今年からはじまった新NISA…「つみたて投資枠」と「成長投資枠」どっちを使おうかな?→CFPの明確な回答

(※写真はイメージです/PIXTA)

新NISAをはじめる際、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の配分を迷う人は多いでしょう。この悩みについて、CFPで『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者の小山信康氏がズバリ回答。加えて、投資をはじめる前に最低限知っておきたいこと、商品選びの前にやっておきたい「リスク許容度の計測」についても解説します。

使い分けではなく「つみたて投資枠」の優先利用を

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。みなさんは「まず、どっちを使おうかな?」と考えることでしょう。

迷うのであれば、つみたて投資枠を利用してください。つみたて投資枠を利用していて、「不便だな」「選びたい商品がないな」と感じたら、成長投資枠の利用を検討してみてください。

つまり、優先順位としては、つみたて投資枠の方が上位にあるということです。

その理由としては、以下のものが挙げられます。

非課税投資枠の制限

新NISA全体の非課税投資枠は1,800万円です。しかし、成長投資枠だけで1,800万円の枠を使い切ることはできません。成長投資枠は1200万円までです。一方、つみたて投資枠は1,800万円の非課税投資枠を丸々使い切ることができます。よって、まずはつみたて投資枠を優先的に使い、成長投資枠の方に余裕を持たせておいた方が賢いと考えられます。

継続投資の制限

つみたて投資枠による投資は積立のみであるのに対し、成長投資枠は積立でも、一発勝負でも投資が可能です。積立による投資を考えているのであれば、わざわざ選択肢の広い成長投資枠を先に使う必要はないでしょう。

少しでも迷いのある中で投資をするのであれば、積立しか選択できないつみたて投資枠を利用した方が、とくに投資初心者は、自分のレベルに合わせた投資ができると言えるかもしれません。

商品の制限

「つみたて投資枠(約260種類)なら投資できるけど、成長投資枠(約2,000種類)では投資できない」ということは基本的にありません。逆に、「成長投資枠なら投資できるけど、つみたて投資枠ではダメ」という商品はザラにあります。

[図表1]投資できる選択肢のイメージ 出典:『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

よって、「成長投資枠なら投資できる約1,740種類(=約2,000-約260)」でもなければ、とりあえずつみたて投資枠の利用を優先した方が良いでしょう。

もちろん、個別銘柄の株式への投資は成長投資枠のみとなっているので、この場合は有無を言わさず成長投資枠を利用するしかありません。

これらの理由から、まずは2つを使い分けるというより、つみたて投資枠を優先利用した方がベターと考えられます。

ただし、1年間で数百万円の投資をするという人は、「使い分け」をしっかりと考えた方が良いでしょう。

それぞれ年間、120万円まで(つみたて投資枠)と240万円まで(成長投資枠)となっているので、年初においてどのようにこの投資枠を使うのかを考えておくと便利です。

とくに、「つみたて投資枠は積立のみ」となっているので、一気に120万円分を使うということができません。半年に1回の積立に対応している金融機関であれば、60万円まで一度に投資できますが、毎月積立のみに対応している金融機関の場合は、10万円ずつの投資となります。

[図表2]年間投資枠の使い分け 出典:『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

基本的には、つみたて投資枠を土台として利用し、成長投資枠はタイムリーに対応する形で利用すると良いでしょう。

“余裕資金”を投資に充てる…投資資金の目安とは

前述の通り、新NISAは、長期投資向きのしくみです。

これを言い換えれば、「新NISAで投資したお金は、しばらく使えなくなるかもしれない」ということです。日常的に使うお金で新NISAを利用するようなことは、絶対に行わないでください。

「値下がりしたらどうしよう……」とドキドキするような投資は、もはや投資ではなくギャンブルです。自分にとって適切な投資額を確認しておきましょう。できれば、5年や10年くらいは使うことのないようなお金で新NISAを利用していただきたいところです。簡単に言えば、余裕資金です。

将来の成長が有望そうだった商品も、思いがけず低迷を続けてしまうこともあります。投資で損をするのは、決して可能性の低いことではありません。損をしても、人生が狂うようなことはない程度の投資額に留めておくのが大事です。できれば今後のライフプランを考えて、今所有している預貯金の使い道を検討する中で、「このお金は10年くらい使うことないな」という部分に関しては、新NISAで投資する資金となりえるでしょう。

[図表3]投資資金の考え方 出典:『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

収入に関しては、手取りの1~2割分、たとえば手取り20 万円の人であれば、2万~4万円程度を新NISAで積み立ててみてはいかがでしょうか。ただし、家族構成によっても事情は違ってくるので、慎重に検討してください。

投資できる金額のめどがついたら、商品選び……といきたいところですが、まだ早いです。商品選びの前にやった方がいいことがあるので、次の項目でそれらを見てみましょう。

商品選びの前に「リスク許容度」の計測を

資産配分を検討する際、株式を多めにすれば、高いリターン、つまりより大きな儲けを期待することができます。

ただ、それは同時に高いリスクをとることも意味します。

自分に合った資産配分を見つけるためには、自分がどの程度のリスクまで耐えることができるのかを考える必要があります

これを「リスク許容度」と呼んでいます。

リスク許容度は、自分の年齢や投資経験、考え方等によって異なります。

一般的に、若い人はリスク許容度が高く、年齢の高い人ほどリスク許容度が低いと言われています。投資した商品が値下がりした時に、価格が戻るのを待つ時間的な余裕がないからです。

また、投資経験が豊富な人はリスク許容度が高く、経験の浅い人はリスク許容度が低いと言われています。

なにごとも、経験の浅い人は最初からあまり無理をしない方がベターと考えるのが一般的です。

いろいろな企業が、オンライン上で手軽なテスト素材を提供してくれています。それらを参考に、ご自身のリスク許容度を確認して、「このくらいの資産配分がちょうどいいかな?」という目安を考えてみましょう。

小山 信康
CFP®
1級企業年金総合プランナー

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