『ブギウギ』生瀬勝久の再登場に歓喜! タナケンの映画で『カムカム』と世界線がクロス?

『ブギウギ』(NHK総合)第21週は、1949年夏からスタート。初日の放送となる第97話では、「東京ブギウギ」に続き、「ジャングル・ブギー」もヒットさせたことで仕事に育児にますます多忙な日々を送るスズ子(趣里)のもとにタイ子(藤間爽子)が訪ねてくる。

栄養不足による脚気で一時期は寝たきりの生活を送っていたタイ子。スズ子の“おせっかい”のおかげもあり、元気を取り戻したようで顔色も良くなってホッとする。2人の関係もすっかり元に戻り、スズ子にとってタイ子は子育ての悩みも共有できる心強い存在となっていた。

だが、タイ子は達彦(蒼昴)と一緒に生まれ故郷である大阪に帰るという。そこで達彦が学校に通えるように女中として働き、一から人生をやり直すそうだ。戦後の混乱期を生きる人々への応援歌のつもりでスズ子がワイルドに歌い上げる「ジャングル・ブギー」に背中を押されたのだろう。やはり彼女の歌には聴く人をエンパワーメントする力がある。スズ子が歌手をやめようとした時に「日本の損失」とまで言って猛反対した愛助(水上恒司)は、誰よりもそのことが分かっていた。

そんな愛助の言葉を胸に、ここまで諦めず仕事と育児を両立させてきたスズ子。しかし、愛子(小野美音)はいたずら盛りでその大変さは増している。少し目を離した隙に障子を突き破ったり、台所で小麦粉まみれになっていたりするから一切油断ができない。子供が自由に動けるようになってからが子育て本番とよく言われるが、スズ子の場合はまさしくその例だ。

だけど、つい許してしまうところがスズ子らしいと感じる一方で愛子を見ていたらそうなるのも分からなくはない。口を少し尖らせて「ごめんなしゃい」と謝る愛子の姿は愛らしく、見る人の母性本能をくすぐってくる。でもかわいいからこそ、大事だからこそ、悩んでしまうもの。ぼーっと愛助の遺影を眺めるスズ子の姿から、「こんな時に愛助がいてくれたら……」という心の声が今にも聞こえてきそうだった。

そんな中、スズ子はタナケン(生瀬勝久)の映画に出演が決まる。麻里(市川実和子)は愛子を預かると言ってくれるが、彼女の家にはすっかり成長した3人の子供がいるし、羽鳥(草彅剛)も映画の主題歌になった「青い山脈」が大ヒットして超売れっ子作曲家になったものだから大忙し。何より、スズ子がそばにいないと泣いて手がつけられなくなる今の愛子を預けるわけには行かず、結局いつものように現場へ連れていくことになった。

映画の撮影が行われる場所は「条映撮影所」。その名前に聞き覚えのある視聴者も多いだろう。そう、条映撮影所は2021年度後期放送の『カムカムエヴリバディ』でも登場した名前。時代的にもしかしたら、若かりしき頃の初代モモケン(尾上菊之助)や伴虚無蔵(松重豊)がいるかもしれない。全く別の物語だが、両者の世界線が一瞬交わったみたいで朝ドラ視聴者としては思わずテンションが上がってしまった。

また、タナケンの久しぶりの登場も嬉しい。タナケン・スズ子のコンビは健在で、映画で夫婦役を演じる2人のやりとりは息がぴったり。スズ子の芝居も以前より板についている。だけど、やっぱり気になるのは愛子のこと。子どもの有り余る体力にもはや追いついていけない山下(近藤芳正)に代わって、制作助手が愛子の面倒を見てくれていたが、ちょっと目を離した隙に愛子が転んで怪我をしてしまう。制作助手たちは平謝り。「愛子ちゃんのそばにいてあげてください」と翌日の撮影もストップする手厚さに、スズ子のスターっぷりが伺える。

「現場に子どもを連れてくるなんて」と文句を言われていた頃とは違って、今やスズ子は周りに気を遣われる立場にある。本人は逆にそれが申し訳なく感じるのだろう。一方で、常に一緒とはいえ、仕事が忙しくて愛子に寂しい思いをさせていることもスズ子には気がかりなはずだ。現時点ではまだ、そのジレンマを解消する術はない。
(文=苫とり子)

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