【香港】20代8割「訪日減らさない」[経済] 処理水影響調査、若者は気にせず

東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始後も、香港の20代の76.9%は日本旅行の回数を減らす考えがないことが香港城市大学(城大)の調査で分かった。処理水を気にしない割合は年齢が下がるほど増え、若年層の訪日意欲や日本製品の購入にはほとんど影響していない実態が浮き彫りとなった。一方、香港政府が実施している日本産食品の輸入規制などの措置は回答者の過半数が支持した。

調査は城大人文社会科学院メディア・コミュニケーション系の黄懿慧(クリスティーン・ホアン)教授のチームが2023年10~12月に20歳以上の香港市民を対象に実施。オンラインでアンケートを行い、1,418人から有効回答を得た。

城大は「23年の香港市民の人気旅行先トップ10のうち、日本からは6カ所がランクインしている。処理水放出が香港市民の訪日意欲に影響を与えているかどうかを知るために調査を行った」と説明した。

処理水放出の影響を聞いたところ、「日本旅行の回数を減らす」と答えた人は全体で25.7%にとどまった。「日本製の生活用品の購入と使用を控える」は21.3%。一方、「福島産の食品を避ける」と答えた人は52.8%に上った。

いずれも年齢が下がるにつれて割合が縮小した。50歳以上はそれぞれ32.2%、26.5%、62.7%だったが、20~29歳は11.5%、10.2%、38.1%と、日本への旅行や日本製品の購入と使用で処理水放出をほとんど意に介していなかった。

黄教授は「多くの回答者は福島産の食品を避けると答えたものの、日本旅行や日本製品購入に対する意欲は大きく低下していない。香港市民は福島以外の地域のリスクは低いと認識している」と分析した。

健康リスクに関する問いでは、処理水放出が健康に悪影響を及ぼすと考えている人が60.4%に上った。ただ、これでも年齢が下がるにつれて割合が減り、50歳以上では65.5%だったが、20~29歳では51.7%だった。性別で見ると、健康リスクが高いと考えている人は女性(64.3%)が男性(55.5%)より多かった。

■市民は科学的データ重視

香港政府が実施している処理水対策については、輸入規制は56.4%、放射線モニタリングは74.3%の人が支持すると答えた。城大は「回答者は日常的な放射線検査とデータ公表が有効だと考えており、香港市民が科学的データを尊重していることが反映されている」と指摘した。

城大メディア・コミュニケーション系の王小輝(ビンセント・ワン)助教は「政府は定期的なモニタリングでデータの透明性を確保すべきだ。市民がリスクに対して賢明な判断ができるよう、教育を強化し、正確で科学的な情報を提供しなければならない」と強調した。

政府は処理水の海洋放出が始まった昨年8月24日以降、東京、福島、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉の10都県で収穫、製造、加工、包装された水産物の輸入を禁止している。

日本産食品に対して実施した放射線検査の結果は平日に毎日公表している。漁農自然護理署(漁護署)は香港産水産物の放射線検査、天文台(気象台)は香港近海の環境放射線モニタリングをそれぞれ行っているが、いずれもこれまでに異常値は検出されていない。

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