長年続けてきた仕事を“卒業”したショコラさん。暮らしはどう変わった?

朝起きたら、カーテンを開けて光をたっぷり取り込みます。

仕事と節約生活を車の両輪にして走り続けてきたショコラさん。日々の暮らしを発信するブロガーとしても大人気です。2023年3月に、長年続けてきた仕事をやめて、年金中心の生活になりました。仕事をやめて変わったこと、変わらないことについて伺いました。

PROFILE
ショコラさん
しょこら●1956年生まれ。結婚後、2男の子育てと家事をこなす。42歳で別居。営業職で自活し、4年半後に離婚。60歳のときに、日常をありのままに綴ったブログ「60代一人暮らし 大切にしたいこと」を始める。著書に『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』(マガジンハウス)などがある。

あこがれの「目覚ましをかけない生活」を実現!

長年続けてきた仕事を2023年の3月に晴れて「卒業した」というショコラさん。ライトグレーのスカートとオフホワイトのセーターという春らしい装いで出迎えてくれました。

1LDK・42㎡のマンションは、サンルームのような廊下が玄関とリビングをつなぐおしゃれなつくりです。大きな窓から光が差し込む明るいリビングは、すっきり広々。窓辺のグリーンがのびやかに育っています。

「花束に入っていた枝を水にさしておいたら、葉に見える枝の中心から芽が出てきて、ほら、花が咲きそうでしょう?」
思いがけない変化に心を寄せて、心から生活を楽しんでいるご様子。

昨年春、長年続けてきた仕事をリタイアして、生活はどう変わったのでしょうか。

「ダラダラする時間が増えました」
と、冗談めかして大笑い。ブログと同様に、自然体のお人柄です。
「私、めざまし時計をかけない生活にすごく憧れていたんです。それがかなって本当にうれしいの」と意外なお答えが返ってきました。

「私は早起きが大の苦手。メーカーの社員時代には、朝8時までにメールチェックを済ませるようにと言われていたので、朝は6時起きでした。パート時代の最後の頃には10時出社になりましたが、身支度やお弁当作りがあるので、7時から7時半には起きないと間に合いません。それが大きなストレスでした。年をとると目覚めが早くなるというから、早くそうなりたい、と思っていたくらいです(笑)」

そして今——。
「起きたくなるまで寝ている、という感じですね。長年、夜寝る前に本を読むのが習慣になっているのですが、翌日仕事がある日は、早く寝なきゃ、と焦る気持ちと、もっと読みたい気持ちのせめぎあい。今は、時間を気にせず好きなだけ本を読めるので、寝る時間がどんどん後ろにずれて、その分、起床も遅くなる。悪循環かもしれませんが、だれかに迷惑かけるわけでもないでしょう? 時間に縛られずに自分の思い通りにできるって、すごく幸せなことだと思います」

ベッドの枕元に置いたナイトテーブル。「退職前は、この目覚まし時計が必需品でした」。お気に入りのスタンドライトと、寝る前に読む本や老眼鏡にもすぐ手が届きます。

朝起きると、カーテンを開けて部屋に光を入れます。その後は——。
「退職前は、出勤前にテレビに映る時刻とにらめっこしつつ、あわただしくメイクを同時進行していました。でも、今は、窓辺のグリーンにゆっくり水をあげる心のゆとりも生まれました」

ショコラさんのキャリア&節約生活ヒストリー

花束の中のルスカスを水にさして、窓辺のアクセントに。「葉に見えるところがじつは枝。その中央から芽が出て、花が咲きそうです。友人からもらったアロマティカスも水栽培で根が出てきました」

結婚前
・高校卒業後、OLを6年間。

24歳
・結婚。以後8年間、専業主婦。

32歳
・次男が小学校に入学後、外資系化粧品会社などの営業補佐として週5日ほどパート勤務。少しずつ貯金を始める。

42歳
・次男の高校入学を機に、貯金を元手に1Kのアパートを借り、婚家を出て別居。自活するため、将来の生活まで見越して、製薬系基礎化粧品メーカーの営業社員として就職。当初は契約社員、45歳で正社員に。
・退社後、元の家に通い、子供たちの夕食や翌日のお弁当をつくり、夜遅くアパートに帰る「通い子育て」生活を続ける。

