上戸彩「積み重ねてきたものをゼロにしたくない」育児との両立 仕事と向き合う姿勢

上戸彩

上戸彩が、AmazonOriginalドラマ『沈黙の艦隊 シーズン 1 ~東京湾大海戦~』(Prime Videoで世界独占配信中)に出演。実写版オリジナルキャラクターで報道キャスターの市谷裕美を演じる。本作は、2023年9月29日に公開された実写映画『沈黙の艦隊』をベースにした全8話の連続ドラマ。劇場版未公開シーンに加え、劇場版の続きとなる沖縄沖海戦、東京湾海戦を描く。インタビューでは、本作に出演を決めた理由や、役者としての信念、「やっと自然に歌が歌えるようになってきた」と話す上戸に歌うことの変化について、話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

育児をしながらも安心してできる撮影現場

――この作品に出演するにあたり、どんなところがポイントになったのでしょうか。

いま子供が3人いて、こんな私にお話をいただけるということで、とても光栄でした。そして、自分の生活と出番の量だったり、スケジュールのタイミングが合ったというのが大きかったです。また、大沢さんがプロデューサーとして入られていたり、江口(洋介)さんなどお会いしたい役者さんも多かったんです。ありがたいことだらけだったので、やらせていただけるならお受けしたいと思いました。

――子育てとのバランスを考えられていたんですね。

映像作品を作るにあたって時間の拘束が長いものに関しては、いまの私はお引き受けすることができないので、『沈黙の艦隊』は自分の理想と合いました。撮影の合間にプロデューサーさんも母親でもある役者さんを応援したい、働きやすい現場を作っていきたい、というお話もしてくださって。私の中では皆さんに迷惑をかけないようにというのが第一にあるんですけど、育児をしながらも安心して臨める撮影現場で、そういう環境はとても有難かったです。

――『沈黙の艦隊』は男性ファンの多い作品だと思いますが、どのように見られていました?

台本を読んでも映像としてイメージしづらかったのでPrime Videoでアニメが観られると聞いて、「へぇ、潜水艦の中ってこんな感じなんだ」みたいなところから理解していきました。

――上戸さん演じる市谷裕美はオリジナルキャラクターですが、役を聞いた時の印象はいかがでした?

これまでも原作がある作品はたくさん参加させていただきましたが、その中でオリジナルキャラクターはいらないんじゃないかと言われてしまうこともありました。でも、私の中で市谷の存在が30年前の作品と思わせないような重要な人物になって、現代の作品により近づけるように市谷が動いたらいいなと思いながら撮影に臨みました。

――近年監督などに自分の思いを伝えられるようになった、といった内容のインタビューを拝見したのですが、今回はいかがでした?

監督にいろいろ聞けるようになってきました。昔は「もうダメ出しはしないで」とか、「このまま無事に終わりますように…」とか、ネガティブな気持ちで現場にいたのですが、今は「どっちがいいと思いますか?」など自分から聞けるようになってきました。

――演じるにあたりインスピレーション与えてくれたようなものや参考にされた方はいましたか。

夜の報道番組に出られているような女性キャスターのイメージがありました。市谷は自分の気持ちを乗せて真実を伝えていくタイプだったので、滑舌はもちろん、信念の強さ、カメラを見据える目力、訴える強さというものは意識していました。最近の私はチャキチャキな役、お母さん役など明るい役が続いていましたし、自分でもそういう役を選びがちだったので、自分とちょっとギャップがある役というものは久しぶりで、自分と役とのスイッチの切り替えも楽しかったです。

大沢さん演じる海江田さんだったら仲良くなりたい

――ところで、海江田は人としてどう見えていますか?

たとえばお友達になれそうだなとか。

海江田さんは何を考えているかわからないので、なるべく関わりたくないかも(笑)。争いを起こす人、というイメージがあります。でも大沢さんがかっこいいので、大沢さん演じる海江田さんだったら仲良くなりたいです(笑)。

――海江田はテロリスト的なところもありますが、そんな危ういところに惹かれたりしませんか。

私は“安全安心な人”を選んでいきます。好きな女性には心を開いてくれたり、たくさん喋ってくれるような人だったらいいのですが、好きな女性に対してもあんな感じだったら難しいです(笑)。

――そんな大沢さんと共演されていかがでした?

撮影時のエピソードがあれば教えてください。

大沢さんと同じシーンは少なかったのですが、10年前ぐらいにCMで共演させていただいて、その時にすごいむちゃぶりをされました(笑)。監督が「本番行きます 」と言っているところで、大沢さんはそれ絶対できないでしょ?

