても新しいものを買わず補修して使い続ける、食卓に惣菜が並ぶことはなく毎食手作り…など工夫をこらす姿を子どもたちも見ていました。Tさんは「育ち盛りの子ども4人分の食事をやりくりするのは大変だったと思います」「母は毎日仕事から帰ってきてはご飯の準備や洗い物や家事、今思うといつ休んでいたのかわかりません」と振り返ります。

「かけがえのない素敵な姉」

きょうだい4人は今でも仲がよく「たまに喧嘩もするけど、兄弟姉妹に何かあったら全員で心配し助け合う」仲だといいます。

10歳離れた姉について、Tさんは当初「下のきょうだい3人のために大学院への進学をやめた」といった発信をして一部から懐疑的な声も上がっていましたが、後日姉に確認したところ「最初から院に行くつもりはなかったらしく、私の勘違いだった」と言われたとのこと。Tさんは「私の視野の狭さや配慮足らずで、4人の写真でなく3人の写真が出回ってしまったのも姉にも申し訳なかった」と話し、4人全員が写った仲睦まじい写真も提供してくれました。

きょうだい4人での写真

姉は「物静かで温厚」「冷静かつ知識が豊富で正しい判断をすることができる人」だといいます。Tさんが小学3年生の時に進学のため上京し、都内のアニメや漫画のイベントによく連れて行ってくれました。今でも二人で出かけるほど仲が良く「私にとってかけがえのない素敵で大切な姉」です。

姉がTADAさんのために作ってくれたケーキ

この春で藝大を卒業するTさんですが、今後も制作活動を続ける予定です。制作時間を確保するために就職の道は選ばなかったそうです。「しばらくは収入面で厳しい生活が続くとは思いますが、根気強く素材や技術を研究し、作品を作り続けたいと思っています」と前を向いているTさん。家族も、選んだ道を応援してくれているそうです。

Tさんが大学の卒業・修了作品展のために制作した作品がこちらです。コンセプトについて聞きました。

TADAさん(@kiyoneko0214)の卒業制作

「現代は様々なことがアップデートされ続け、インターネットの普及により情報が多くなり、大人になるにつれ記憶と情報が増えていく。それと共に無くなっているのは私は”余白”なのではないかと考える。
現代を生きて、わびさびを嗜む感覚はどれほど残っているのか、想像力が入り込む余地というもの、思考に余白はどれほどあるのだろうか。余白が出来る瞬間は現代を生きる人にはあまりにも少ない気がする」

TADAさん(@kiyoneko0214)の卒業制作

「人は社会の1部ではなく、自然界の一部分であり、自然に対しては人は無力で、人は自然の創造物でしかない。
自然界が生み出す毎秒違う世界は、今も昔も人の目に映り、心に、思考に余白を与えてきたのではないか。自然が生み出す模様は、見た瞬間の1度しか生み出されません。私はこの1度しか生み出されない曖昧なものに、吸い込まれそうな、どこか懐かしいような、私の見据える心地よい世界と近しいものを感じます。
過去と時間を記憶する木材という素材で、制作したその日から未来へ向けて、人々の余白を生み出すきっかけになる作品を制作したいと思い、作品を作りました」

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