『ブギウギ』スズ子とりつ子はわかり合えるのか? ゴシップ誌記者・鮫島の巧妙な手口

久しぶりのタナケンこと棚橋(生瀬勝久)との共演で映画に出演することが決まり大忙しのスズ子(趣里)。だが、以前と状況が違うのは愛子(小野美音)がいるということだ。育ち盛りの愛子はお転婆でいたずら好き。スズ子は仕事と育児の両立に悩んでいた。

『ブギウギ』(NHK総合)第98話では、そんなスズ子に愛子が撮影所で転倒し頭に怪我をしたという知らせが届く。幸い大事には至らなかったものの、スタッフを頼るわけにはいかないと考えたスズ子は山下(近藤芳正)に愛子を任せることに決める。その帰り道、スズ子は「愛子、もうお転婆したらあかんよ。今日みたいにイタイイタイなんねんで。みんな心配したんやから」と厳しい言葉をかけるが、それを見ていた山下が「抱いたったらどないですか」と優しく語りかける。成長したとはいうものの、まだまだ愛子は立派な子どもだ。いつだって母親であるスズ子に甘えたいはず。お転婆な性格はスズ子ゆずりとも取れるが、スズ子に対してもっと私を見てほしいという子どもなりのメッセージなのかもしれない。

撮影が再開すると、スズ子は撮影に穴をあけてしまったことに対して棚橋に謝罪をする。棚橋は「子どもがしたことだ、仕方がないさ」としつつも、「撮影が伸びるとその分現場の負担が増える。そのしわ寄せが作品の質を下げてしまうかもしれない」と辛辣な言葉を投げかける。続けて、お客さんはスズ子が母親であることは知ったこっちゃないとも。棚橋の言葉は厳しいものに映るかもしれないが、これは役者ではなく、どの職業にも言えることである。その後のスズ子は愛子のことが気がかりなあまり、撮影に集中できない状況が続いていた。撮影が終わり、愛子と抱き合うスズ子はいつになく幸せそうだ。「あしょぶ」とスズ子に抱きつく愛子がたまらなく愛おしい。

一方で、ワンマンショーの舞台に立っていた茨田りつ子(菊地凛子)は喉の不調から本来のパフォーマンスができずに苦しんでいた。マネージャーから歌を休んではどうかと言われても、りつ子は「歌手が歌わないでどうするの」と叱責。そんな中、芸能記者の鮫島(みのすけ)がりつ子の前に現れる。鮫島はあいも変わらずりつ子を挑発し、センセーショナルな言葉を引き出していく。

後日、『真相婦人』に「フン! 福来スズ子なんて歌手は終わりよ!」という見出しの記事が掲載されてしまう。りつ子が発した言葉とはいえ、その意図はまったく異なるものだ。記事を見たスズ子は一度りつ子と話しがしたいと山下に申し出るが、このままでは鮫島の思う壺。スズ子は気持ちを切り替えて撮影に臨んでいたが、撮影現場に鮫島が押しかけてくる。“お話しすることはない”と押し返すスズ子に対して、鮫島はりつ子の時と同様に挑発をしかけると、その口車にまんまと乗せられてしまったスズ子はりつ子と対談することが決まってしまう。

マスコミ、それも嘘っぱちなゴシップ誌が用意した対談の機会というだけで、なんだか嫌な予感がするが、果たしてスズ子とりつ子は分かり合うことができるのだろうか。
(文=川崎龍也)

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