【女性の視点生かして】災害への備え(2月20日)

 災害発生時の避難所運営を巡り、能登半島地震では女性への配慮不足が各地で指摘された。内閣府の調査で、本県をはじめ全国の自治体で女性向け用品の備蓄が進んでいない実態も浮かび上がった。女性をはじめ、多様な視点を生かした災害対応の在り方を改めて検討する必要がある。

 内閣府が全市区町村を対象に実施した一昨年末時点の調査によると、生理用ナプキンを備蓄している自治体は82.5%に上る一方で、女性用下着は11.9%、妊産婦用衣類は0.5%だった。乳幼児用品の離乳食は14.3%にとどまる。本県は東日本大震災、東京電力福島第1原発事故や豪雨災害などを経験したにもかかわらず、同じ傾向を示していた。59市町村のうち女性用下着の備蓄は10市町村、離乳食は7市町村、妊産婦用衣類はゼロだった。

 災害対応の部署に女性が1人も配属されていない自治体は国内で6割を占める現状も明らかになった。本県は7割近い40市町村が男性のみで、女性の要望が反映されにくい状況がうかがえる。「緊急対応は長時間労働となり、男性が適任」といった思い込みが影響しているとの見方もある。女性の目線を防災対策に生かすには、こうした固定観念をなくす姿勢が求められるだろう。

 能登半島地震の一部の避難所では、女性向け用品が他の支援物資と一緒に並べられたり、着替えや授乳ができるスペースが不十分だったりするなど、運営上の課題も浮き彫りになった。東日本大震災では女性が避難中に暴力や性被害を受けたとの報告もある。

 県が市町村向けに定めた避難所運営マニュアルの手引には女性参画の重要性や手法が示されている。能登での事例を踏まえて課題を洗い出し、市町村と共有して実効性を高めるべきだ。性的少数者への配慮についても、この機を捉えて具体化を進めてほしい。

 政府が一昨年末に開いた国際女性会議(WAW!)で、本県の参加者は「誰もが安心して住み続けられることが防災において重要になる」と世界に訴えた。転出による女性の減少数が全国最多水準にある中、防災面の充実は人口対策の観点でも欠かせない。県や市町村の新年度の関連予算審議の場でも議論を深めてもらいたい。(渡部育夫)

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