石川県が舞台の映画「レディ加賀」能登半島地震の衝撃を乗り越え上映中 配給収入の5%を義援金に

能登半島地震の被災地となった石川県で撮影された映画『レディ加賀』が公開中だ。撮影は2022年6月に現地で行われたが、公開を前にした今年の元日に地震が発生。映画の舞台となった北陸地方が打撃を受けたことで、「復興支援」のため、配給収入の5%を石川県への義援金に充てるなど、社会的な背景も含めて注目されている。雑賀俊朗監督と2人のプロデューサーが、よろず~ニュースの取材に対して思いを語った。

同作は、加賀温泉郷の旅館女将(おかみ)たちが地元の観光を盛り上げるためのプロジェクト「レディー・カガ」から着想を得ている。主演の小芝風花が新米女将を熱演し、檀れい、森崎ウィン、松田るか、中村静香らが脇を固める。

物語のモデルとなった「レディー・カガ」を運営する石川県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部加賀支部の公式サイトによると、同プロジェクトは「加賀温泉郷の情報発信、おもてなしの向上」を掲げて11年10月に発足。同支部は「プロジェクトの名称である『レディー・カガ』は、『おもてなしの心を持った加賀の女』をイメージしました」と説明し、公式サイトには宿泊施設だけでなく、九谷焼のギャラリー、呉服店、雑貨店、米穀店、惣菜店、カフェなどの飲食店といった、多種多様な店舗を切り盛りする女性たちが写真付きで紹介されている。

そんな地元密着のプロジェクトをモチーフにした作品だけに、当地を襲った地震の衝撃は大きかった。

雑賀監督は「正月の能登半島地震はショックでした。この映画は撮影中、たくさんの石川県の方にお世話になり、制作しました。映画人として何ができるかを考え、この映画の配給収入の5%を石川県支援に寄付させていただくことを決めました。今は、この映画を観て石川県に思いを寄せて欲しい。また、被災された方々の心のケアになればと願っています」と語る。

神品信市プロデューサーは「誰も予想しなかった1月1日の能登半島地震。新しい1年を迎えたと思った矢先の出来事で、被災された方々は計り知れない苦しみに強いられていると思います。少しでも癒しや救いになればと願っています」とコメント。藤田修プロデューサーも「石川県には今まで3作品でお世話になった地です。22年6月にロケしている時にも能登で比較的に大きい揺れはありましたが、まさかここまでの大震災が起こるとは夢にも思いませんでした」と振り返り、「被災された方々にお見舞い申し上げます」と話した。

2月9日の全国公開に先立ち、石川県では同2日から先行公開された。同地での舞台挨拶は「被災した方々への配慮」で、直前に見送りとなったが、全国公開後の週末に都内で舞台挨拶が2日間行われ、両日共に満員となった。

見どころのタップダンスで奮闘した小芝は10日の舞台挨拶で「石川での撮影では皆さんに温かく助けていただきました。石川の素敵なところもたくさん登場しますので、この作品を通して魅力をお伝えできたらと思います。この映画が少しでも皆さんの力になれたらと思います」とエール。また、オーディションで採用された新人俳優8人が11日に登壇。神品氏は「雰囲気や実力のある俳優を多く起用しています」とネームバリューにこだわらずにキャスティングした背景を当サイトに明かした。

今後も上映は続く。神品氏と藤田氏は「『レディ加賀』はコロナ禍など、幾多の困難を乗り越えてきた観光地域の方々の力強さもテーマに描いております。この映画が人々の心に少しでも寄り添えるならば、プロデューサー冥利(みょうり)に尽きます。ぜひ、劇場に足を運んでいただけるとうれしいです」と呼びかけた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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