特集はシングルマザーの奮闘です。長野県須坂市で高糖度ミニトマトの栽培に精を出す女性。子育てをしながら「こども食堂」にも取り組んでいます。農家として、母として、奮闘する日々を取材しました。
真っ赤に実ったミニトマト。須坂市にある「PEACE FARM」です。
ここのミニトマトには大きな特徴があります。
(記者リポート)
「びっくりするくらい甘いです。本当にフルーツかなと思うくらい」
一般的なミニトマトの糖度は6度程度ですが、こちらはなんと「11.1度」。イチゴやスイカに匹敵する甘さです。
PEACE FARM代表・小池鮎子さん:
「果肉の部分が甘くなって、ゼリー状の部分が酸味なんですよ。甘くて酸っぱくて濃いっていうトマトを目指して作ってます」
農園を管理する小池鮎子さん(42)。
照り具合などから、糖度を見極め、食べ頃の実を収穫しています。
小池鮎子さん:
「毎日トマトたちと一緒にいると、(見た目で糖度が)わかるようになったりするんですけど」
小池さんは2人の子を持つシングルマザー。もともと、県外で理容師をしていましたが6年前に、子どもたちと出身地の須坂市に戻ってきました。
子育てと両立できる仕事を探す中、知り合いから紹介されたのがミニトマト農園の仕事でした。
PEACE FARM代表・小池鮎子さん:
「子ども2人いて、シングルで床屋では働けなくって、自分でも家庭菜園やったりとかしていたので、こういうトマトを一緒に作ってみない?って言われて飛びつきました」
当時、農園を運営していたのは市内の飲食店。
小池さんは専門的な知識を一から仕入れ、栽培や管理に取り組みました。
小池鮎子さん:
「どのくらい日光を当てるか、湿度をどのくらいに保つか、水をどれだけあげるかっていうのを全部書き出して、データとってっていう感じですね。失敗もしながらなので、うまく育たなかったら、全部切ってもう一回、土からやり直してっていうのを何回か繰り返して」
努力の甲斐あって、3年ほど前から甘いミニトマトを安定して生産できるように。各地のイベントにも出向き、ファンを増やしていきました。
しかし農園にピンチが訪れます。運営していた飲食店がコロナ禍の業績不振により2023年7月、事業から撤退したのです。
小池鮎子さん:
「これだけ成果が出て、お客さまがついたのに、(なくすのは)もったいないって思いました」
そこで小池さんは農園の継続を目指してクラウドファンディングに取り組みます。結果、86万円ほどが集まり土や苗の購入費用に充てて、農園を引き継ぐことができました。
小池さんと同じように喜んだのは、農園に遊びにきていた子どもたちです。
小池鮎子さん:
「『イェーイ、お母さんのトマト食べられる』みたいな感じでした。母親が楽しいと、子どもたちも楽しいはずなんですよ。背中というか、見せていくためにも、ここの居場所っていうのは必要なんだなって」
忙しい時は人の手を借りますが今はほぼ1人で管理。減農薬にも取り組み、葉を1枚ずつ拭き上げ消毒するなど手間をかけて栽培しています。
トマトは農園の無人販売所と市内のコンビニ店1軒で購入することができます。
現在、販売しているのは平均糖度10度以上の「美肌トマト」と、平均糖度8度以上の「ほのあまトマト」。
「美肌トマト」は、日本野菜ソムリエ協会の品評会で入賞を果たすなど高い評価を受けています。
農園を訪れた客:
「いただきまーす」
試食も可能―。
農園を訪れた客:
「おいしい、甘い。本当にフルーツみたい。生で食べたいですね」
「手がとまらなくなって、どんどん食べちゃうような、そんな感じだよね」
小池鮎子さん:
「食べたことのない味のトマトだと思うので、まずは食べてみてびっくりしてほしいですね。お客さまがお客さまを呼んでくれて、『あそこのトマト屋、頑張っているから行ってみなよ』とちょっとずつ認知が広がっているのかなと思います」
実は小池さんには、ミニトマト以外にも力を入れていることがあります。
市内の施設で料理をする小池さん。2023年10月から「こども食堂」を本格的に始めました。
食材の多くは常連客から寄せられたもの。1人では手に負えないため知り合いに手伝いにきてもらっています。
下ごしらえをしたら会場となる市の社会福祉協議会の施設へ。こちらの施設では、毎月第4金曜日に開催しています。
長男・悠元さん(8):
「ただいま」
午後5時過ぎ、学校を終えた小池さんの子どもたちもやってきました。
あっという間に、多くの親子が来場ー。
この日のメニューはカレー。もちろん、農園のミニトマトも。
子ども:
「おいしい」
「すごく甘くておいしい」
小池さんの子どもたちも―。
長女・瑚陽さん(12):
「めっちゃ甘くて、ずっと食べていたいくらいおいしいです」
小池鮎子さん:
「おいしいですか、いっぱいおかわりしてください」
親しみを込めてみんなから「トマ子」と呼ばれている小池さん。
食堂は子どもたちだけでなく保護者たちのサポートも目的だと話します。かつて自分がシングルマザーとして孤独な育児を経験したからです。
小池鮎子さん:
「なかなか友達ができなかったり、頼れる人がいなかったりっていう環境の中でつながりたい人はいると思っていて、その人たちの話を聞きたくて、それがきっかけで始めました」
保護者:
「子ども無料ってきょう知ったので、すごくいいなって」
保護者:
「すごく助かりますね。子どもとワイワイ食べられるのがすごくいい」
食事が終わると、小池さんの子どもたちも食器洗いなどのお手伝い。働く母の姿をちゃんと見ています。
長女・瑚陽さん(12):
「(こども食堂は)自分がやってもらったらうれしいことだから、すてきな行動だと思う。すっごく好きです、お母さんのトマト甘くて」
長男・悠元さん(8):
「お母さんのトマトのやり方を見習って僕も作ってみたいと思う」
子育てをしながらミニトマト農園に、こども食堂。
小池さんの忙しい日々が続きます。
PEACE FARM代表・小池鮎子さん:
「皆さんのご縁をいただいたりとか、恵まれているとしか思っていないので、一生懸命、自分のできることをやって恩返しをしようとしか思っていなくて、『大変』というのはあまりわからないですね。皆さんの力を借りて一緒に歩んでいけたら」
「頑張るぞー!えいえいおー!」