フランチャイズ起業で儲かる方法を“選べる人”と“そうでない人”の違い

フランチャイズは精緻なマニュアルや大手の看板をかかげられるメリットがある一方、初期費用がかさむこともあり、失敗した場合のダメージが大きいというデメリットもあります。そこで、フランチャイズで成功するために重要な方法・考え方について、著書『儲かるコンビニのフランチャイズの教科書』(自由国民社)より、長瀬環氏が解説します。

キャリアを「スライド」させてビジネススキルを活かす

これまで培ってきたビジネススキルを活かせる形での起業をしたほうが、成功するスピードが早いというのは想像できるかと思います。

フランチャイズ起業は業態や業種を“選ぶ”起業の形であるとはいえ、それまでの経験・知識を活用せずに臨むのはもったいない。

例えば、フランチャイズの成功の1つに多店舗展開があります。同じパッケージを複数の店舗に当てはめていくことのできるフランチャイズは、多店舗展開してこそ、その力を発揮します。

もし、あなたがその成功を考えて起業するのであれば、スピードは早ければ早いに越したことはありません。畑違いの仕事でトライ&エラーを繰り返して、軌道に乗せるスピードと、もともと持っている経験・スキルが活かせる業種・業態で、軌道に乗せることのできるスピードは、当然後者のほうが速いです。

私のフランチャイズ仲間のTオーナーは「コンビニの店長が憧れの職業です。すぐに長瀬さんに追いつきます」と言って、開業2年で2号店の出店を果たしました。

もともと彼はコンビニアルバイトで経験を積んでいたのです。つまりコンビニを「得意」とする人。アルバイトというキャリアをスライドさせて経営者になったのです。最短ルートを歩んでいると言えるのではないでしょうか。

長野で「唐揚げ屋」を経営している知り合いが、「たこ焼き屋」の経営を始めました。どちらも別々のフランチャイズの加盟店として経営しています。やっていることが違うように感じますが、唐揚げ屋もたこ焼き屋も、両方とも飲食店ですから、持っているノウハウをスライドして活用できているということです。

現在ではどちらのチェーンでも複数店を経営されています。

「新しい業種にチャレンジしたい!」という方を否定するつもりは、全くありません。情熱があれば、新しい場所でも必ず成功への道は用意されているでしょう。むしろ、今まで経験したことのない世界だからこそ、前向きに取り組む力が発揮できるのかもしれません。

しかし、自分のキャリアをスライドさせることができる業態や業界を選ぶことができるならば、成長スピードは倍速です!

新しいチャレンジを考えていたとしてもまずは成功事例を作るためにも、自分が経験してきた業態や業種でフランチャイズ起業をすることをおすすめします。

「借り入れ」と「借金」の違い

フランチャイズに限ったことではありませんが、事業を立ち上げようと思ったら、手持ち資金だけで起業できることもあれば、金融機関からお金を借りなければいけない場合もあるでしょう。

ビジネス書を読むあなたはきっと様々なジャンルの本もお読みでしょうから『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著 筑摩書房)も既に読まれているかもしれません。

その中で、

・住居のための不動産=負債

・投資のための不動産=資産

と述べられているように、家は月々のローンの返済などがあるだけで、そこからはお金は生まれません。

しかしビジネスで使う店舗からはお金が生まれます。お金を運んでくれる店は資産です。

「より儲かる方法」を選択しないワケ

参入障壁が高いビジネスほど安定した経営を行うことができます。

金融機関から多額のお金を借りて行うフランチャイズはそういった意味では参入障壁が高いのではないでしょうか? 他の人が参入しにくいというメリットは大きいといえます。

しかし、多くのビジネスパーソンは「家」以上の買い物をしたことがありません。家のローンも残っているのに、家より高い建築費を払って事業を行うことに、躊躇してしまいます。

私が加盟するコンビニチェーンには自前店舗型契約と本部店舗型契約という契約形態があります。自前店舗型契約の出店は5,000万円以上、本部店舗型契約の出店は400万円程度です。

初期投資に大きな差があるように、オーナーの手元に残るお金も大きく違ってきます。もちろん自前店舗型契約のほうが儲かります。

例えば、同じ日販60万円の売り上げで経費も同様に使った場合、自前店舗型契約と本部店舗型契約の月々の利益の差額は80万円以上です。自前店舗型契約はそこから賃料や建築代の返済がかかりますが、それでも30万円ほど多く残ります。

もちろん、家賃の高い都市部ではこうはいきませんが、むしろ「都市部」と言われるところより「地方」と言われる地域のほうが、圧倒的に多いことを考えると、この数値は多くの場所で当てはめることができるでしょう。

自前店舗型契約では、建築費の支払いや地代家賃がかかってくるものの、地方で出店するなら自前店舗型契約のほうが儲かります。

自前店舗型契約と本部店舗型契約で仕事の内容も契約期間も同じです。それなのに、なぜ多くの人が本部店舗型契約で出店しようとするのでしょうか(2021年自前店舗契約4,420店、本部店舗契約1万6,358店)?

それは「借金をするのがこわい!」からです。借り入れをすることと借金をすることが同義になってしまっているのです。

もちろん私は、他店舗のオーナーから「複数店経営をしたいのだけれどプランをどう組み立てたら良いのか」と相談を受ければ、必ず「自前店舗型契約でやりましょう!」とアドバイスをします。相談に来る方は1店舗目の経営を成功させ、この商売を続けていく覚悟があるから2店目にチャレンジしようという方です。

15年の契約満了で撤退するという考えは持っていない方が大半です。ならば、確実に儲かる自前店舗型契約をすすめるのが当たり前です。

「お金をかければ失敗しないのか」というとそう言い切ることはできません。しかし持ち家の「借金」と事業にかかる費用の「借り入れ」は同じではありません。どちらもお金を借りることに違いはありませんが、そこから収入が生まれるのかという大きな差があります。

借り入れと考えて、フランチャイズ起業を検討してみるといいでしょう。

長瀬 環

大手コンビニフランチャイズオーナー

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