「人の命だけでなく 森の樹木も守ることに使えないか」廃棄エアバッグでシカの食害から守れ【SDGs】

車に乗る人を事故の衝撃などから守ってくれるエアバッグですが、開発段階で使われた多くがゴミとして捨てられているのが現状です。人を守る「エアバッグ」がシカの食害から森を守るために生まれ変わりました。

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<日本プラスト サスティナビリティ推進室 前嶋秀旭さん>
「エアバッグを再利用して作った、ヒノキを鹿などの獣害から守るためのネットです」

交通事故の瞬間、乗っている人を衝撃から守る「エアバッグ」。これが生まれ変わって、木の皮を食べてしまうシカの「食害」から山を守るというのです。

<富士宮市農業政策課 上原己智也さん>
Qシカの食害はかなりあるんですか?
「造林したころからシカの被害はありますね」

<東部総局 金原一隆記者>
「樹皮がまるでないですね」

シカは植物が生えない冬になると、食べ物を求めて、ヒノキなどの樹皮を次々に剥がして食べてしまうそうです。

<富士宮市農業政策課 上原己智也さん>
「鹿は、1番根元から90センチぐらいのところを歯でくわえて持ち上げるっていうような形で、1メートル50センチぐらいまでを保護してあげれば、鹿の被害は防げます」

シカの食害から山を守るSDGsに取り組んでいるのは、静岡県富士宮市のエアバッグメーカーです。

<日本プラスト サスティナビリティ推進室 前嶋秀旭さん>
「『カーテンエアバッグ』と言って、自動車の横から出てくるエアバッグになりますね」

Qこれを使ったSDGsとは?
「車1台分のエアバッグができるのに、大体200から300枚ぐらい、1車種につき、エアバックの試験をしないといけないです。実は、1車種だけじゃなくて、年間3台、4台という風に開発していきますので、トータルで1,000枚、2,000枚みたいな数の『試験済みエアバッグ』っていうものが、どうしても発生してしまう」

テストで一度膨らませたエアバッグは、畳み直してまた使うということはなく、1年間で1,000枚以上がごみになっていました。これまでも、ナイロン繊維を生かした手提げバッグや袋を作るなど有効活用の道を模索していました。

<日本プラスト サスティナビリティ推進室 前嶋秀旭さん>
「ちょっと、うまく、それを何か使えないか、っていうところで人の命を守るだけでなく、森の樹木も守るっていうことに使えないか」

前嶋さんたち、日本プラストのサスティナビリティチームは、2022年から廃棄エアバッグの活用方法を富士宮市に相談しました。ヒノキを守るには、どんな保護ネットがいいのか、市が所有する林で試行錯誤を繰り返した末、切り込みを細かく入れて網状にした試作品が完成。2023年11月からヒノキの木で実用テストを続けています。

<日本プラスト サスティナビリティ推進室 前嶋秀旭さん>
Q(エアバッグを使った)保護ネットを掛けてある状態でシカに食べられることは?
「ないですね」
Q保護効果というのは?
「かなり大きいです」

<富士宮市農業政策課 上原己智也さん>
「木は肥大成長、だんだん太ってきます。そうすると、これがだんだんきつくなってきてしまいますので10年に1度ぐらいはこれを緩めてあげるという、そういう作業が必要かと思います」

<日本プラスト サスティナビリティ推進室 前嶋秀旭さん>
「課題はまだまだありますので、今後そういったところを改良しながら継続的に使っていただけるような物にしていく必要があると思っています」

富士山麓の豊かな自然を守るため、エアバッグメーカーは、人の命を守る製品の丈夫さを役立てようとしています。

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