「Apple Vision Pro」第2世代機の発売は早くて1年半後か

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アップルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」は、マイクロソフトの幹部が飛行機内をエンタメ空間に変えると絶賛したり、OpenAIのCEO サム・アルトマン氏が「iPhone以来の最も素晴らしい技術だ」と述べるなど、IT業界からの評価は上々だ。だが、一般ユーザーからは高価すぎる、重すぎるとして返品が相次いでいるとの報道もあった。

そんななか、第2世代Vision Proの登場までには少なくとも1年半はかかると著名ジャーナリストが主張している。

アップルがVision Proの第2世代モデルの開発を始めていることは、昨年6月に初代モデルがWWDC(世界開発者会議)で発表される前から噂されていた。初代が高価にならざるを得ないため、一般消費者に普及させるには廉価モデルが必要となること。また早くから重くなることも予想されており、次世代では軽量化が図られるとの報道もあった

アップルの内情に詳しいBloombergの記者 Mark Gurman氏は、米国でVision Proを購入しつつも、期限内に返品した人々(2月2日に購入した場合、16日まで)の声を総括している。それは、ざっと次の通りだ。

  • 単純に重すぎ、管理が面倒で、頭痛が起こり不快である
  • 今のところアプリや動画コンテンツが不足しており、価格に見合っていない
  • 仕事用としても、普通のMac用外付けディスプレイを使うよりも生産性が向上するわけではない。また長時間にわたり使うのも難しい
  • ディスプレイが眩しすぎ、視野が狭すぎるため、眼精疲労や視力の問題が起こる
  • 装着しているユーザーは、家族や友人から孤立していると感じやすい。Vision Proの装着は個々人に正確に合わせる必要があるため、簡単に他人とシェアできない

かたやVision Proの愛用者の意見を、Gurman氏はこうまとめている。「現行モデルは第一世代に過ぎないと強調する。そのうち良くなるだろう。初代iPhone、iPad、Apple Watchにもクセがあったことを忘れてはいけない。ヘッドセットが重すぎると感じたら、それは間違った装着方法だ。視野が思ったより狭く、まぶしい?それが普通だ」というわけだ。

確かにアップルの第1世代製品に問題があったことは事実だ。初期のiPhoneはApp Storeやカット&ペースト機能もなかったし、初代iPadにはマルチタスク機能もなく、初代Apple Watchは動作が遅すぎて防水性もなかった。が、使いにくい、高すぎるとの不満はほとんど聞こえてこなかった。

また米国では気軽に返品する文化があり、無料レンタル感覚とも言われるほどだ。Gurman氏によれば、Vision Proは一部の店舗では1日に1~2件、大型店舗では8件以上の返品があるというが、さほど大きな数字ではない。

それでも、Vision Proは最も熱心なアップルファン、ないし最新技術を愛好するアーリーアダプタが買い求めていると思われ、よほどの理由がない限りは返品しないだろう。

実際、今回の報道によれば、アップルも何が起こっているか興味を抱いているようだ。顧客がVision Proを返品すると、小売店スタッフはは何が問題だったか尋ねる。また彼らには、返品されるたびにマネージャーに報告するよう指示されており、懸念事項があればアップル本社に報告されているという。

しかし、この記事では第2世代モデルがVision Proの後継機だけなのか、それとも廉価版も登場するのかは言及していない。アップルの未発表製品に詳しいMing-Chi Kuo氏は、廉価版は開発中止となった可能性があり、後継モデルの量産は遅くとも2027年後半までに始まると予想していた

ともあれ、アップルがVision Proを発売したことで、全世界的にAR/VR市場への関心が再び高まったことは確かだ。

Metaはこの市場での競争を歓迎していると報じられ 、CES ザッカーバーグ氏も「Meta Quest 3の方が優れている」と挑発的な発言をしていた。Vision Pro 2(仮)が投入される前に、競合他社がより安価で軽いヘッドセットを相次いで発売するのかもしれない。

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