中小企業の脱炭素後押し 福島県が金融機関、経済団体と連携 金利優遇の枠組み検討

 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、福島県は2024年度、県内の金融機関や経済団体と連携して「ふくしま脱炭素化支援コンソーシアム(仮称)」を新設し、県内排出量の多くを占める中小企業の脱炭素化を後押しする。脱炭素に取り組む企業への金融面での支援体制の整備や、企業への意識醸成を促す人材の育成などを検討する。県内企業の脱炭素化に向けては、資金やノウハウ・人材の不足が課題となっている。県は金融機関と連携して、より実践的な支援策を打ち出し、県内のCO2排出量削減の加速につなげる。

 福島県によると、県内のCO2排出量の約6割を企業活動が占める。しかし、県の昨年の調査では、コスト面への懸念やノウハウの不足などから脱炭素への取り組みが進んでいない実態が浮き彫りとなった。県は企業と関わりが深く、影響力も大きい金融機関と連携し、実効性のある支援につなげようと、コンソーシアム(共同事業体)設立を呼びかけた。

 コンソーシアムは県や金融機関、経済団体、脱炭素に精通したコンサル会社などで組織する方針。設立に当たって県内300事業所を対象にアンケートを実施し、企業が抱える課題や必要としている支援内容を洗い出す。結果を踏まえ、具体的な支援策や各主体の役割を決める。

 全国に先駆けてコンソーシアムを組織した京都府では、CO2排出量の削減目標を設定・達成した企業が、金融機関から融資金利の優遇措置を受けられる枠組みを国内で初めて設けた。企業が府に排出目標を示した計画を提出し、府が進捗(しんちょく)を確認。府は金融機関に評価内容を公開する。金融機関は達成状況に応じ、企業への融資を決める。融資は脱炭素化への投資、各種事業に充てられる。福島県でも、企業の脱炭素化を促す上で有効な支援策としてコンソーシアムで検討を進める考えだ。

 コンソーシアムは企業に必要な知見を伝えられる人材の育成も目指す。地元企業と接点の多い金融機関の職員を対象に、脱炭素化経営に関する講座を開催。地銀や信用金庫のネットワークを活用し、企業へのきめ細かな支援で意識醸成や行動変容を促す。

 県はCO2排出量の多い製造業を中心に、サプライチェーン(供給網)を含む企業の排出量を可視化するモデル事業も展開する。成果や課題をコンソーシアムで共有する。

 企業の脱炭素化が注目を集める背景には、世界的に取り組みが重要視され、取引要件の一つになるなどの動きがある。県環境共生課の担当者は「大手との取引など持続的な経済活動に向け、県内企業が脱炭素化を進める必要性は高い」としている。

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