40年以上も体重が変わらない医師が教える仕事も健康も上向きになる食事とは?

朝ごはんを食べないのはもったいないです! 朝から副交感神経を刺激し、腸を活発にすることで、ダイエットの成功はもちろん、自律神経や腸内環境も整い、免疫力も向上します。長年の研究から美肌や長寿を手に入れられる秘訣が毎日の食事にあることがわかってきました。 順天堂大学で自律神経について研究を重ね、多くの書籍を出す小林弘幸氏に解説してもらいました。

※本記事は、小林弘幸:著『たんぱく質ダイエット -お腹いっぱい食べても太らない医師が発案した-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

朝ごはんを食べて体内時計をリセットする

もしも、1日1食しか食べられないとしたら、皆さんはどの食事を選びますか? 私は間違いなく、朝食です。朝食は体を目覚めさせる役割があり、1日の体のリズムやコンディションを大きく左右するからです。

それだけでなく、朝食でのたんぱく質摂取とその後の軽い運動は、基礎代謝を高める筋肉を効率的に合成してくれるので、ダイエッターにとっても欠かせません。朝食を食べると、眠っていた腸が目覚めて、ぜんどう運動を始めます。

すると、副交感神経が刺激され、交感神経と副交感神経がともに働き、自律神経のバランスが整ってきます。同時に便通も促されて、腸内環境を整えることにもつながります。

また腸が活発に動き出すことで、全身の血流もアップして、脳に新鮮な血液が流れ込み、頭がスッキリしてきます。朝のコンディションが良いと、1日の仕事のパフォーマンスもグッと上がりますよね。

さらに、朝食は「体内時計」をリセットする働きもあります。体内時計は、睡眠覚醒・血圧の変動・ホルモンの分泌・自律神経の調節など、体内のさまざまな生理機能をコントロールしながら、1日の生体リズムを生み出しています。

朝から日中は交感神経を優位にして血圧を上げ、アクティブモードに。夕方から夜は副交感神経を優位にしてリラックスモードに切り替え、睡眠に導いていきます。こうした自然のサイクルに適した生活を送ることができるのは、すべて体内時計のおかげです。

体内時計は、体に備わっている「時計遺伝子」によってコントロールされていますが、時計遺伝子は1日24.5時間に設定されていて、毎日30分前後のズレが発生します。それが朝食を食べることで、体内時計のリズムが正されるわけです。

もし、体内時計がリセットされないままでいると、自律神経がスムーズに切り替わらず、体が目覚めないまま1日中ぼんやりして、仕事にも身が入りません。そのうえ脂質の代謝やホルモン分泌にも異常が起こり、肥満を招きやすくなることがわかっています。

▲朝ごはんを食べて体内時計をリセットする イメージ:zon / PIXTA

朝食のポイントは、しっかり食べること。以前は、朝食ではヨーグルトとバナナを食べれば十分と考えていたこともありましたが、ある程度の量を食べないと体内時計がリセットされないことがわかりました。

和朝食なら、目玉焼きに納豆とごはん、みそ汁をつけて、軽い定食くらいしっかり食べる必要があります。また、空腹で血糖値が下がると、エネルギーを生み出すために「糖新生」で筋肉が分解されてしまいます。

毎日朝食を食べない人と、たんぱく質を意識しながら朝食をしっかり食べる人を比べたら、筋肉量は確実に変わってくるはずです。さらに朝ごはんを抜いて、昼食に糖質を多く含む白米大盛りの丼などを食べると、最悪の「血糖値スパイク」を招くことにもなります。血糖値スパイクは肥満の原因になりますから避けなくてはなりません。

こうしたことから、朝食は「金」に匹敵する価値があると私は思っています。朝食抜きの生活を送っている人は、いつもより30分早く目覚ましをかけて、朝食の習慣をつけてみてください。

セロトニンに注目して朝食メニューを選ぼう

私の朝食メニューの定番のひとつは、ヨーグルトにバナナ、サラダ、チーズとハムをはさんだパン、カフェオレ。和朝食のときは、ごはんにみそ汁、納豆、揚げ出し豆腐、海苔など旅館の朝食のように、しっかりと食べます。

メニュー選びのポイントは、三大栄養素とビタミン、ミネラルなどの栄養バランスに加え、メンタルを安定させる幸福ホルモンの「セロトニン」の生成に必要な栄養素を摂ることです。セロトニンは、交感神経と副交感神経の働きを調節する脳内神経伝達物質で、メンタルの安定をもたらします。

朝食はきちんと食べるだけで自律神経を整えることにつながりますが、朝にセロトニンを増やす栄養素を摂っておくことで、その日の自律神経バランスも整いやすくなります。そのうえセロトニンは、自律神経のバランスに欠かせない良質な睡眠に導く「メラトニン」の分泌も促進してくれます。

セロトニンは、起床後の日光浴や軽い運動でも分泌されますが、体内で貯蔵することができないため、食べ物からも栄養素を摂取しておくことが大切です。セロトニン産生に必要な栄養素は、必須アミノ酸の「トリプトファン」「ビタミンB6」「炭水化物」の3つ。

トリプトファンは、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品や大豆製品といった、たんぱく質食材に豊富。ビタミンB6は、カツオやマグロなどの魚類、レバーや肉類に多く含まれます。炭水化物は、白米やコーンフレークなどの穀類がおすすめです。

これら3つの栄養素をすべて含んだバナナや、トリプトファンとビタミンB6を含むイワシも優秀食材で、朝食に欠かせません。朝ごはんの栄養バランスを高めるためにも、この2つは常にストックしておくことをおすすめします。イワシは水煮缶なら保存もしやすく、すぐに食べられます。