46歳
・離婚。友人のアドバイスにより、1LDKの新築分譲マンションを購入。子供たちも自由に出入りし、食事を共にすることも。
・35年ローンを組み、年3回のボーナスのほとんどをローン返済と子供たちの大学の学費にあてる。子供たちの大学卒業後は、学費分をローンの繰り上げ返済に回す。
・40代後半から50代前半は、ドラッグストアへのルートセールスのほか、美容スタッフの指導やプロモーション活動など、仕事面でも充実。営業所長のポストも経験

56歳
・このころ、老後の年金受取額などをリサーチ。年金額はおよそ12万円と試算。
・住宅ローンを10年で完済。
・「60歳の企業年金受給まで、節約して貯金する」と決める。
ローン終了後、ボーナスの大部分と、給料の半分を老後資金として貯金。

57歳
・体調を崩し、60歳の定年まで3年残し、退職。退職金は半額になったが、老後資金として貯金。
・ハローワークで無理なく働けるパートの仕事を探す。家計簿から割り出した月々の生活費は約12万円。できるだけ貯金をくずさずにすむように、週5日フルタイムで手取り12万円以上、内勤で片道30分以内、と条件を入れて検索。呉服の卸問屋の職につく。

60歳
・企業年金5万円の受給開始。

65歳
・老齢年金の受給が始まるが、退職を延期して、パート収入は老後資金として貯金。

67歳
・退職。

「おかれた場所で輝く人になる」と決めてパート勤務を10年。そして退職

長い間、仕事と節約を車の両輪にして暮らしを整えてきたショコラさん。40代で始めた化粧品メーカーの営業正社員は13年。57歳から呉服の卸問屋でのパート勤務は10年。通算23年間も携わってきた仕事をやめて、後悔したり、忘れ物をしたような気持ちになったりしなかったのでしょうか——。

「じつは、13年間勤めた化粧品メーカーの正社員をやめて、呉服の卸問屋のパート職に転じたときには、正社員の職をやめなきゃよかった、と後悔して半年くらい引きずっていたんです」

営業所長まで経験した責任のある仕事を離れて、ストレスが減った半面、パート先での“言われたことだけしていればいい”と軽く扱われる雰囲気にはなかなかなじめなかったといいます。

「お給料の金額や通勤時間まで条件を細かく絞り込んで選んだパート職でしたが、正社員とパートでは仕事へのかかわり方もお給料の面でもまったく違うので、落ち込んでしまって……」

そんなある日、ふと目にとまった新聞広告で、禅の教えを説く本の内容が箇条書きで紹介されていました。

「その一つが、“大地黄金”。“今いる場所で輝く人になりなさい”という意味があるというこの言葉に救われたんです。そうだ、おかれた場所で咲けばいいのだ、と。がんばっていたらそのうち任されるように。呉服の卸問屋で子供の七五三用の着物を取引先企業にレンタルする仕事なんですが、全国にある支社からの要望に合わせて、赤やピンク色など華やかな着物や小物を自分で選び、伝票を作って発送する、という一連の作業を担当して、売り上げもアップ。年金生活になる65歳までは働こうと考えていましたが、仕事がおもしろくてさらに2年続けてしまいました」

「今でも、思い出すとまたやりたくなる」というほど、熱をこめて仕事に向き合ってきたショコラさんですが、さすがに忙しすぎて体力的に厳しくなり、67歳で退職することに。

「週2日か3日でいいから続けて、と引き留められましたが、体力的に限界です、といって辞退しました。人生長いといっても、体が自由に動くのはせいぜい80歳くらいまででしょう。コロナで控えていた分、元気なうちにもっと旅行に行きたいし、今までできなかったことにも挑戦したい、という思いが強かったんですね」

