【令和6年度調剤報酬改定】地域支援体制加算で夜間・休日の「周知」要件に/1つの手法は地域薬剤師会が中心となったリスト化

【2024.02.20配信】令和6年度調剤報酬改定においては、地域支援体制加算で夜間・休日対応の周知が要件となっている。この周知の手法については、これまで厚労省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」とりまとめ(令和4年7月11日 )において、地域において求められる夜間・休日等の対応については、地域の薬剤師会が中心的な役割を担うとともに、会員・非会員を問わず地域の薬局が協力して議論を行うことの必要性が示されていることなどを受け、地域薬剤師会などがリスト化を進めることが1つの手法として示されている。

薬局の体制に係る情報の「周知」に関する要件については、「地域支援体制加算」とともに、「連携強化加算」「在宅薬学総合体制加算」において要件となった。

地域支援体制加算では、「地域の行政機関、保険医療機関、訪問看護ステーション及び福祉関係者等に対して、休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制(地域医療の確保の観点から、救急医療対策の一環として設けられている輪番制に参加している場合も含む。)に係る周知を自局及び同一グループで十分に対応すること。また、同様の情報の周知は地域の行政機関又は薬剤師会等を通じて十分に行っていること」とした。
そのほか、連携強化加算では、「災害や新興感染症発生時における対応可能な体制を確保していることについて、当該保険薬局及び同一グループののほか 、地域の行政機関、薬剤師会等のホームページ等で広く周知していること」が求められる。
また「在宅薬学総合体制加算」では「地域の行政機関、保険医療機関、訪問看護ステーション及び福祉関係者等に対して、急変時等の開局時間外における在宅業務に対応できる体制(医療用麻薬の対応等の在宅業務に係る内容を含む。) に係る周知を自局及び同一グループで十分に対応すること。また、同様の情報の周知は地域の行政機関又は薬剤師会等を通じて十分に行っていること」との要件となっている。

この周知の手法については、これまで厚労省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」とりまとめ(令和4年7月11日 )において、地域において求められる夜間・休日等の対応については、地域の薬剤師会が中心的な役割を担うとともに、会員・非会員を問わず地域の薬局が協力して議論を行うことの必要性が示されていることなどを受け、地域薬剤師会などがリスト化を進めることが1つの手法として示されている。

こうした周知等において、「薬剤師会」との記載があることについては、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の議論の過程の中でも薬局関連他団体から異論が示されてきたところ。加えて、2月19日に開かれた「第2回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」でも同様に、「実際に対応できるところがあれば輪番体制がなくても大丈夫」といった意見や、「行政が仕切りながら薬剤師会や各団体に協力を仰ぐというのが筋」といった意見が出た。

同検討会では夜間・休日対応の構築のほか、周知についても議題となっていた。この中で、日本保険薬局協会(NPhA)副会長の藤井江美氏は、地域薬剤師会の輪番体制整備状況の調査結果について、注釈に添えられていた「休日夜間当番医療機関の門前薬局が開局しているとの回答は、地域薬剤師会として輪番体制を整備していないため、未整備に含まれている」との文言に言及。「実際に対応できるところがあれば輪番体制がなくても大丈夫ということは(略)見ていただけると」と述べた。また、地域薬剤師会のマップ機能を使った周知に関してもフォームが各薬剤師会で違い統一されていない点を挙げた。加えて「会営薬局でやっているなると、そこがメインに出てきて、そこが対応できるからほかの薬局さんの情報はそんなにいらないよねというページ構成になったりしている」と指摘。県の夜間休日対応のページで病院・クリニックと同様に薬局も同じように探せるとし、「薬剤師会と県が連動しながらできるような形をお考えになっていただいてもよろしいのではないか」とした。

また、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)理事の塚本厚志氏は、地域の薬剤師会、JACDS、NPhAが協力する重要性への認識を示した上で、医療情報ネットの有効性に言及。「医療情報ネットをいかに生活者に周知していくか、その周知をしていくための手段として薬剤師会やJACDS、NPhAが協力してPRしていく形にすれば地域の情報が一元管理できるようになるのではないか」とした。地域支援体制加算算定薬局や地域連携薬局が夜間・休日の調剤に対応していないとの指摘に対しては、「非常によくない」とし、「生活者の声がダイレクトに反映されるように、輪番体制も含めて、情報の一元管理も含めて、行政が仕切りながら薬剤師会や各団体に協力を仰ぐというのが筋ではないか」と述べた。

