「わが社の求める水準にない」と解雇宣言されました。解雇理由として「不透明」ではないですか?働けなくなるのは困ります……。

理由が不透明なときは「解雇理由証明書」を書いてもらう

会社から解雇を言い渡され、納得できないと感じたときや不透明な場合は「解雇理由証明書」を書いてもらいましょう。労働者が解雇に対して証明を要求すれば、会社はこれに応じる義務があります。

解雇理由証明書を請求できるのは、解雇予告をしたときから退職日までの間です。会社は、遅滞なく解雇理由証明書を交付しなければなりません。解雇理由証明書は労働基準法第22条第2項に定められています。

解雇理由証明書の対応に間に合わなかった場合のリスク

対応が間に合わず、解雇になってしまった場合はどうなるのでしょうか。金融広報中央委員会「知るぽると」の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」によると、20代の年間手取り収入は平均235万円、中央値は240万円とのことでした。

そのため、20代を仮定した上での概算にはなりますが、例えば半年の空白期間が生まれた場合、何も対応しなければ120万円の損失が生まれるということになります。仕事がない間も生活費もかかるため、この状況は避けるべきです。

しかし、雇用保険の被保険者で、その被保険者期間が一定期間以上ある場合は、失業手当が出るケースもあります。

金額は人によって変わりますが、原則として離職日直前6ヶ月に毎月決まって支払われた金額の合計を180で割って算出した額のおよそ5割から8割と言われています。給付日数については、一例ですが、半年以上1年未満の加入期間の場合は、90日となっています。

会社が提示する解雇理由は認められるのか?

ところで「わが社の求める水準にない」という理由は、解雇の条件として正当といえるのでしょうか。

労働契約法第16条では「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできない」と定められています。解雇とは、会社側が一方的に申し出て労働契約を終了させることです。ただし、会社の都合だけでいつでも解雇していいわけではありません。

今回のように「求める水準にない」という理由で解雇するなら、誰もが納得できるような具体性が必要です。水準といっても、業種や職種によって何を指すのか変わってきます。そして、客観的に見て妥当であると思える内容でなければ解雇はできません。

そもそも、解雇事由は、会社はあらかじめ就業規則に明記しておく必要があります。解雇事由を含む退職に関する事項は、就業規則を作成する際の絶対的必要記載事項になっています。例えば、無断欠勤を繰り返した場合や機密情報を漏えいさせた場合など、どういった行動が解雇の対象になるのか記載しておくのは会社の義務です。

解雇理由によっては管轄の労働基準監督署に相談を

もしも、会社側が提示した解雇理由に納得いかないときは、管轄の労働基準監督署に相談しましょう。解雇理由証明書の交付を拒まれたときも相談は必要です。

解雇理由証明書を請求しても出さない場合は、会社側も不当解雇にあたると理解している可能性があります。会社が後から解雇理由を都合よく変更しても対応できるよう、可能な限り証拠を残しておきましょう。

例えば、勤怠状況を理由にされることも想定してタイムカードをコピーしておくことも大切です。口頭で言われた「わが社の求める水準にない」という理由も、宣言された日時を添えてメモしておくと証拠にすることもできます。

会社から解雇を言い渡されたら解雇理由証明書を請求しましょう

受け入れるかどうかは別として、会社が解雇を宣言してきたら、まず「解雇理由証明書」を請求しましょう。労働者から請求されれば、遅滞なく解雇理由証明書を交付するのは会社の義務です。

納得のいかない理由を書かれたときは、労働基準監督署に相談することです。状況によっては弁護士に相談するという手段もあります。不当解雇が認められれば、会社を辞める必要はありません。

出典

知るポルト 家計の金融行動に関する世論調査

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

© 株式会社ブレイク・フィールド社