焦点:武装組織による米軍攻撃、イラン司令官の介入で中断した舞台裏

Ahmed Rasheed

[バグダッド 18日 ロイター] - イラクで活動する親イラン武装組織が1月28日にヨルダン北東部の米軍施設を攻撃した翌日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官がバグダッドを訪問して説得し、攻撃中止につながったことが、複数のイラン・イラク情報筋の話で分かった。

コッズ部隊のイスマイル・ガアニ司令官は29日、バグダッド空港で武装組織の代表者数人と会談した。ヨルダンにある米軍施設「タワー22」への無人攻撃で米兵3人が殺害された事件を受け、米政府が武装組織を非難してから48時間も経っていなかったという。

ガアニ氏は、米兵を殺害すれば米国の激しい反撃に遭う恐れがあると指摘。上級指揮官への米軍攻撃や、重要なインフラの破壊、あるいはイランへの直接的な報復を避けるため、身を潜めるよう武装組織を説得した。

当初ガアニ氏の要求に応じなかった派閥もあったが、他のほとんどの派閥は同意した。

主要組織、神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)は翌日、攻撃を中断すると発表した。

2月4日以来、イラクとシリアにおける米軍への攻撃は皆無だ。イスラエルによるガザ攻撃に反対して紛争が広がる中、ガアニ氏が訪問する前の2週間には米軍への攻撃が20回以上行われていた。

「ガアニ氏が直接介入しなければ、カタイブ・ヒズボラに緊張緩和のための軍事行動停止を説得することは不可能だっただろう」と、イラン系イラク武装組織のある幹部は語った。

ガアニ氏の訪問についてはイラクのメディアで言及されているが、同氏のメッセージの詳細や攻撃減少への影響についてはこれまで報じられていなかった。

ロイターは、イラン政府高官3人、イラク治安当局高官1人、イラクのシーア派政治家3人、イランが支援するイラク武装組織の消息筋4人、イラク関係の外交官4人に話を聞いた。

<イラクと米の協議再開>

イランと米国、両方と同盟関係にある数少ない国のひとつであるイラクは、駐留米軍を撤退させるためにアメとムチを使い分けてきた。情報筋5人によると、ヨルダンの米軍施設に対する攻撃を受け、自国が再び外国勢力の戦場になるのを防ぎたいイラクは、イランに武装組織の行動を抑えるよう要請した。

イラクの与党政治家は、今回の攻撃がイラク政府にとって絶好の機会になったと明かす。ガアニ氏の説得で攻撃が小康状態になったことで、米軍駐留終了に関するイラクと米国の協議は2月6日に再開した。

イラクで活動する複数のイラン系組織も、米軍駐留を終わらせるためには攻撃よりも対話が好ましいと考えている。

<攻撃再開の恐れ>

イランの治安当局高官は 「ガアニ司令官の訪問は成功したが、すべてのイラク人グループが非エスカレーションに同意したわけではない」と言う。小規模だが非常に活発な組織「ヌジャバ」は、米軍は力ずくでしか撤退させられないとし、攻撃を継続する方針を示した。

攻撃中断がいつまで続くかは分からない。米軍が7日、バグダッドでカタイブ・ヒズボラ幹部を殺害したのを受け、強硬派を代表する傘下グループは作戦再開を宣言している。

(システムの都合で再送します。)

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