この日の検討会では厚労省は地域薬剤師会に関する調査結果も提示。709の全国の地域薬剤師会を対象とした調査結果では、会として輪番体制を整備しているのは25.5%。「未実施」は49.8%。在宅医療対応可能薬局の周知については実施しているのは60.5%だった。一方、次期調剤報酬改定で複数の加算で周知は要件化されることもあり、多くの薬局からの協力も期待されることも検討会では紹介された。
日本薬剤師会副会長の安部好弘氏は、会員・非会員を問わないリスト化などについて「非常に急いで」取り組んでいることを明かした。

編集部コメント/社会が薬局に対して何かしてくれるという感覚には違和感

「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(WG)とりまとめでは、地域において求められる夜間・休日等の対応については、地域の実情に応じた体制構築が必要となるが地域の薬剤師会が中心的な役割を担うとともに、会員・非会員を問わず地域の薬局が協力して議論を行うことの必要性が示されていた。また、薬剤師サービスを“地域全体で提供していく”という観点も必要であり、地域の実情に応じた体制の構築について、自治体の関係部局及び関係団体等が協議・連携して取り組むことが重要であることも示していた。

こうした整理がされる中で、地域実情に詳しい地域薬剤師会が情報収集・周知を行うことには一定の合理性があると考えられる。

薬局機能情報提供制度に基づくG-MISや医療情報ネットでの情報一元化を重視すべきとの考えは、全国にチェーン展開する会員企業も多いJACDSやNPhAからの意見としては理解できる。ただ、医療情報ネットは一義的に患者の最適な選択を促すものであり、地域全体の薬局体制を把握し、行政に示せるものではないだろう。地域包括ケアの概念に象徴されるように、今後は全国的に均一な情報提供サービスを構築しつつも、地域実情に応じた体制構築を関係者が把握し、議論していくことも必要になる。

今回の情報周知は薬剤師や薬局自らが行政に対して体制・機能を提示していくとこと自体にも意味があるのではないだろうか。薬局・薬剤師の業界紙として取材をしていて率直に思うことは、医療制度の議論の中で、薬局・薬剤師はともすると忘れられてしまう存在であることだ。感染症改正、第8次医療計画指針の中でも結果的には薬局や薬剤師の機能が書き込まれたが、それは“当たり前”ではなかった。職能団体や薬系技官等の絶えまない働きかけによって実現していたことを目のあたりにしてきた。現在においても、へき地等の医療体制ではオンラインを活用しながら医師と看護師の連携が議論の中心であり、在宅医療においても薬局・薬剤師の夜間・休日対応が十分ではないとの指摘から他職種が代わって薬剤提供を行ってもいいのではないかとの議論すらある。薬剤師・薬局がまずは必要とされているという前提に立って、社会に制度整備を求めるのは理想論に思える。そうではなく、リソースが限られていく中にあっても、薬局・薬剤師の機能・職能を常に薬局・薬剤師側から提案し、状況を把握し、その上で、地方行政においても薬剤師確保等を含めた政策を提案していくことが求められているのではないだろうか。

地域薬剤師会にとっても今回の情報収集・周知はかなりの負荷だ。場合によっては都道府県薬剤師会からのサポートが必要になるだろう。日薬・安部氏はリスト化にあたって3団体のいずれにも加盟していない薬局・薬剤師については、行政の協力も仰ぎながら取り組む姿勢を示している。

WGでも示された「地域医療に必要な機能を把握するともに、自治体や医療関係者が協議の場を持ち、必要な薬剤師サービスの確保策を検討する仕組みを構築すべきである」との提言。今回の周知への地域薬剤師会の関与は、この提言の1つの足掛かりにもなるのではないか。

各薬局・薬剤師においては、現在、薬剤師会が進めているリスト化作業に積極的にアクセスし、参画することが求められるだろう。

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