【追記あり】バス、トラック、タクシー運転手が足りないと言うけれど 今でも子どもに人気の職業なのにどうして

自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が、2024年4月1日から960時間以下に制限される。トラックやバスのドライバーが不足するのではないかといった懸念が広がっている。

だが、実はこうしたドライバーは、昔から子どもたちから人気の職業だ。令和になってからも変わっていない。それでも「なり手」が不足しているとは...。

車両と鉄道で有効求人倍率が分かれる

化学メーカーのクラレが発表した「新小学1年生の将来就きたい職業」2023年版を見てみよう。トラックドライバーが含まれると思われる「運転士・運転手」は、男子の7位と、なかなかの人気ぶりだ。同ランキングの2003年版でも「運転士・運転手」は男子の6位。当時の子どもたちが、現在トラックやバスの運転手になっていてもおかしくはない。

「鉄道の運転士」も人気だ。2022年発表の第一生命「第33回『大人になったらなりたいもの』調査結果」では、8位にランクインしている。

「運転士・運転手」と言える職業の有効求人倍率についても調べた。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」で検索すると、2022年、バス運転手の有効求人倍率は1.96、トラック運転手は2.26、タクシー運転手は4.68と、働き手の不足が顕著だ。ところが、鉄道の運転士は0.74と、比較的余裕のある数字が出てきた。車両か鉄道かで、「明暗」が分かれている。

賃金や長時間労働が原因か

有効求人倍率が1を超えていたバス運転手、トラック運転手、タクシー運転手について、各業界の協会に取材した。

全国ハイヤー・タクシー連合会に、タクシー運転手不足の要因をどう考えているか聞いた。長年、全国的にタクシーの運賃が据え置かれたことを挙げる。2022年、15年ぶりに東京23区、三鷹市、武蔵野市で値上げが認められ、その後、全国で値上げの承認が相次いだ。だが、据え置きの期間が長かったことは事実だ。

「コロナの影響で、高齢のドライバーの中には危険を感じて退職したり、外出する人が減って稼げなくなりトラックドライバー等に転職したりしたのが、主だったものかと思われます」

と回答した。

全日本トラック協会に聞いた。トラックドライバー不足については「長時間労働や低賃金」を原因と考えているという。

「他の全ての産業の平均値に比べて、『労働時間が2割長く、賃金が1割低い』という調査結果が出たこともあります。対策としては荷主から適正な運賃を頂くことです」

「子どものなりたい職業ランキング」に「運転手」や「運転士」がトップテン入りしている点についても聞いた。同協会は、トラックドライバーの魅力を発信して、なり手を増やしていきたいと回答した。

なお、J-CASTニュースBiz編集部は日本バス協会にも取材を実施したが、期限までの回答は難しいと返答があった。回答が届き次第、追記する。

(2024年2月19日18時55分追記)

日本バス協会から2月19日、回答が届いた。「コロナ禍前から運転者不足という課題を抱えていた」という。さらにコロナ禍による需要減少に伴う事業縮小、事業継続のため賃金カットを含めた経費の節減により、「相当数のバス運転者の離職につながったものと考えられます」。その後、輸送需要がコロナ禍の影響を脱しつつあり、全国的に運転者不足が顕在化したとの説明だ。

「子どものなりたい職業」に運転手や運転士がランクインしている点については、以下のように答えた。

「幼児期では、幼稚園までの送迎バスや外出の際の駅までの路線バスなど、交通手段としてバスを利用する機会が多く、身近な職業としてバス運転者が将来になりたい人気の職業として選ばれることがあるのではないかと考えられます。いずれにしても、子どもにバス運転者になりたいと思われるよう、バス業界をより魅力的な産業とするため努力していく必要があります」

(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)

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