[社説]ガザ南部ラファ侵攻 停戦実現し惨事を防げ

 パレスチナ自治区ガザの最南部に位置するラファには、今も約150万人の人たちがいる。

 その多くがイスラエル軍による攻撃を逃れ、着のみ着のままガザ全土から避難し、テントなどで食うや食わずの生活を強いられた人たちだ。

 当初、ガザ北部の住民に対して南部への移動を命じたのはイスラエルだった。その南部にも攻撃の手が伸びているのである。

 先進7カ国(G7)外相会合は、イスラエル軍がラファに本格的に侵攻した場合、「壊滅的な結果をもたらす」と強い懸念を表明し、自制を求めた。

 隣国のエジプト、カタール、サウジアラビアなどからも相次いで警告の声が上がった。

 だがイスラエルのネタニヤフ首相は今も、強気の姿勢を崩していない。

 民間人を避難させる計画を検討中だという。今度は住民をどこに避難させるというのか。

 ガザ保健当局によると、昨年10月の戦闘開始以降、ガザ側の死者は2万9092人に達する。その多くが女性や子どもたちだ。

 イスラム組織ハマスを掃討する目的のためには民間人の犠牲はやむを得ない-とする考えがイスラエル側には根強い。

 攻撃する側は、民間人の殺傷を「付随的損害」と呼ぶ。

 しかし、こうした考え方は攻撃する側の一方的な論理であり、到底受け入れられるものではない。

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 ガザ保健当局によると15日、イスラエル軍がガザ南部ハンユニスのナセル病院に突入、8人が死亡した。

 ガザ地区の他の病院でも砲撃に巻き込まれ多数の死傷者が出たという。

 病院への攻撃や民間人殺害は国際法違反に当たる。ハマス掃討を理由に許されるようなものではない。

 ガザの現状に強い危機感を持つ南アフリカは、ジェノサイド(民族大量虐殺)条約に基づいてイスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。 

 「イスラエルは集団としてのパレスチナ人の破壊を意図している」との理由で。

 ICJは今年1月、ジェノサイドを防ぐあらゆる措置を取るよう命じる仮処分(暫定措置)を出したが、停戦を命じたものではなかった。

 ガザ市民が今、切実に求めているのは停戦である。停戦によって衣食住を確保し、人間としての尊厳を回復することだ。

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 ラファに住むアブタハさん(34)は共同通信の電話取材にこう訴えたという。

 「ICJはガザの現実が見えないのか。停戦以上に重要なものはない」

 米国はこれまで停戦を求める安保理決議に拒否権を行使してきた。

 パレスチナのマンスール国連大使は、即時停戦を求める決議案を近く提出する考えを明らかにした。地上侵攻を止めるためだ。

 ラファを大惨事から救うため関係国が歩み寄り、責任を果たすべきである。

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