The Street Sliders「Slider Joint」テクノポップ全盛期に放たれたルーズなロックビート  ザ・ストリート・スライダーズ7枚のオリジナルアルバムがリイシュー!

スライダーズ7枚のアルバムがアナログ盤でリイシュー

2024年、ザ・ストリート・スライダーズ7枚のオリジナルアルバムが3回に分けて、最新マスタリングでアナログ盤リイシューされる。第1弾は2月21日発売デビュー作『SLIDER JOINT』とセカンド『がんじがらめ』。オリジナルは、どちらも1983年のリリース。本稿では、ファーストインパクトである『SLIDER JOINT』について語ろうと思う。

映画「BLOW THE NIGHT! 夜をぶっとばせ」に登場したスライダーズ

スライダーズを初めて聴いたときの体験は、映画『BLOW THE NIGHT!夜をぶっ飛ばせ』の劇中歌として。しかし、スライダーズの存在自体を知ったのは、それより少し前、1983年の初夏ぐらいだったと思う。正直、記憶があやふやなのだが、『ロッキング・オン』誌に載った小さな記事。そこにデビューしたばかりのスライダーズが紹介されており、ライブ中、オーディエンスに “つまんねえ客” という言葉を吐いた… というようなことが記されていた。

こういう反抗的なものが、妙にかっこよく映るのは、ティーンエイジャーの脳内フィルターがなせる技だろう。当時、高校2年だった自分の心に刺さり、いつかこの人たちの音を聴いてみたいと思い、それが『BLOW THE NIGHT!夜をぶっとばせ』でかなった。この映画は本物の非行少女=高田奈美恵が、そのままの非行少女を演じるということで話題になっていた。つまり、映画の内容そのものが、とても反抗的であったのだ。

そんな映画の中での、スライダーズだ。劇中では『SLIDER JOINT』から、タイトルに引用された 「Blow The Night!」をはじめ数曲が使用されている。何と言ってもオープニングの 「マスターベイション」でぶっ飛ばされる。この場面は彼らのライブがとらえられているが、メンバーは4人ともふてぶてしい感じ。とりわけ、ルーズなビートに乗ってシャウトするボーカル、村越弘明=ハリーに目が釘付けになる。劇中でほぼフルコーラス使用される「すれちがい」が流れる場面でも、ステージで歌うハリーの姿が挿入され、河合かずみの着替えの場面も重なったことで、妙に忘れられないシーンとなった。

耳に刺さってくるようなスライダーズサウンド

で、アルバム『SLIDER JOINT』。ベースとドラムに2本のギターが絡む。編成だけなら、かなりシンプルなロックサウンドだ。しかし、これが当時は新鮮だった。なにしろ、1983年に巷で流行っていたのはシンセサイザー主体の音。この年にもっとも日本で売れたアルバムが、シンセの革命家ジョルジオ・モロダーがプロデュースした『フラッシュダンス』のサントラ盤であり、YMOの「君に胸キュン」もヒットを飛ばしていたのだから。

そんな流行りの曲の耳当たりの良さに比べると、スライダーズのサウンドの主役というべきギターのささくれた音は、耳に刺さってくるような感じ。イントロだけで持っていかれる「Blow The Night!」から、ノリのよい「Let It Roll」まで、鋭利なギターの音が響き渡る。2本のギターの絡みでいうと、しばしば例に出されるローリング・ストーンズ、とりわけミック・テイラー在籍時のストーンズのように泥臭くてブルージー。「あんたがいないよる」のズルズルと引きずるようなルーズな雰囲気も最高だ。この時代にこういう音を出していた日本のメジャーバンドは、パッとは思いつかない。

ナイフのように鋭利な「SLIDER JOINT」の魅力

そして、やはりハリーのドスの効いたボーカルが、とにかく挑発的だ。この頃のハリーの歌い方は後の唱法に比べると、若さゆえか斜に構えているような、そんな印象を受ける。ジャンプナンバー「Downtown Sally」の “俺とイイ事やろうぜ ダサイ奴ら振り切って” の部分の語尾はどこか投げやりだし、ルーズなブルース「マスターベイション」の “マスターベイション あんたのオツムは~” の部分は、明らかに皮肉っぽい。

1988年にリリースされた編集盤『REPLAYS』では、本作の中の2曲「のら犬にさえなれない」と「Blow The Night!」が再録バージョンで収録されているが、これらをファーストの同曲と聴き比べると違いは明らかだ。『REPLAYS』でのこれらは、ロックバンドのボーカリストらしい堂々たる歌いっぷりだが、『SLIDER JOINT』でのこの2曲は良い意味で若気がフライングしている。激しさや、だらしなさ、生意気さややるせなさが同居している… というと伝わるだろうか。『REPLAYS』のハリーのボーカルが大人のワルであるとすれば、『SLIDER JOINT』のそれは不良少年。どちらにも良さがあるが、後者のナイフのように鋭利な魅力は、リアルタイムで聴いた身としては、どうしても忘れ難い。

さて、今回のアナログ再発は、最新マスタリングだ。鋭さをそのまま残しながら、格段とクリアになった音を楽しみに待とうと思う。

カタリベ: ソウママナブ

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