連載『lit!』第89回:『ボカコレ 2024冬』参戦なるか? 吉田夜世、大漠波新……注目株クリエイターをピックアップ

今月2月下旬に開催が迫る『The VOCALOID Collection -2024 Winter-』(通称『ボカコレ』)。もはやシーンにとってはお馴染みとなった半年に1回の大規模なボカロの祭典だが、いよいよ開催まであと数日。投稿ランキングに参加を予定する制作者の面々は、今がまさに絶賛追い込み期間というところだろうか。

当然大勢のリスナーにとっても、名だたるボカロPたちが渾身の1曲を持ってくる場として、熱い注目を集める機会となる本イベント。そこで今回はこれまでのボカコレでも度々健闘を見せ、昨年下半期~2024年で大きな躍進を遂げた、新たな時代を担う可能性を大いに秘めた注目株クリエイターによる最新曲をピックアップ。

楽曲は直近3カ月内に投稿されたものが大半だ。しかし今回紹介する面々の活動を見るに、比較的制作ペースが早い傾向も十分に見受けられる。もし今回の『ボカコレ』にも彼らが自信作を携え参戦した場合、大混戦となることは間違いないだろう。

全員未だ、『ボカコレ』各部門の優勝に輝いた経験はなし。悲願の頂点を掴み取るか、はたまた前代未聞の大番狂わせが生まれるか? 今まさに勢いづく彼らの台頭に期待を込めて、ぜひ楽曲をチェックしつつ『ボカコレ』開催を心待ちにしよう。

■吉田夜世「オーバーライド」

昨年から圧倒的な注目度で各種ランキングにてトップ独走を続けていた原口沙輔「人マニア」。その連覇をついに止めた楽曲として大きく話題を集めたのが、この吉田夜世「オーバーライド」だ。

ニコニコ動画で黎明期より支持を集め続けるMAD文化との親和性で、今もなおじわじわと人気を拡大しつつある本曲。吉田夜世は初回『ボカコレ』から皆勤参加ともなっており、これまでにも「氷解」「フォールスマン・ショー」などのオリジナル曲を投稿してきている。今回の『ボカコレ 2024冬』ではリミックス部門での参加をすでに表明。一体どんな楽曲を基にアレンジの手腕を発揮するのか、そのチョイスも非常に楽しみだ。

■大漠波新「はじまりのうた」

2月初旬に『マジカルミライ 2024』公募楽曲として投稿された「はじまりのうた」。毎年夏の初音ミクの誕生を祝う祭典に向けた音楽に相応しい、煌びやかなピアノフレーズとボーカルワークが印象的な一作だ。楽曲時間の細やかな設定にも彼女への愛を感じる、そんな作品ともなっている。

大漠波新は前回の『ボカコレ 2023夏』にて、「あいのうた」が自身最高位となる総合ランキング10位を獲得。イベントが終わってなお、本作は人間賛歌ならぬVOCALOID賛歌として長く愛される曲ともなった。過去にはわずか2週間での曲制作を成し遂げた実績も持つ彼。悲願の1位を狙うべく、はたして今回の『ボカコレ』にも颯爽とその姿を現すのだろうか。

■原口沙輔「ミニ偏」

もはや説明不要と言っても過言ではないほど、今やシーンではリスナーからの注目を一身に浴びる原口沙輔(ex.SASUKE)。2月頭に投稿されたばかりの本作も洗練されたサウンドメイクと独特の違和を漂わせるキャッチーさを兼ね備えており、気の抜けた楽曲の印象に相反するように、他の追随を許さぬ圧倒的な尖りを見せている。

以前の名義での活躍こそあれど、未だボカロP・原口沙輔としての活動期間はわずか半年。しかしその中ですでに4曲(共作も入れたら5曲)もオリジナルを投稿するという、驚異のハイペースで制作を続けている。そんな現状から月末の『ボカコレ』に、彼が何かしらの形で参戦する可能性に期待しているリスナーも、きっと大勢いるに違いない。

■Shu「シルバーコレクター」

各種投稿祭でこれまでに何度もその頂まであと一歩及ばず、どんなボカロPよりも苦い経験を重ねてきたShu。『巡音ルカ聖誕祭~15thAnniversary~』参加曲、及び第20回『楽曲コンテストプロセカNEXT』応募楽曲としても制作された「シルバーコレクター」はそんな彼の作品であるからこそ、強固な説得力と圧倒的な熱量のメッセージ性を孕む。

昨年末にはすでに『ボカコレ』TOP100での1位獲得を2024年の目標として掲げ、今月末の開催に関しても、気合いに満ちた投稿がすでに散見されている。夢にまで見た総合優勝を今度こそ手中へ。断固たる決意を携え、渾身の一作と共に頂点へ駆け上がらんとする彼の挑戦をぜひ見届けて欲しい。

(文=曽我美なつめ)

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