脳内のセロトニン濃度はよく噛むことでも高まるので、朝食の時間をきちんと作って、可能な限り朝食を食べるように心がけましょう。少し早めに起きて余裕を持って朝の時間を過ごすことで、副交感神経も高まり、心身ともに快適な1日を過ごせるようになるはずです。

昼食チョイスのコツは「たんぱく質と食物繊維」

朝食では、自律神経の働きをサポートする「セロトニンの産生に必要な栄養素を摂ること」がポイントとお伝えしました。このことからも、朝は、たんぱく質や炭水化物が中心になりがち。そこで、昼食では「食物繊維を多めに摂る」という意識を持つと、バランスが取れてきます。

私は朝も食物繊維の多いサラダやバナナなど食べるようにしていますが、足りないと思った日は、昼に大学の裏にある食堂で野菜炒め定食を注文します。ここの野菜炒めは、びっくりするぐらい大量の野菜が入っているので、食物繊維を補うのに最適なのです。

厚生労働省による食物繊維の摂取目標量は「成人男性1日20g以上、成人女性は1日18g以上」で、多くの人が摂取量に達していない現状があります。

普段から食物繊維の摂取を意識している私でも、食事だけで食物繊維の1日の合計摂取目標量を満たすことは容易ではありません。ですから、食物繊維が不足しがちという人は、食物繊維のサプリメントを活用するのもひとつの手だと思います。

▲昼食チョイスのコツはたんぱく質と食物繊維 イメージ:マハロ / PIXTA

ただし、食物繊維ばかりに意識がいって、サラダランチなどを選んで野菜ばかりに偏ってしまうと、たんぱく質が不足しがちですから注意が必要です。お昼もたんぱく質の摂取は欠かさないようにしてください。そして忘れて欲しくないのが、腹7分目で止めておくということ。

とくに働いている人は、昼食の時間が限られるため、早食いをして満腹中枢が追いつかず、食べすぎる傾向があります。満腹は胃腸に負担をかけるため、できるだけ避けてください。

また、早食いは「血糖値スパイク」を起こして肥満の原因にもなるため、要注意。改めて自分の食習慣を見直してみましょう。「夜の外食が多く、節制ができない」と悩んでいる人は、お昼にあらかじめカロリー調整しておくと楽になります。私も夜に会食が入っている日は、ヨーグルトとバナナや山菜そばなど、軽めにランチを済ませるようにしています。

夕食は腹7分目! ダイエット以上のうれしい効果

夕食は、1日の終わりにゆっくり食事を楽しめる癒しのひとときです。自宅でアルコール片手にテレビを見ながら、心ゆくまで夕食を食べるのが日課という人も多いでしょう。そうした夕食の楽しみを否定するつもりはありませんが、肥満を避けるには、少し軽めの腹7分目で抑えておくことをおすすめします。

夕方以降は、睡眠に向けて体の活動量や代謝が下がっていく時間帯ですから、満腹まで食べてしまうと、エネルギーが余って脂肪細胞に溜め込まれます。とくに食べすぎで睡眠中にまで消化が長引くと、栄養が吸収されず、ほとんどが脂肪として蓄えられてしまうため、肥満リスクが倍増するのです。

1日の食事バランスとしては、活動をスタートする朝にしっかりと食べて、昼と夜は腹7分目で軽く済ませておくのが理想。

しかし日本人は、朝食を抜いて昼と夜をしっかり食べる人が多く、真逆の傾向にあります。続けると加齢とともに肥満リスクが高まるため、該当する人は改善をおすすめします。

腹7分目にして物足りなさを感じる場合は、動物性たんぱく質中心のメニューに切り替えてみてください。高たんぱく質食材は、腹持ちがよく満足感を高めてくれるので、楽に食事量を減らすことができます。

また、消化は約3時間かかるので夕食は8時前後に済ませること。副交感神経の働きがピークになって腸が活発に動く午前0時には、就寝していることが望ましいためです。

そしてもうひとつ、食事を腹7分目に抑えると、サーチュイン遺伝子と呼ばれる「長寿遺伝子」のスイッチがオンになることがわかっています。

▲夕食は腹7分目! ダイエット以上のうれしい効用 イメージ:Mills / PIXTA

ある実験で、人と遺伝子が酷似したアカゲザルにカロリー制限に関する比較をしました。すると、20年間にわたって普通に食事を与えられ続けたサルは、体毛が抜けシワも多かったのに比べ、同じ期間30%のカロリー制限を続けてきたサルは体毛がフサフサで肌にも張りとツヤがあったのです。

さらに、カロリー制限したサルは、がんや糖尿病、心臓病や脳萎縮などの病気も少なく、生存率も高いことがわかりました。これにはさまざまな理由が考えられますが、カロリー制限によって長寿遺伝子の働きが強まったという説が有力です。

長寿遺伝子はその名のとおり、長寿や老化に関わる遺伝子で、働きを強めることで細胞の寿命を伸ばすのに役立つ分子が増えるといわれています。その結果、血管や脳など重要な器官の老化が抑えられ、寿命が延びるのです。

長寿遺伝子は、エネルギーを効率的に生み出すミトコンドリアを増やす働きもあり、ダイエッターにとっても最大限に活用したい存在。さらに肌の老化を抑えるアンチエイジング効果もあるので、若々しさの維持にも欠かせません。

こう聞くと、無理な節制を始めてしまうダイエッターもいることでしょう。しかし、注意してほしいのは「やせすぎは寿命を縮めてしまう」ということ。極端にやせている人は、肥満の人よりも発がん率が高いことも研究によってわかっています。何事も、やりすぎは毒ということを覚えておいてください。

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