ということをささやいてくる(笑)。当時いじられたので、今回はいじり返したいと思っていたのですが、撮影が一緒でも距離があったり、なかなかそばにいくこともできなくて。ただメイクルームではちょっとお話ができたので、 「綺麗なお尻だなあ」と思いながら、大沢さんのプリッとしたお尻を触らせていただきました。大沢さんは「なんだよー」って笑ってましたけど(笑)。 ■やりたいことだけやって人生がうまくいくとも思っていない

――先ほど市谷裕美の印象として「信念がある」とおっしゃっていましたが、上戸さんの役者としての信念は?

一緒に仕事をしている方々が上戸彩と仕事をして良かった、現場が楽しかった、やりやすかったなど少しでもそういう風に思ってもらえるような人、役者でいたいです。期待に応えたいという気持ちは不器用ながらも誰よりもあります。

今の私は家庭を第一にしてしまっているので「何でもやります 」という風に言えない役者です。そんな私にお声がけいただいたり、考えていただけること自体が幸せです。お受けしたいという気持ちは毎回どんな仕事にもありますが、どうしても生活と仕事量のバランスでお引き受けできないものもたくさんあります。そんな中で出会えたお仕事というのは、すごく貴重で一生懸命やらせていただきたいです。

――ここから先のビジョンとして心がけているようなことはありますか。

今まで積み重ねてきたものをゼロにしたくないというのもありますが、でもそこに焦りはないんです。子育てもちゃんとしていきたいというのは絶対なのですが、とはいえ子育てが落ち着いたから仕事しますとなった時に「上戸彩って誰?」みたいな感じも怖いので、そこはマネージャーさんとも今後のプランを話し合いながら前に進んでいければと思っています。常に生活リズムと自分ができる仕事の範囲をまめにマネージャーさんとも話し合いながら、できるものをちゃんとやっていきたくて。「もっと働いておけばよかった」とか思わないように、今できるお仕事は精一杯やっていきたいです。

――後悔しないようにという考え方は昔から変わらないですか。

今もそうですけど、手の抜き方がわからないんです。昔はクランクインしたらただ突き進むしかなく、撮影が終わったら高熱を出してぶっ倒れるみたいなパターンでした。でも、常に一生懸命だったので後悔はないです。たとえばめちゃくちゃ歌が下手なのに歌番組に出ていた時期も、あれが自分の精一杯だったからしょうがないと思うしかなくて。そういった仕事のやり方をずっとしていました。

逆に今の方がインプットをする時間、準備期間が多いので、アウトプットした時に「あんなに時間があったのに、これしかできなかった」という後悔はあります。自分ではちゃんと芝居をしているつもりだったのに、まだこれしかできていなかったのかって。今回の『沈黙の艦隊』でもそうでしたが、芝居って改めて難しいなと思いました。

――いま歌のお話が出ましたが、今後歌手活動というのは...。

歌いません!(笑)。でも、やっと自然に歌が歌えるようになってきた感じがあります。アーティスト活動をしていた時期は音を絶対に外しちゃいけないとかそれがプレッシャーで、マイクを持つのがすごくいやでした。当時私の中で歌は楽しむものではなく、緊張するものでしかなくて。歌手活動をしていたので、打ち上げなどで歌うことになる場面もあり、打ち上げはあまり好きではなかったんです。

――それが変わってきたんですね。

今は子供がよく歌っていて、私も一緒に歌っているので、歌う怖さというのは子供のおかげでなくなってきました。でも、テレビやライブでは歌いません(笑)。

――あはは(笑)。お家ではお子さんとどのような曲を一緒に歌っていますか。

8歳の子がAdoさんや新しい学校のリーダーズさんなどを歌っているので、私も一緒に歌っています。また、4歳の長男が音ゲーをやっていて、バックストリート・ボーイズが好きでかけているのですが、この間その長男と初めてカラオケに行ったときに、「I Want It That Way」(バックストリート・ボーイズ)を歌ったので、私もサビで<Tell Me Why,>と歌って盛り上げたりしていました(笑)。 (おわり) ST:宮澤敬子(WHITNEY) HM:猪股真衣子(TRON) 衣装 ジャケット (SUGARHILL/林デザイン事務所株式会社) ワンピース (テラ/ティースクエア プレスルーム) ピアス、ブレスレット、リング、ネックレス (ソワリー)

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