全鉄筋が鉄筋工の標準単価検討/トン当たり9万円以上必要、一般管理費率の見直しも

全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、岩田正吾会長)は建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収を担保する標準的な施工単価や適正な一般管理費率などの議論を進めている。東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、新妻尚祐理事長)でも同様な検討を進めており、これまでの試算では1トン当たり最低でも9万円以上の施工単価が必要という。1月に日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)が型枠工の標準単価(材工一式)を発表済み。今後、各建設専門工事業で適正な施工単価を巡る議論が活発化しそうだ。
全鉄筋は現在、内部にワーキンググループ(WG)を設け、CCUSのレベル別の最低賃金をベースにした標準的な施工単価や、適正な現場経費・安全衛生経費、一般管理費率の議論を進めている。鉄筋工事業は、元請企業から鉄筋を支給され、それを加工場で加工し、現場で組み立てるのが一般的。このため、施工単価は加工と現場組み立ての二つになる。
東鉄協の新妻理事長によると、標準的な施工単価はRC造8階建て集合住宅(鉄筋使用量約800トン)を想定して試算。歩掛かりは会員企業を対象にした就労調査結果の平均値を適用し、1人当たりの割り出し単価は本年度の公共工事設計労務単価(東京都)を使用した。
労務費は加工が鉄筋1トン当たり1万0800円、組み立てが同4万4690円の合わせて同5万5490円。これにスペーサーなどの副資材費等(労務費の4%)2220円、現場経費・安全衛生経費(同18%)9990円、法定福利費(同15・6%)8660円を足した工事原価は同7万6360円となる。
一般管理費は工事原価の20%とした場合1万5280円で、工事原価を合算すると同9万1640円となる。鉄筋の運搬費は別途必要で、この時点で9万円を超える数字となっている。
公共土木事業での鉄筋工事の一般管理費が工事原価の41%となっていることから、現在の20%が適正なのか検討中だ。現場経費・安全衛生経費も法制化の動きがあり、現状の18%の妥当性などを精査している。一般管理費や現場経費・安全衛生経費の率を上げると、施工単価がさらに膨らみ、現状の請負契約額とかけ離れた金額となるため、慎重に議論を進めている。
先月末に開かれた東鉄協の定例会で行われた労務報告では、1月時点の1トン当たりの請負単価(会員平均)が建築6万8010円、土木6万7833円。鉄筋工事の請負単価は徐々に上昇傾向にあるものの、需要と供給のバランスで激しく変動する。本来下げてはいけない鉄筋工の労務費も請負単価に連動して上下するケースもあり、それが担い手不足を招く原因の一つとも言われている。
日本型枠に続き、全鉄筋がこうした標準的な施工単価や一般管理費率などの検討を進める背景には、慢性的な担い手不足を解消するため、鉄筋工の賃金アップなど処遇改善を確実に進めたいという思いがある。同時に中央建設業審議会(中建審)が今後作成する標準労務費に、自分たちが必要とする施工単価を参考にしてもらいたいという狙いもあるようだ。

© 日刊建設工業新聞社