上場に再挑戦するディスカウント大手トライアル、最大の強みは?

原則として24時間営業の「トライアル」

スーパーセンターを全国展開しているトライアルホールディングス(HD、福岡市)が、3月下旬に東証グロース市場に新規上場(IPO)する。トライアルHDは2023年3月にも上場を承認されたが、米金融機関の破綻などを受けて中止。今回は2度目の挑戦になる。トライアルHDとは、どのような会社なのか?

IT企業でもあるトライアル

主幹事証券会社は大和証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券で、3月11〜15日に公開価格を決め、同21〜26日の間に上場を予定している。上場時の発行済み株式総数の18%にあたる2120万株を公募増資し、うち43%は海外投資家から募集する。募集株式発行で約300億円、第三者割当増資で約50億円と合計約350億円の調達を見込む。

このうち約330億円を新規出店や改装、物流センター、プロセスセンターなどへの投資に充て、残りはリテールAI(人工知能)やデータ分析基盤システムといったソフトウエアの開発資金などを利用する。

トライアルは1974年に福岡市内でリサイクルショップの「あさひ屋」として開業。転機となったのは1984年、「トライアルカンパニー」に社名変更したのに併せて、小売店向けのPOS(販売時点情報管理)システム開発や大手コンピューターメーカーからの受託事業に乗り出す。パソコンや音響・映像(AV)機器などを手がける家電量販店「エルビット」も展開していた。つまり、一時はIT企業だったのだ。

2003年に中国の烟台(煙台)市にソフトウエア開発拠点を開設。2013年に商品を供給するメーカーと店舗のデータを共有する「MD-Link」を稼働。2018年にはレジを通さない決済タブレット端末付きショッピングカートの「Skip Cart」や、店内の陳列棚を撮影して在庫状況などを把握するAIカメラの開発などを手がける子会社のRetail AI(東京都港区)を設立するなど、現在もIT事業の強化を進めている。

レジを通らなくても精算できる「Skip Cart」(Retail AIホームページより)

居抜きとDXで急成長を実現

1992年に福岡県大野城市に「ディスカウントストア トライアル」をオープンし、ディスカウントショップ事業に参入。1996年にはスーパーマーケット(食品スーパー)とディスカウントストアを一体化して衣食住関連商品の全てを集約し、1カ所のレジで会計するスーパーセンターの1号店を北九州市に開店した。

バブル期にダイエーをはじめとする量販店が全国展開した総合スーパー(GMS)が営業不振に陥り閉店した店舗への居抜き入居を2001年から本格化する。低コストで新規出店が可能な居抜き入居により、全国展開が一気に進む。2008年には北海道に8店舗を展開していた精肉を強みとするディスカウント食品スーパー「カウボーイ」に出資、2009年には子会社化して「トライアル」に業態転換するなどM&Aの実績もある。

2024年1月現在で312店舗を展開し、ほとんどの店舗が24時間営業だ。183店舗を展開する主力店舗の「スーパーセンター」は売場面積1000〜2000坪(3300〜6600㎡)で、最も多いのは1200坪(約4000㎡)の店舗。このほか同2000坪超の「メガセンター」、祖業でもであり小型店の「ディスカウントストア」、ディスカウントドラッグストア「トライウェル」などがある。

トライアルHDの既存店売上高は、2021年6月から2024年1月まで32カ月連続で前年同月を上回った。この10年間で売上高は倍増しており、2023年6月期の売上高は6531億円に。最大の強みは自社開発によるDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。在庫確認のために導入しているAIカメラを活用した顔認証による24時間無人決済店舗の「TRIAL GO」の展開も始まった。レジ要員を2割も削減できる「Skip Cart」の外販も進めており、小売業とは別にIT事業での収益も期待できる。

文:M&A Online

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