スイスのメディアが報じた日本のニュース

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、「H3」の2号機が同日午前に打ち上げに初めて成功したと発表しました (Keystone/AP Kyodo News)

スイスの主要報道機関が先週(2月12~18日)伝えた日本関連のニュースから、4件をピックアップ。要約して紹介します。 【スイスで報道されたトピック】 この中から今回は①日本名目GDP、ドイツに抜かれ世界4位に②安すぎる円 為替介入を警告③H3ロケット打ち上げ成功④EPFLで漫画イベント「ジャパン・インパクト」開催、をご紹介します。 GDP4位、「円安は言い訳にならない」 内閣府が15日発表した2023年の名目国内総生産(GDP)は、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルと、ドイツの4兆4561億ドルを下回り、米国、中国、ドイツに次ぐ4位に転落しました。ドイツ語圏の日刊紙NZZは「これは、日本が異例の金融政策の代償を支払っていることを意味する」と指摘。日銀が利上げを重ねる他国の中央銀行に追随せず円安を招いたことをドル換算のGDP縮小の最大要因に挙げました。 しかし為替要因を除いても、日本経済の抱える根本的な弱さにも原因があると解説しました。NZZは「日本の人口はドイツよりも50%多いのだから、円安は言い訳にならない」と分析。生産性の低さやデジタル化の遅れに改革が必要だと強調しました。 フランス語圏の日刊紙ル・タンは、ドイツも外需の低迷に苦しんでいる実情を説明したうえで、「日本もドイツと同じように工業国かつ輸出大国だが、その地位は長い間勢いを失いつつあり、現在はインフレと円安によって国内消費が損なわれている」と位置づけました。GDPの弱さにより「超緩和的な金融政策の終了に着手するという日銀の任務が複雑になる可能性がある」ことも指摘しました。(出典:NZZ/ドイツ語、ル・タン/フランス語) 見透かされる口先介入 外国為替市場で13日、円相場が約3カ月ぶりに1ドル=150円台の円安・ドル高水準まで値下がりし、16日には鈴木俊一財務相が「引き続き高い緊張感を持って為替市場を注視したい」と述べました。スイスの経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、「日本金融当局のトップは忍耐力を失い始めている」と論じました。 150円は為替介入を警戒すべき心理的な節目とされながらも「為替アナリストの大多数は実際の介入はありそうにないと考えている」とし、152円や155円程度の円安になるまで介入しないとする、りそな、三井住友、みずほ各行の見方を紹介しました。 同紙はGDPの弱さやドル高基調を理由に「円相場が反転し値上がりする可能性は低い」と占います。唯一の円高材料は小規模投資家の動向で、1月にみられた海外株式投資への意欲が2月に入って大幅に弱まっています。「このポートフォリオ投資の変化は円のトレンド反転を引き起こす可能性がある」とし、その時には「政府・日銀による為替介入は古臭くなっているだろう」と結びました。 (出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト/ドイツ語) 歴史的な偉業 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、「H3」の2号機が同日午前に打ち上げに初めて成功したと発表しました。スイスではフランス語圏の日刊紙ル・マタンが仏AFP通信の記事を転載し、「これにより、日本はより頻繁で安価に宇宙飛行を確保できるようになる」と位置付けました。 同紙によると、この打ち上げ成功は「自律性と宇宙分野での競争力維持を目指し、この大型ロケットに大きな期待を寄せる日本にとって重要な成功」で、「SLIMの成功に続き、日本にとって歴史的な偉業」となりました。最大6トンをさまざまな軌道で輸送できるH3は通信衛星や気象学、科学研究などの分野での応用が期待されています。また、北朝鮮のミサイル実験など地政学的な緊張が高まっている今、「日本は将来、自国の防衛を確保するために(H3を)利用する可能性もある」とも指摘しました。 スイスで進む「日本マニア」 日本の漫画をテーマにした文化祭典「ジャパン・インパクト」が17~18日、連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)で開催されました。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は13日、イベントの紹介と共に、スイスでは「あらゆる日本関連のものがヒットしている」と伝えました。 ジャパン・インパクトは今年で15回目になりますが、2023年にはスイスフランス語圏だけでも2つの日本関連イベントが誕生したそうです。パンデミックを機に日本発の漫画の売上げも増え、23年9月には漫画専門書店がジュネーブにオープンしました。 寿司は今やスイスのスーパーでも気軽に買えるようになりましたが、「新しい日本食の波は『ラーメンバー』」。ローザンヌでは過去5年、毎年1件のラーメン店が開店しています。昨年10月にオープンした店では1杯25~31フラン(約4200~5300円)で、75%の利益率を目指しているといいます。 もう1つの日本ブームは犬。スイスでは2016~23年の間に秋田犬が122%、柴犬は246%増えたそうです。RTSはフランス人ユーチューバーSQUEEZIEの飼い犬ナツがその人気の背景にあると指摘しつつ、「見た目に反して、柴犬は(世話が)簡単な犬ではないので注意が必要」と呼びかけました。スイスでは血統書付きの柴犬の仔犬は3000フラン近くするとのことです。(出典:RTS/フランス語) おまけ:スイス交通の視察団インタビュー 日本の国土交通省などの代表団が先月、スイスの地下輸送網「カーゴ・スー・テラン(CST)」プロジェクトを視察しました。交通情報サイトBahnonline.chが今月17日、視察後のインタビューを配信しています。 話題になったスイスのニュース 先週、最も注目されたスイスのニュースは「ジュネーブモーターショー、今年で終わり?」(記事/日本語)でした。他に「スイス、原発の新設解禁めぐり国民投票へ」(記事/日本語)、「Asian tiger mosquito continues to spread in part of Switzerland」(記事/英語)も良く読まれました。 意見交換 日本語を含む10言語に対応した意見交換ページで、世界の読者やswissinfo.chの記者と意見を交換しませんか?下のリンクからお気軽にご参加ください。 今日のテーマ:それでも民主主義に希望を抱く理由は? ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。 次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は2月26日(月)に掲載予定です。 校正:大野瑠衣子

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