【賃上げの罠】経団連が目標とする「賃上げ5%」が達成されても、みんなの給料が「5%」増えるわけではない!? 賃上げ政策の「裏側」について解説

「賃上げ」には定期昇給とベースアップの双方が含まれている

一般的に、「賃上げ」と聞くと、社員の基本給が一律に上がる「ベースアップ」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、実はこの賃上げ目標は、年齢や勤続年数に応じて企業が行っている定期昇給(定昇)2%を前提に、ベースアップ目標を3%以上とする方針を指しているのです。

つまり、実質的なベースアップは3%以上であり、ニュースやメディアで公表されている目標の5%とは乖離(かいり)があるのです。

定期昇給とベースアップは何が違うのか

定期昇給とは、会社がそもそも定めている昇給制度で、年に1回などの定期的なタイミングで昇給していく制度です。あくまで「個人」としての年次や役職、評価に応じて給与が増えていく仕組みであり、企業の人件費に組み込まれている制度です。そのため、昨今の物価上昇に伴う賃上げの動きとは連動していません。

定期昇給は、賃金が高い傾向にある高齢社員の定年退職と、賃金が最も安い状態で入社する新人の入社が重なるため、企業全体の給与水準はあまり変わりません。つまり、実質的な賃上げとはいえないのです。これに対して、ベースアップは全社員の給与を一律で上げる仕組みです。こちらは本質的な賃上げといってよいでしょう。

「賃上げ」ではなく「ベースアップ」に注目すべき

経団連やメディアなどが報じる賃上げ目標の5%には、定期昇給とベースアップが混在しているため、純粋な賃上げとはいえません。「賃上げ」ではなく、企業の「ベースアップ」がどれくらい行われているかに注目していく必要があります。

総務省が公表しているデータでは、2022年度の消費者物価指数は3.2%上昇しており、この物価上昇率を超えるベースアップを実現しなければ物価上昇に追いつくことができず、生活が苦しくなる世帯が増えることになります。今後の自身の勤める企業と経済全体の賃上げの本質的な動きを注視していきましょう。

出典

日本経済団体連合会 春季労使交渉・協議の焦点
総務省統計局 2020年基準消費者物価指数全国2023年(令和5年)平均(2024年1月19日公表)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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