栄養剤、流動食、栄養補給食品に関する調査を実施(2023年)~2022年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品市場規模は前年度比101.6%の1,485億円と堅調推移、栄養補給食品は在宅向け中心に市場が拡大する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の栄養剤、流動食、栄養補給食品市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品の市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比101.6%の1,485億円と推計した。2022年度の構成比を見ると、栄養剤市場の規模は前年度比103.5%の376億円、流動食市場の規模は同100.1%の818億円、栄養補給食品市場の規模は同103.2%の291億円となった。

傾向としては、栄養剤は保険が適用される医薬品であることから、病院や調剤薬局を通じた在宅療養において堅調な推移が続く。

流動食は入院時食事療養費の中で賄われるため、病院や高齢者施設で使用され、入院患者や入所高齢者向けの給食用途で伸長している。

栄養補給食品は、高齢者人口の増加や政府による健康長寿の政策推進などを背景に、高齢者の低栄養を避ける手段として需要があり、病院や高齢者施設、在宅療養において幅広く使用され、拡大を続けている。
一方、栄養剤と栄養補給食品では原材料高に伴い価格改定が実施されたことで、病院や高齢者施設では安価な汎用品などへシフトする動きも見られた。

2.注目トピック~急性期領域の消化態流動食が強化される

急性期の患者を想定した消化態流動食は、2010年に外資系メーカーから発売された。同メーカーは、2017年に超急性期を想定した製品を発売、2023年には消化態栄養でも下痢に対応する製品を発売し、急性期でも細やかに患者の症状に合わせた最適な選択ができるように提案している。
さらに、2022年には消化態流動食市場に初めて製品を投入するメーカーが現れた他、2023年には、従来品に加えて新規の消化態流動食を投入したメーカーや、半消化態であるが急性期から慢性期までの使用を想定した発酵乳配合たんぱく質を100%使用する製品を投入したメーカーもある。

2022年以降、流動食メーカー各社が急性期での使用も想定した新製品を積極的に投入する背景には、流動食が価格競争に陥る中で市場としては大きくないが、汎用品より収益性が高い急性期を想定した製品に注力し始めていることや、医療従事者や患者とのコミュニケーションにおいて、川上(急性期)から川下(回復期以降)迄の栄養補給を通して、自社製品の継続使用を目指していることが挙げられる。

3.将来展望

今後も高齢者人口は増加が予想され、保険適用が継続する栄養剤は在宅療養において主体的に使われると考える。少量高カロリーや、PEG用の半固形、長期使用を想定した栄養組成、ONS(Oral Nutritional Supplementの略、通常の食事に加え栄養剤を補助的に少しずつ摂取すること)を意識した味の向上など栄養剤の機能は市場を牽引するとみる。昨今の原材料高を受けて、薬価が上げられた製品も見られるが、保険財政が逼迫化する中、今後も薬価が上げられるかは不確実であり、在宅高齢者の増加で数量の拡大は続くものの、今後も薬価改定を繰り返しながら栄養剤市場は微増推移すると予測する。

流動食市場は2012年頃に成長が鈍化し、その後は低成長、微増推移へ移行した。今後についても流動食市場全体は鈍化ペースが続き、年率1~2%の成長率になると考える。高齢化は未だ進行する中、固形タイプ、補食用途、低栄養対応、高カロリー、高たんぱく、経口投与などの製品コンセプトは支持されており、液体タイプの総合栄養製品が漸減する一方、新しい製品群がその落ち込み分をカバーすると考えられる。

栄養補給食品市場は、高齢者の低栄養を改善する一手段として、高齢者施設の入居者の補食(おやつ・デザート)需要が安定的に伸び、同様に在宅高齢者(未病や健康な高齢者含む)の取り込みで、今後も伸長していくと予測する。栄養補給食品は、在宅向け中心に市場が拡大する見通しである。そのためにも、在宅高齢者やその家族向けの啓蒙活動は重要である。

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