リビングの窓辺に吊るしたグリーンは、マダガスカルジャスミン。白い花が咲くといい香りが漂います。ニトリで購入した小ぶりのハンギングプランターに。

そして、昨年3月、退職の日。
「やめるときに後悔するかな、寂しくなるかな、と思っていたんです。ところが退職の日、会社から1歩出たら飛び上がらんばかりにうれしくて。晴ればれした気持ちになりました。節約のおかげで老後の資金を少しずつ増やすことができましたし、仕事を精一杯やりきった、という充足感があったのです。その一方で、もしかしたらいろんなプレッシャーを感じていて、肩の荷がおりたのかな、とも思います。解放感いっぱいの勢いで、カフェでお茶して、記念に日比谷のショップで欲しかったお財布を買い、そのまま日比谷公園でお花見をしてしまったほどです(笑)」

そのお財布の使い方は、次回、ご紹介する予定です。

職場に持参するお弁当と同じメニューをブランチに

仕事をやめて、朝はゆったり過ごすことが増えたというショコラさんの朝食は——。
「遅めの朝食と早めのランチを合体させてブランチにすることも多いですね」

メニューをうかがうと、
「今は、職場に持参していたお弁当と同じメニューをブランチにしています。仕事をしていたときには、サンドイッチかおにぎりに、夏はサラダを添えてサラダ弁当、冬は熱いスープを保温ポットに入れてスープ弁当にすることが多かったですね。今は、お弁当箱に入れずに、食器に盛り付けるところが違うだけ」

あらためてメニューを考えなくても、慣れた食材と作り方で、パパっと食卓が整います。

今までできなかったことに挑戦! 給湯器が壊れる前に交換

自由な時間が増えたからといって、一日中のんびり過ごしているわけではありません。
「仕事をやめたら、それまでできなかったことを、あれもしたい、これもやらなきゃ、と思っていました。したいことだらけなんです」

まず、クリアしたのが、給湯器の交換でした。

「このマンションに住み始めて、今年で21年。管理がよいせいか、洗面所の水漏れを修理した程度でほかに直したところはないのですが、入居以来、21年間使い続けてきたガス給湯器が壊れる前に交換することにしたのです。冬場に突然お湯が出なくなったら困るでしょ。じつは以前、給湯器の修理を頼んだときに、そのうち部品がなくなるかも、と言われたことがありました。ホームセンターで聞いてみたら、戦争などの影響があるのか、半年先まで入ってこないとか、この先どんどん値上げされる、とのこと。それなら、まだ壊れていないけれども、今のうちに取り替えようと思ったのです」

なにごとも先手必勝! これまでも、先を見越して先手を打ちながら、新たなステージに進んできたショコラさんらしい対処法ですね。

「給湯器の進化はめざましく、交換した新しい給湯器は、その日に使った分のガス代が、小さなモニターに表示されるんです」

ガス給湯器の使用量がわかる小さなモニターをキッチン横にセット。ガスの使用量と一緒に、金額も表示されるところが新しい給湯器のメリットです。

そこで、シャワーだけ使った場合と、お風呂をわかした場合に、ガス代がどのくらい違うのか、比べてみたそうです。

「夏にシャワーだけの場合、出しっぱなしにせずに何度も止めながら使うと、ガス代はわずか6円! 冬の浴槽にお湯をはった場合は、80円以上でした。浴槽が広いので、水位を一番低くして寝ながら入るくらいの量にしたのですが、シャワーとお風呂では、ガス代がずいぶん違うことがわかりました」

給湯器の新たな機能を早速利用して、シャワーとお風呂のガス代の差をすぐに調べるところは、節約生活が板についているから。シャワーとお風呂ではガス代がそこまで違うとは驚きです。

さて、リタイア後の家計はどのように変化しているのでしょうか。
「今までどおり12万円の枠内でのやりくりを基本に考えています」

次回は家計についてお話しいただきましょう。

撮影/橋本哲


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