庭の草むしりをしていると「暇ならうちの庭もやって!」知らない人にお願いされてしまい──!?

親しい人が困っていたら、手を差し伸べたくなるのが人情というものです。しかしそれは時々、裏目に出てしまうことがあります。今回は親しい人に親切にしたことがきっかけで、思わぬトラブルに巻き込まれてしまった経験のある私の知人Cさんに聞いたお話です。

仲の良いご近所さんが……

Cさんには当時とても仲良くしているご近所さんがいました。

名前はWさんといって、数年前にご主人を亡くし、ひとりで暮らしている老婦人です。

Cさんは車の運転のできないWさんを買い物に連れて行く代わりに、Cさんが仕事で残業することがあれば、Wさんの家で子どもを預かってもらうといったように、いわばギブアンドテイクの関係でした。

ある日CさんがWさんの家に旅行のお土産を持って行くと、Wさんは腰をさすりながら辛そうに顔を出しました。

「Wさん、どうしたの?」
「ちょっと腰を痛めちゃって」
Wさんは庭の手入れを趣味としていましたが、草むしりの途中で腰を痛めてしまったというのです。
「大変ね……私で良かったら草むしりやっとこうか?」
「あら、そんなの悪いわ」
「いいのいいの! 子どもたち連れてくるから、みんなでやればすぐ終わるよ」
Cさんは次の休みに子どもたちと草むしりをする約束をしました。

面識のない隣人

そして次の週末、Cさんは旦那さんと子どもたちを連れてWさんの家に行き、家族4人で草むしりをしました。

みんなで取り組んだためにWさんの家の庭はみるみるうちにきれいになり、小一時間で草むしりは終了。

「ほんとうにありがとう!」
Wさんは喜んで皆に冷たい麦茶を持ってきてくれました。

「じゃあそろそろ帰ろうか」
Cさん一家が帰り支度をしていると、Wさんの家の隣りに住むひとりの中年女性が家から出てきました。Cさんはその隣人とは挨拶程度の面識しかなく、まったくお付き合いはありません。

Wさんから聞いたところによると、ゴミの捨て方や車のマナーが良くないことで有名な人なので、あえて避けていたところもありました。

理不尽にキレられて

「ねえ、ちょっと!」
「はあ、なんでしょう?」
「草むしりしてたでしょ。そんなにヒマならうちの庭もやってよ!」
「え!?」
その女性はみたところ非常に健康そうでしたし、Wさんが腰を痛めたというので草むしりをしただけで、ヒマだからやっていたわけではありません。Cさんは丁重にお断りすることにしました。
「すみませんが、いつもお世話になっているWさんのためにしたことなので、お元気ならご自分でやってください。私たちも別にヒマでやってる訳ではないので。」
「なによその言い方! こっちは忙しいのよ、早くうちに来て草むしりしてよ!!!」
なぜか隣人女性はブチギレ。Cさん一家は驚きのあまり言葉を失ってしまいました。

「やめなさいよ、みっともない!」
Wさんの声が響き、隣人女性はビクッと肩を震わせました。いつも温厚で優しいWさんが珍しく大声を上げたので、家の前を通る人たちや近くで井戸端会議中のご近所さんたちが皆そろってこちらを見ています。
「え、何事……?」
数人のご近所さんが、何があったのかと集まってきました。
「な、なんでもないわよ!」
隣人女性は人の目に耐えられなくなったのか、慌てて家の中に戻って行きました。
「ごめんね、Cさん」
「全然気にしてないよ。断ってくれてありがとう」
Cさん一家はWさんの家を後にしました。

その後Wさんは、隣人女性が渋々草むしりをしているところを見かけたとのことです。

草むしりが大変なのは分かりますが、面倒だからといって、相手の都合も考えず、無理やり人に押し付けるようなやり方はいけませんよね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子

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